婚活中の貧乏令嬢、なぜか王弟殿下にプロポーズされました
「今日でこの生活も終わりか⋯⋯」
朝日の差し込む部屋で、私はそう独り言ちた。
この生活も気づけばもう五年。
この部屋に住んで五年になるが、部屋にある家具は必要最低限の物だけ。
基本的にここには寝に帰ってくるぐらいだったから、ベッドさえあればなんとかなった。
そのベッドの上から部屋を見渡す。
荷物は昨日うちにほとんど片付けた。あとは今日帰ってきてからでも十分間に合うだろう。
「楽しかったなぁ」
この生活がいつか必ず終わるのは初めから分かっていたが、いざ改めてその時を迎えると胸にジンと来るものがある。
家のためとはいえ、好きなことをして過ごせたこの五年。
『そろそろ戻ってくるように』
そう記された手紙を何度読み返したことか。
できればあと一年、いや数カ月でもいいからこの生活を続けたい。
だけどそうして遅らせれば遅らせるほど間に合わなくなる。
これ以上、両親に心配をかけるわけにはいかない。
「はぁ。こればっかりは仕方ないもんね」
空は快晴。こんな天気のいい日にくよくよしているのはもったいない。
「うん、今日も頑張ろう。⋯⋯さてと、そろそろ準備を――って、いけない!」
最後だから気合を入れて準備しよう。そう思い時計を確認して焦った。
時計はまもなく家を出なければ、私の足を持ってしても遅刻ギリギリの時間を指していたのである。
「感傷に浸っている場合じゃなかった!」
一目散にベッドから飛び降り、着替え、身だしなみを整える。
朝食は⋯⋯我慢だ。
ただこの寝癖だけは絶対に直していかなければ。
格闘の末、強力な寝癖を何とか打ち負かし、最後に鏡の前で全身を確認する。
「よし。完璧!」
何十回、何百回見ても、この制服にはテンションが上がる。
制服効果なのか大して美人でもない私でも、三割増しでよく見える気がする。
今日で着納めなのは残念だが、記念にもらえないか聞いてみよう。
鍵は閉めた。火は点いていない。忘れ物もなし、と。
「それじゃあ今日も一日頑張るぞ!」
その掛け声とともに、私は家を飛び出した。
◇◇◇
「おはようございます」
乱れた髪を再度整えてから、目の前の扉を開けた。扉の中はすでに人でいっぱいだ。
「あっ、ビオラさんおはよう」
「おはよう」
「ビオラおはよう。ギリギリセーフよ」
「よかったぁ~」
同僚たちが次々と挨拶をしてくれる。
私は一人ずつに返事しながら自分の席へと座った。
「お。みんな揃ってるな」
ちょうど座ったと同時に、階段から一人の男性が降りてきた。
「「「ギルド長、おはようございます」」」
その場にいた全員が椅子から立ち上がる。もちろん私も。今から始業前の朝礼だ。
「おはよう。えー、今日も見てのとおり朝からたくさんの冒険者たちが来ている。忙しいとは思うが、親切・丁寧・笑顔をモットーに業務に励むように」
「「「はい」」」
いつもであれば朝礼はこれで終わりになる。けれど今日はこのあとも続いた。
「それとみんな知っていると思うが、今日でレイニード君と働くのは最後になる。レイニード君が辞めてしまうのは非常に残念だが、みんな笑顔で送り出してあげよう」
「「「はい!」」」
「レイニード君。最後にみんなに何か言いたいことはあるかな」
ギルド長に話を振られた私は、これまでの感謝を述べた。
「こうして皆さんと一緒に働くことができて幸せでした。ここで得た経験を活かし、家に戻っても頑張りたいと思います。これまで本当にお世話になりました」
目まぐるしく忙しい日々であったが、毎日が充実していた。
この素晴らしく、そして楽しかった思い出があれば、これから直面する問題にも立ち向かえるはずだ。
「え。ビオラちゃん辞めちゃうの?」
「まじか⋯」
「お、俺らの天使が⋯⋯」
(いや、天使って誰のことよ)
