1話
ウソかマコトか。
これは私が実際に体験したお話です。
今から20数年前の話で、当時私が20代前半の時のお話です。
その時は何も知らずに、何も感じずに過ごしていましたが、今思い出すと私はかなりの体験をしていたんだと思います。
私は幽霊の出る会社に勤めていました。製造業の会社で第一工場、第二工場と二つの工場があり、どちらも出る会社でした。
そして、当時の私はアパートを借りていました。私の住む隣りの部屋は地元では有名な事故物件だったのです。
私はそれを知らずに、そのアパートに住んでいました。
このお話は私が事故物件の会社に勤め、事故物件の家に住んでいた時の話です。
まず、始めに起こった怪異は会社での出来事でした。
注文が増えて、仕事が忙しくなり、夜勤での生産体制を整えないと、生産が間に合わない状況になりました。
私はそれまでは第一工場で日勤の仕事でした。ですので、幽霊の噂は聞いたことがあっても、見ることはありませんでした。
夜勤の仕事は第二工場の方でやることになり、私は異動することに。とはいえ、第一工場と第二工場はそれほど離れているわけではなく、車で15分ほどの場所です。
小さな会社でしたので、夜勤作業者は私一人です。霊感はないと思っていたので、幽霊を見ることはないだろうなと当時は思いこんでいました。
夜勤の仕事をするようになって1ヶ月ほど経ったある日のこと。
その日もいつもと同じように日勤の人と引き継ぎをして、夜勤の仕事を始めました。
22時を回った頃でした。
ふと、会社の玄関の方から人の気配がしたのです。
工場の灯りはついていますが、玄関の鍵は閉めている。誰かが入ってくることはありません。
気のせいだと思いながら、仕事を続けていると、今度はさっきより近い位置で人の気配がしました。
ここまでくると、さすがにイヤでも同僚が話していた幽霊の話を思い出しました。
「あっちの工場は黒い幽霊だから、気をつけた方がいいよ」
当時の私には、この意味がわかっていませんでした。昔のネット事情は今ほど優秀ではなく、調べても簡単に情報が出てくるものでもありません。
同僚の話が頭の中で繰り返される。
さっき感じたのは黒かったのか?感じたというよりは……見えたのか?色は?
自問自答を繰り返す。
仕事の手を止めることなく、頭の中で何度も繰り返して考えてしまう。
その時でした。
身体が少し反応する。
何とは言わないが、ただ反応していることだけはわかる。
なんで?
でも身体は感じ取っている。
すぐ目の前にいる見えない何かを。
工場の中では冷房の音と機械の稼働音だけが鳴り響いている。
私はすぐに休憩室に駆け込みました。テレビをつけ、ボリュームを高くする。
幸いなことにお笑い番組がやっていたので、気は紛れました。
この日の怪異はこれで終わりました。
私にとって初めての怪異で、始まりの怪異です。




