9話
亡くなった黒い猫を招き入れてから数ヶ月後のことでした。
暑さが本格的になる少し前の時期。畑仕事の手伝いが本格的に始まる頃のお話です。
それは金曜日の日の出来事でした。
お昼休憩に入ってすぐに、いとこから電話がありました。
この時期になると、いとこはいつも電話をしてきます。
「来週の土日だけど、畑の手伝いに来れるか?」
「うん」
私はいつものやり取りをするとばかり、思い込んでいました。
ですが、その日の電話は違っていたんです。
「もしもし、マコトだけど、」
「セイジさんが亡くなった」
「……オラほうの父親が亡くなったってこと?」
「セイジさんって他に誰いるのよ!今、七戸病院にいるから」
「わかった。今、行く」
その電話は私の父の訃報を伝えるものでした。
会社を早退し、急いで病院に向かう。地元にある公立の病院に。
私は受付の人に声を掛け、案内されたのは、霊安室でした。
そこには母がいました。
「畑で熱中症で倒れでだ。見つけるのが遅ぐなって、そのまま亡くなった」
突然の出来事でした。たしかに最近、父の体調があまり良くはなさそうだというのは知っていました。
ですが、私は一緒に住んでいるわけではありませんでしたので、詳しい状態までは知りません。
それから、母から少しずつ話を聞きました。
私もですが、母もまだ理解が追いついていないようでした。
少しすると、葬儀屋さんがやってきて、父を葬儀場へ運ぶ準備をし始めました。
私と母は近くにある葬儀場に移動することになりました。
頭の中では、どこか父の死については深く考えることはできず、やらないといけないことを始めることに。
妻に連絡し、兄に連絡し、改めて会社に連絡をする。
たまたまその日は妻が休みの日で、リゾートバイト先の寮から自宅に戻ってきており、近所で買い物をしているところでした。
両親と一緒に暮らしている長男は、出かけていて、なかなか電話が繋がりません。
私は母と一緒に葬儀屋さんの話を聞いて、段取りを進めました。
話がひと段落する頃には妻、兄やいとこ、近くに住んでいる父の兄弟姉妹もやってきました。
その頃になって、私の気持ちもだいぶ落ち着いてきました。とはいえ、頭の中ではまだ理解が追いついてはいません。
改めて父の顔を見ると、どこか微笑んでいるように見えました。
父は幸せな最後を送ることができたのだろうか。
顔色は白く、生気はない。亡くなっているから、当然のことなんですが、頭はどこか冷静でした。
そして、葬儀は着々と、次の段取り、次の段取りと進んでいきました。
私はその段取りをじっと見ていました。愛犬のロコットが亡くなったら、こうしたら良いのだな。黒い猫の時はきちんと埋葬できたとは思っていなかった。
ロコットはきちんと埋葬してあげたい。この頃のロコットはもう長くはないとわかるくらい弱り始めていた。
亡くなった父よりロコットのことを考えてしまう。
まだ自分の中で感情が追いついてこない。
葬儀も進み、火葬通夜の頃には、ようやく泣くことができた。妻に笑われるくらい号泣してしまった。
それから一ヵ月後、ロコットは亡くなってしまった。
黒い猫はまた死を招いてしまった。だけど、それは……