何やら周囲から声が聞こえてきたが、最後の人には病院に行くことを勧めてあげなければ。
「それじゃあ今日も一日頑張ろう」
「「「はいっ!」」」
こうして私は、冒険者ギルドの受付嬢として、最後の一日に臨むのだった。
◇◇◇
「それじゃあお先に。これから頑張ってね」
「ありがとうございます」
一人、また一人と早上がりの同僚たちから激励の言葉をもらい、受付に座るのは私一人だけになった。
毎日営業開始時刻は地獄のような混み具合だが、昼を過ぎれば人はまばらになり、日が落ちればほとんど人はいない。
これくらいなら受付が一人でもなんなく対応できる。
もちろん安全上ギルド内に職員が一人しかいないなんてことはなく、後ろの事務方の席や別室にはまだ他に数名の職員がいる。
だから受付が一人でも問題はない。
(まぁここの職員の中でギルド長を除けば、私が一番強いんだけどね)
冒険者ギルドの職員になるために一番重要なの素養は何か。
それは強さだ。
冒険者と言って一括りにするわけではないが、冒険者の中には少なからず荒くれ者はいる。そうでなくとも、ケンカは日常茶飯事。
だから危険がある職場には、自衛できない者を雇ってはいけないと、国の法で定められている。
私は魔法と体術が得意で、実力はギルド長のお墨付き。
実は私は冒険者の資格を持っており、その階級はA。
Aの上にある階級はあとSしかないので、私はまぁそれなりに強かったりする。
しかしそれならなぜ冒険者として生計を立てず、ギルドの受付嬢をやっているのか。
それは一言で言えば、私の長年の夢だったから。
冒険者登録をするために初めて訪れた冒険者ギルド。そこで私は受付嬢が着ている制服に目を奪われた。
『私もあの制服が着たい』
あまり褒められた動機ではないが、私はその一心で、冒険者ギルドの受付嬢に就職を決めたのである。
同僚はみないい人だったし、冒険者たちから聞ける話も面白かった。
仕事の日は憧れの制服を纏い全力で仕事に打ち込み、休みの日には冒険者として活動する。
この生活が本当に好きだった。ずっとこの生活が続けばいいのにと何度思ったか。
けれどいつまでも好きなことだけして生きてはいられない。
私はもう二十三歳だ。これからのことを考えるとここがタイムリミット。
まもなく遅番担当の職員が来る。そうしたらいよいよ仕事は終わり――
――ギィ
その時ギルドの入り口の扉が開いた。この時間に人が来るのはめずらしい。
どうやら今扉を開けた人が、私の最後のお客様になるようだ。
(誰だろう?)
そう思い扉に視線を向けていると、現れたのは一人の人物。
(あっ)
今、その人と目が合った⋯⋯気がする。多分。
なぜこうも曖昧な表現になってしまうのか。
それはなぜなら、その人はいつもヘルムを被っているから。
「こんばんは」
ヘルムを被った人が受付にやってきた。
私はいつもどおり笑顔で対応する。
「アルフさん、こんばんは。本日はどのようなご用件ですか?」
ヘルムを被った、全身鎧姿の男性。
名をアルフさんといい、このギルドで一番有名であり、一番謎に包まれた人物だ。
「依頼達成の報告に来たんだ」
「依頼達成おめでとうございます。たしか今回の依頼は飛竜の討伐でしたね。これを一人で達成してしまうなんて⋯⋯。さすがS級ですね」
そう。何を隠そう、アルフさんの階級はS。
実はA級までならばそんなに難しくはない。仕事の片手間で活動していた私でもなれる程度。
でもS級は違う。一人一人が国家戦力並みの実力の持ち主だ。
冒険者の頂点。いや、もう国の中でも頂点だと言っても過言ではない。
この国にいるS級は三人。そのうちの一人がアルフさんなのである。
できることなら一度でいいから一緒に依頼を受けてみたかったなぁ。
まぁ彼はソロの冒険者だし、私は退職と同時に冒険者も引退するから無理な夢なんだけどね。
