4話
私があの会社を辞めようと思ったのは、祖父の死がきっかけでした。
一緒に住んではいませんでしたが、畑の手伝いがあるたびに、遊びに行って、いつもくっついて歩いていました。
そんな祖父が亡くなり、仕事も多忙で、心が疲れていました。
その頃は仕事もひと段落してきて、私は夜勤から日勤の仕事に戻っていました。そんな時、会社の方では工場移転の話がでていました。
第一と第二を統合し、今よりも大きな工場になる。
心機一転するタイミングとして、ちょうど良いと思い、会社を辞めることにしました。
会社が移転する前に辞めることになりましたが、工場の後片付けはしないといけません。
第二工場の方の片付けを任されて、先輩と行くことになりました。
この先輩は幽霊が見える先輩とは違う人です。
工場の片付けも終わりが見え始めた頃です。
「まだ、片付け終わりじゃねぇからな。ここに二階部分があるんだよ」
先輩の指さす方向には、二階へと続く隠し扉がありました。先輩は隠し扉に棒をひっかけ、扉を開けると、中からハシゴが現れました。
そのハシゴを登りきると、私はその異様さに気がつきました。
その隠し部屋は三角屋根の物置部屋でした。窓から太陽の光が差し込み、明るく暖かいはずなのに、どこか寒気がするような感覚がある。
霊感はありませんが、直感的に思いました。
ここに黒い幽霊が閉じ込められている。
見えないはずなのに、わかる。
あの夜勤の時に感じた、あのイヤな感じとそっくりの雰囲気。
幽霊が見える先輩が来ることを拒んだ理由がわかりました。
この部分には足を踏み入れたくない先輩の理由を一瞬で理解することができました。
何か供養のようなものをやりたいと思っても、私はもう会社を辞める人です。
誰もいなくなる工場で、一人寂しく取り残され、閉じ込められるその存在に、私は何もすることができないまま辞めことになりました。
あれから二十数年経ちました。
第一工場は取り壊され、跡地にはコンビニが建っています。その場所は新しい道路が開通された事もあって、あの十字路で事故があったということは聞かなくなりました。
私の住んでいたアパートも取り壊されました。ですが、アパートの跡地には何も建っていません。
住宅密集地なのに、あのアパートの跡地は異質を感じるまでの空き地が広がっています。
そして第二工場は、あの時のまま取り残されています。
きっとまだあの工場にはあの黒い幽霊が閉じ込められているのかもしれません。
これが私が当時体験した怪異になります。
そして、この怪異が今に繋がっているということが、はっきりとわかります。
これからお話するのは、今私に起こっている怪異のお話です。




