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1−5 魔法の練習?

 カーライル伯爵家の代官である、父の弟であるノーマンの息子のジュリアンは私より一つ年下だった。彼のそれまでの友達はもう家の手伝いをする様になって遊び相手がいなくなったと思うけど、女と勉強など嫌がる年頃だった。ところが、それまでの平民の友達は誰も使えない魔法が使える様になると、面白がって学習にも練習にも精を出す様になった。ただし、彼は土属性だったから、魔法の練習とはつまり、穴を掘り小山を作る事だった。

「ジュリアン…こんなに穴を掘ったら駄目でしょう…落ちて怪我をする人がいたらどうするの?」

「だって練習なんだから回数をこなさないと駄目だろう!?今は穴を早く掘る練習をしてるんだよ!」


 この年頃の男の子は、興味のある事にとことん突き進むものだった。そこら中にどんどん穴を掘るものだから、とうとう代官である叔父様に苦情が行った。

「ジュリアンの事で悪いが、何とかしてくれ」

叔父様はジュリアンに言い聞かせてくれ、と言いたいのだろうが、言っても無駄な年頃だ。全くもって、十代前半の男なんてケダモノ以外の何者でもない。感情のままに突き進むだけの生き物だと見せつけられている。そういう訳で私はジュリアンを説得するのは諦めた。ジュリアンが堀った穴の近くに積まれた、掘り起こした土に水をかけて、その水ごと土を動かす事で穴を埋めていった。


「そんなゆっくり埋めてたら間に合わねーぞ」

と言って、こちらが埋めるそばからまた違う穴をジュリアンは開け始めた。ぷちっと何かが切れる音を聞いた私は、ジュリアンの背後から巨大なウォーターボールをぶつけて、彼ごと彼が掘った穴に落としてやった。

「待て!おぼれるだろう!?何てことするんだよ!?」

「あなたが言う事を聞かないからでしょう!?」

そう言って私はジュリアンの頭の上からウォーターランスを何度も落としてやった。

「待て!俺が悪かった!もうこんな事はしない!」

ジュリアンは一応『もうしない』宣言をした。


 ところが、ジュリアンは次はクレイウォールを多数作って水魔法を防ごうとした。

「やーい、これなら水魔法をぶつけられないだろう?」

「なんだと」

私は渾身のウォーターランスで土壁を木っ端微塵に吹き飛ばしてやった。

「お前!なんて乱暴な奴なんだ!?」

「なんだと」

土壁がなくなったのに口で反撃したらどうなるか。ジュリアンは私の渾身のウォーターランスで30ft吹き飛んだ。

「ごめんなさい」

「もうちょっと考えなさい」


 そういう事でジュリアンは考えて来た。二重の土壁を作ったんだ。

「やーい、これなら水魔法をぶつけられないだろう?」

「なんだと」

しかし、一枚目の土壁を破った後で二枚目の土壁は私のウォーターランスで半壊しかしなかった。

「あれ?」

「ふははは!土壁に強化魔法をかけたんだ!いつまでもおばさんテティスに敗れ続ける様な、昨日までの俺だと思うなよ?」

「ほ~、そういう事を言うんだ?」

私は上位魔法の詠唱に入った。ちなみにジュリアンと私はいとこだ。

「天空に漂う命の源たる水よ、ここに集いて我が敵を滅ぼせ、ウォーターフォール!」

「ぐはっ、ちょっと待て…」

ウォーターフォールは多少の高さの壁より上から水をぶちまける。ジュリアンは水流に100ft流された。


 しかし、田舎とは言え、領主の館付近で100ft四方以上が水浸しになったのは代官であるノーマン叔父様も見過ごせなかった。

「二人共、魔法の練習をするのは良いんだが、周囲への影響も考えなさい」

「テティスが乱暴なのが悪いんだろう!」

「ほー、この期に及んでそういう事を言うんだ?」

私の周囲に魔法が充満するのを見て叔父様が慌てて止めた。

「テティス、君は魔法でビッグになるんだろう?もうちょっと周囲に配慮しなさい」

「あ、ごめんなさい」

ジュリアンがその言葉に反応した。

「父さん、魔法でビッグになれるのか?」

「そりゃあ、王国一の魔法使いになればビッグだろうよ」

「そっか、それを目指すってのも良いね」

「そう簡単に言うなよ。そういうのを目指す連中は、本当に化け物ばっかりなんだ」

「なるほど」

叔父様とジュリアンは私の方を見つめて言った。なんでよ!?


 そういう訳で、ノーマン叔父様の指示で私達の対戦の場は領地外に流れていく川の川原になった。いや、対戦を止めてよ叔父様…


 それでも私は二日に一日はジュリアンから逃げ出した。

「待て!尋常に勝負しろ!」

叔父様との約束は二日に一回だった筈。そういう事で私は山を登って逃げた。瞬発力なら男の子の方が上だけど、水魔法には運動強化魔法がある。これを使って三十分も走り続ければさすがに追いつける訳がない。


 逃げるのには理由があった。人間相手に使うと危険な魔法を練習する為だ。そう、もう私は上位魔法である氷結系の練習をする段階に入っているんだ。アイスボールが顔面に直撃すれば、鼻やら頬骨やらが折れるし、アイスランスに至っては致死性の魔法だ。そういう事で私は一山越えた先の谷で、氷結系の練習をしていた。

 ノーマン叔父様の奥様は貴族の子女なので、息子のジュリアンも貴族相当の魔力はある様です。魔法練習の相棒がいて良かったのですが…大変そうですね。

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