「⋯⋯はい、確認いたしました。こちらが依頼達成の報酬になりますね」
「ありがとう」
ただこのアルフさんは謎多くき人物でもある。
私が彼のことで知っているのは、S級冒険者であることくらい。
年齢も容姿も不明。きっと他の職員も同じ程度の認識だと思う。
あと挙げるとすれば、冒険者らしくない穏やかな性格と、時々見せる品のある所作くらい。
きっといいところの生まれなんだろうな〜、とか勝手に思っているが、それすらも憶測に過ぎない。
冒険者の素性を詮索はタブー。
だから彼は謎のヘルム冒険者なのである。
「ふふ。アルフさんは本当にすごいですね」
「いや、そんなことはないよ」
あ、謙虚なところもあるね。自身の強さをひけらかすことはなく、穏やかで謙虚。
あ~、本当に紳士。
こんな人がいたら最高なんだけど⋯⋯って、うん。あんな人の揚げ足を取って楽しむ、陰謀渦巻くような場所にいるわけがないよね。
「これからも頑張ってくださいね」
「⋯⋯うん。ありがとう」
表情は見えないが、きっと今笑った気がする。
思わず私も笑顔になった。
「っ、あの⋯⋯」
アルフさんが何かを言いかけた時、後ろから声をかけられた。
「レイニード君、お疲れ様」
「あっ! お疲れ様です」
アルフさんの手続きが終わったところで、遅番の職員がやってきたようだ。
「寂しくなるが、向こうでも頑張れよ」
「はい、ありがとうございます」
名残惜しいがこれで私のお仕事ライフは終了⋯⋯そうだ。帰りにギルド長に制服をもらえないか交渉しに行かなければ。
「あの」
おっといけない。まだアルフさんが窓口にいたんだった。
「失礼しました。他に何かございましたか?」
「その、今のって⋯⋯」
今の? ⋯⋯ああ、遅番職員との会話のことかな?
「向こうでも頑張れって、どういう⋯⋯」
やっぱりそうだった。
冒険者でも知っているのは、朝いた人たちくらいだもんね。
「私、今日でここを辞めるんです」
「えっ」
「最後のお客様がアルフさんでよかった」
紳士で優しいアルフさんだったから、穏やかな気持ちで仕事が終われた。
最後に魔法をぶっ放すようなことがなくて本当に良かったよ。
「そ、それは一体どういう意味で⋯⋯」
「ほら、交代の時間だ」
「はい。それではアルフさん。遠くからですが、これからもアルフさんのご活躍を祈ってますね。それでは失礼します」
「あっ、ちょっと待って!」
呼び止める声が聞こえた。
アルフさんが大きな声を出すのはめずらしいけど、ごめんなさい。
今はこの制服を賭けて、ギルド長と一勝負やり合ってこなければならないので!
私はニコリと笑顔で会釈をし、その場を立ち去った。
◇◇◇
ギルド長との涙の勝負から数カ月後。
「全戦全敗か⋯⋯」
こちらでも自分の望む結果を手にすることができずにいた。
「まぁ、こうなることは最初から分かってたよ? でもさ、貴族社会って世知辛すぎじゃない?」
私はそう口にし、机の上に突っ伏した。
「そもそもうちに婿入りしてくれる人なんて存在する?」
そう。私は現在絶賛婚活中だ。
こう見えて私はレイニード子爵家の次期当主。当主教育と淑女教育を終えている立派な貴族なのです。えっへん。
ただそんな私は現在大きな問題にぶち当たっている。
それが婚約者問題だ。
私の今の年齢は二十三歳。はい、結婚適齢期を余裕で超えてますね。
適齢期を過ぎている女性は敬遠される。
何か結婚できない難があるだろうと勝手に判断され、相手にもされなくなってしまう。ひどいよね。
結婚って相性が一番重要じゃない? なのに年齢がいってるからってだけで会って話すらさせてもらえないのだ。
⋯⋯まぁ私、というより家に難があるのはたしかなんだけどね。トホホ⋯⋯
私だってできることなら学園を卒業する十八歳で結婚したかったよ?
