表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/111

6−6 下級魔獣討伐 (4)

「テティス!」

「はいはい」

多分、所謂魔眼の様な魔法を使ったのだろう。何とかしろ、と言うのねヨハン。

「弱点は分かるな!?」

「それはもう見るからに」


後方ではプリシア・サマセットがジェラルド・ファインズに声をかけた。

「ジェラルド、大丈夫ですか?」

「ちょっと足が痺れたが、大丈夫だ」

「それはよかった。支援する私達が飲まれては意味がないですからね」

「分かってる」


 私は一つ目巨人、多分サイクロプスの頭部を8個のアイスランスで囲んだ。その上下にやはり8個のアイスランスを作り、合計24個のアイスランスを一斉に頭部にぶつけた。


 サイクロプスは中腰で腰のあたりに両腕を置いていたから、そこから顔を保護しようと動かしても間に合わなかった。4本のアイスランスが大きく開いていた瞳に刺さり、両耳に一本ずつ、口と両頬に一本ずつアイスランスが刺さった。痛みを感じてからサイクロプスは瞳を閉じたから、閉じる時にはもう柔らかい半透明の物体が瞳から零れていた。サイクロプスは続いて両手で顔を拭って顔に刺さったアイスランスを落とした。そして、大きく口を開いて咆哮した。


「ぐわぁあぁぁあぁ!」

「きゃあっ」「うわぁっ」

可愛い声を上げたのはもちろんプリシアではなく、魔法実技の副教官のフランシスカ・グレイだった。多くの生徒・教官達がその場でへたり込んだ。


「テティス!」

「はいはーい」

お給金も貰わずただ働きを続ける私って健気、って誰も言ってくれないのが悲しいけど、これは早く口を塞がないと大変だよね。私はサイクロプスの顔を大きなウォーターボールで囲った。


 ごぼごぼ…

声を出せなくなったサイクロプスは両手で顔に纏わりつく液体を振り払おうとするが、ごめんねぇ。もっと水を飲んで欲しいんだ。


「シア!大丈夫か!?」

「…懐かしい名を呼ぶのね」

「すまん、咄嗟の事で、馴れ馴れしくてすまん」

「いえ、忘れていないなら良いのですよ。お前もしっかりしろよ、ジェリー!」

「何だ、中身は変わってないのかよ…」

「いえ、随分女らしくなったでしょう?」

プリシアはジェラルドを睨んだ。

「睨んで回答を強制するなよ」

この二人は幼少の頃は仲の良い悪ガキ仲間だったのだ。


一方、生徒・教官達もサイクロプスの瞳が閉じ咆哮が収まった為、正気に戻った。ヴィクター・ウィロビーは思わず口にした。

「サイクロプスって口があったんだな。初めて見たよ」

寮仲間のカーター・コプレーが返した。

「普通はあの目で見つめられたらもう生き残れないからなぁ…咆哮まで聞けるのは特別運が良いぜ」

「いや、運が良ければあんなのに遭遇しないぞ」

「そりゃそうか」


 遠くでヴィクター達の話し声が聞こえた。ちょっと、上級魔獣を相手にしているのに、この人達すごく呑気だよ!ヨハンもいつもの「呑気だな(呆)」を言ってよ!


 と口にしたらそれこそこちらに「呑気だな」攻撃が来るから言わないけど!しかし、サイクロプスは中々しぶとい。全身水で覆うか。ウォーターボールをどんどん大きくしてサイクロプスが中に浮かぶ程にする。


 じゃばん、じゃばん。

楽しそうに水遊びをしているなぁ…暴れるヤツが中にいるのに水の形を保持するのも面倒だから、浴槽を作ってあげよう。サイクロプスの周囲を覆う水の外側にアイスボックスの魔法で大きな氷の箱を作る。大分厚い氷にしたけど、サイクロプスの水遊びは大分過激で乱暴だ。もっと氷の厚みを増そう。サイクロプスは水をかき分けようと指を広げて暴れるが、その指が氷に当たって血が出ている。ほらほら、大人しくしないと痛い思いをするよ?


 ヴィクター達は相変わらず他人事だ。

「サイクロプスって水に浮かぶんだな。初めて見たよ」

「普通はサイクロプスに出会ったら生きて帰れないからなぁ…」


 ヨハン!凄い呑気な連中がいるよ!?「呑気だな」攻撃をしてくれないと不公平だよ!いや、こっちに攻撃が来ると嫌だから口には出さないけどさ。

「そろそろじゃないか?」

「はいはいはい」

つまりそろそろ凍らせろ、見ていて飽きたと言うのだろう。何という他人事感。だからアイスボックスの氷をどんどん内側に厚くしていく。


 動く水が少なくなり、サイクロプスは氷を叩いて何とかしようとするが、反動をつける距離がなければ巨人の怪力も上手く発揮出来ない。何とか体を捩って動こうとするサイクロプスを氷で囲み、身動き出来なくする。


「死んだか?」

「まだ水気は濃紺を示しているから生きてると思う」

「濃紺って何だ?」

「絶望でしょ」

「…早く楽にしてやれ」

「はいはい」


 そういう訳で氷をもっと冷やしてやる。水気はだんだん薄くなり、サイクロプスの体内の水分が凍っているのが分かった。

「微妙に魔力が残ってる…この子、随分我慢強いよ」

「弱ってはいるんだな?」

「殆ど凍っているわ」

「なら、良い」

 サイクロプスは原語でキュクロプスですが、邪眼の類はありませんね。ただし、どこぞの船員を全員捕らえたとありますから、何かそういう能力があっても良いかな、と設定しております。ただの一つ目入道だったら、喜ぶのは小泉八雲さんくらいでしょうし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