でも当時の我が家は、もう超が付くほどの貧乏で。とてもじゃないけど結婚なんて無理。
まずは借金をどうにかしなければ、結婚なんて夢のまた夢。
そんなわけで私は借金返済のために、学園卒業と同時に冒険者ギルドに就職したのだ。
貴族の令嬢が働くなんてと、周囲から批判されるのが貴族社会ではあるが、私はそのあたりの抵抗はなかった。
だって働かなくちゃ、借金は返せないし?
借金返せなくちゃ、家断絶しちゃうし?
私は魔法と体術が得意、というか大好きだったから、冒険者ギルドは肌に合っていた。
それにギルド長から、休日なら冒険者として活動してもいいと言われたもんだから、私は喜んで冒険者活動に勤しんだ。
副業オッケーな職場とか最高すぎるでしょ。
冒険者活動で得た報酬は、全部借金返済に充てましたよ。
どうやら私って自分で思っていたより強かったみたい。
そりゃあ金銭面でも安全面でも、宮廷魔法使いのほうが待遇はいいよ?
でも残念なことに、女には宮廷魔法使いになる資格がない。実力ではなく性別で弾かれてしまうのだ。
文句を言ってやりたいところだけど、そんなことしたらそこで人生が終わってしまうからね。
そこはふざけんなと、枕を殴って耐えましたよ。ええ。
まぁ結果的には制服が可愛くて、副業オッケーで、優しい同僚に囲まれて、楽しい出稼ぎ生活だったけどね。
「⋯⋯最後の望みはこれね」
私は一通の封筒を手にした。
これはつい先ほど届いたばかりの、王家主催のパーティーへの招待状だ。
王家主催のパーティーとなれば、国中の貴族が参加するだろう。
婚活中の身としては大変ありがたい。
きっと私だけでなく、この機会に賭ける令嬢は他にもいるはず。
「でも⋯⋯」
ただ一つの疑問が残る。それはなぜ今なのかということ。
間近に建国記念日があるわけでも、国王陛下の生誕祭があるわけでもない。
王家主催のパーティーといえば国の慶事の際に行われることがほとんどだ。
過去によくあったのは戦勝記念で開かれたパーティー。けれど今この国は戦争などなく、平和そのもの。
あとあるとすれば王族の婚約発表くらいだが、現在の成人王族には全員婚約者がいたはず。
国王陛下のお子である第一王子と第二王子、それに第一王女は十歳と八歳と五歳。
婚約者を決定するにはまだ早いだろう。
それならば今回のパーティーは何の名目で開催されるのか。
「あ。でもそういえば、王弟殿下には婚約者がいなかったような⋯⋯」
ふとそんなことを思い出した。
国王陛下の弟君である王弟殿下はたしか私の一つか二つ歳上だった気がする。
王族相手に気がするなんて失礼かもしれないが、王弟殿下は身体が弱く、長い間表舞台に立っていない。
そのため王弟殿下に関する情報はほとんどなく、なんならすでに亡くなっているのではと考えている貴族もいるくらいだ。
もちろん私はそんな不敬なことは思っていない。
けれど実際その姿を見たものは誰もいないのだ。
「それじゃあもしかして王弟殿下の? ⋯⋯いえ、それはないわね」
一瞬このパーティーは王弟殿下の婚約発表の場なのではないかという考えが過ったが、やはりそれはないと頭を振る。
男性は女性ほど結婚に年齢は左右されないが、なるべく早いほうがいいというのは変わらない。
ただ貧乏貴族の私と違い、彼は王族だ。これまで婚約者を作ろうと思えばいつでもできたはず。
それに国王陛下だって、弟に妃をと思えばいくらでもあてがえたはずだ。
けれどこれまでそうはしてこなかった。それなら今さら婚約者ということはないだろう。
「まぁ理由なんてなんだっていいわ。私は必ずこの機会をものにする! もう選り好みしている場合じゃないわ!」
父親より年下で、かつすぐに婿入りできる年齢であるのなら誰でもいい。
見た目なんて二の次だ。重要なのはこの血を繋いでいくこと。
たとえ相手がクズだったとしても、この家に婿入りしてくれるのだ。そこは責任をもって私が教育してみせる。
「だからどうか、どうか神様! この哀れな私に素敵な出会いを!」
◇◇◇
そうして迎えた王室主催パーティー。
「ビオラ・レイニード嬢」
一人の男性が私の名を呼び、跪いている。
私はあまりの状況に白目を剥きそうになっていた。
(たしかに素敵な出会いをって祈ったよ? でもさ、これはちょっと違うんじゃない!?)
「どうか私をあなたの婿にしてほしい」
うん、違う。違いすぎてもはや声も出ない。
何をどうしたらあの王弟殿下が、私に求婚なんてするのか。
え? 本当にこのパーティーは王弟殿下の婚約発表の場だったの? いや、この場合はプロポーズの場か?
そもそも私と王弟殿下に面識はない。
ただなんか聞いたことある声だなと思って思わず振り返っただけなのに、まさかこんなことになるなんて。
⋯⋯でもたしかに誰かの声に似ている気がしたんだけどな。
「これをあなたに捧げます」
そう言って王弟殿下が差し出したのは、信じられないほど大きな魔石。
魔石は求婚の際に使うものだ。だから私も念のためこの場に持ってきている。
けれどこんな大きな魔石は見たことがない。
「こ、れは⋯⋯」
一体いくらするのか。目をこれでもかと見開いていると、彼は何でもないかのように言った。
「これは飛竜の魔石です」
「ひ、飛竜!?」
いやいや、飛竜ってあの飛竜?
え、本当に? でも飛竜ならこの大きさも納得⋯⋯って、王弟殿下とあろうお方が一体どこで手に入れたの!?
「あなたに捧げたく、自分で採ってきました」
「じ、自分で!?」
王弟殿下が飛竜を?
竜種の討伐は国家戦力が必要になるほどに難易度が高い。
でも最近、国で竜種を討伐したなんて話は聞いていない。
それなのに自分で採ってきた? いや、ありえないでしょ。
だって彼は王族だ。
最後のお客様であったS級冒険者の彼はたしかに一人で飛竜を討伐していたけど⋯⋯
「本当はあの日にあなたに求婚するつもりだったんです」
「⋯⋯あの日?」
あの日とはいつのことか。
私たちに接点なんてないはずで――
「それなのにまさか、あなたがギルドを辞めてしまうなんて⋯⋯」
「へ? ギルド?」
「汚れた姿ではいけないと、ヘルムを磨くのに時間をかけすぎたのがいけませんでした。さっさと新しいのを買っていれば⋯⋯」
「ヘルム? え。あなたは⋯⋯」
飛竜、ギルド、ヘルム⋯⋯。
この単語で思いつく人物は、ただ一人。
「⋯⋯もしかしてアルフ、さん?」
「はい!」
彼は嬉しそうに顔を綻ばせた。
(うっ!)
その姿があまりに神々しくて、目がつぶれそうだ。
実際、周囲にいた女性たちが次々と倒れていく。
なんという破壊力なのか。
(い、いやだめだ。ここはしっかりしないと⋯⋯)
「兄上からはちゃんと許可をもらっていますから心配はいりません」
ん? 兄上?
王弟殿下の兄上っていったら⋯⋯国王陛下!?
いや、ちょっと待って。国王陛下から許可をもらってるとか何?
しがない貧乏貴族に、あなたの大切な弟さんを婿入りさせてもいいんですか!?
「だからどうか、私をあなたの婿に!」
ずいと、前に差し出された国宝級であろう魔石。
そして嫌味なほど爽やかな笑顔に、私の表情は引きつった。
(ど、どうすればいいのーーー!?)
この日王家主催のパーティーで起きた出来事は、すぐさま国中に知れ渡ることとなる。
そしてパーティーから三日後。
王弟アルフォンス・フォン・ミレニアムと、子爵令嬢ビオラ・レイニードの婚約が成立したのであった。




