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4−14 もっと大きな奴を (2)

「魔法の妨害って何!?」

「意図してやったかは分からん。魔力を持つ生き物には魔力を体外に出すポイントがあり、そこでの魔法行使力と距離を開けた時の魔法干渉力のかけ合わせで、体から離れた場所での魔力が決まる。例えば奴の体から10ftくらいでは奴と俺の魔力の影響力では奴の方が勝つ。火魔法は最後まで誘導しないと火を纏められないから、奴の魔力が勝った段階でフレームランスが爆発したんだ。お前が水気を感じないっていうのもこの影響だろう」

「あー、つまりあの滝の横のところに、そういう強い魔力を持つものがいるって事?」

「お前のお待ちかねの相手だ」

「いや、私は待ってないけど。イノシシ狩ってお肉持ち帰るくらいが良いんだけど」

「もう出た以上、構わず叩きのめせ」

「大体、何が出たか分からない…ああ、なにか靄がこっちに進んでいる気がする…」

「俺がおびき出してやったんだ。ありがたくやっつけろ」

「ありがた迷惑と言う言葉を知って欲しいわ…」

「それはまた今度にしよう」

「え~」


 水蒸気で靄っている中、黒い影が洞穴から顔を出した。影はゆっくりと進み、前足らしい物が胴体の両側に確認出来た時にも、まだ黒い影だった。つまり、全身が黒い生き物に見えた。それが進むに連れて、背中のでこぼこの中に赤い色が斑に付いているのが分かった。


 ゆっくり進んだそれは、20ftも進み出たところで、4本足のトカゲの様な生き物である事が分かった。更に進み出たそれは、最終的に全長35ftを越える生き物だった。


「あれがオオトカゲ?随分大きいのね?」

「…お前は本当に呑気だな。普通のオオトカゲは10ftくらいだ」

「ちなみに、普通のオオトカゲはどうやって倒すか知ってる?」

「盾と槍で行動を制限した後、打突武器で大勢で殴る」

「皮を防具にすると聞いたけど!?」

「大勢で殴ると皮をなめす手間が減るんだ」

「そこまで固いのね…」


 ここまで話したところで、騎士団の指揮官が声を上げた。

「黒いだけのオオトカゲは固いので物理無効と言われている!だが、赤い背中のオオトカゲは魔法が効かないので魔法無効と言われている!」

ヨハンと私は顔を見合わせる。

「つまり黒い背中に赤が斑のオオトカゲは、物理も魔法も無効なのね…」

「あいつの魔法干渉距離を知りたい。ウォーターランスを打って見ろ」

ウォーターランスもファイアーランス同様に最後まで誘導しないと形が崩れる。

私の打ったウォーターランスは、相手から10ft強の距離で形が崩れて地面に落ちた。

「10ftちょっとがあいつの魔力の影響範囲と言う訳だ。それより長い距離から物理現象になっていれば妨害出来ないだろう。20ft上から丸太ランスを落としてみろ」

「グラマーランスとか、セクシーランスとか女らしい呼び方はないの?」

「本人に色気が出たら言ってやる」

「ぶ~」


 大オオトカゲの上20ftに10ft径のアイスランスを作り、落とす。ガツンっと音が立ったが、大オオトカゲは口を開けただけだった。

「屁でもない、と口を開けたみたい」

「気にはなったから口が開いたんだろう。だが、これで連打してもダメージは低そうだな…」

「じゃあ、倍の太さにしてみよう」


 直径20ft、大オオトカゲの胴より太いアイスランス…そろそろアイスバーグと呼ばれそうな物を作り、落とす。ガツンっ、ゴトン、ゴトンと音が続くが、大オオトカゲはさっきより大きく口を開けただけだった。

「どっちが化け物が分からんな…」

「凄い固いね」

「流すなよ…まあ良い。続けろ」


 ガツンっ、ゴトンゴトン、ガツンっ、ゴトンゴトン。3回続けたところで空気中の水分が無くなって来たのが分かる。仕方がないから落ちているアイスランス(大)を蒸発させて再度アイスランスにして落とす。先を尖らせても大オオトカゲの背中に傷は付かない。


「埒が明かんな…お前、魔力は大丈夫か?」

「魔力より水分が足りない…川の水を枯らせる訳にもいかないし…」

「お前、本当に化け物だな…背中はあまり動かさないから固いんだろう。

首を狙ってみるか?」

「どこに動脈があるか分かる?」

「皮を破れなければ動脈がどこでも関係ないだろ。質量は変えずに先端を工夫しろ」


 う~ん、皮を削る…ノミみたいな形状がいいかな?先端を尖らせ、薄く小幅な刃を作る。落とすと、バキン、と折れてしまった。

「もう少し太くしろ!」

私もそう思う。全体を三角形にして先端を下にして落とす。バキン、また折れたけど、大オオトカゲの皮も少し欠けた気がする?

「刃を斜めにしてみろ!」

うん、ついでに落とす場所を首の横にしてみよう。


 バキン、折れたけど、大オオトカゲも痛みを感じたらしい、ゆっくりと首を左右に振っている。

「首の両側にアイスランスを落として身動きを取れなくしろ!」

はいはい。丸太なランスを大オオトカゲの頭の左右に落とす。ヤツは水属性ではないらしい。氷を解かす事は出来ない。これ、胴体の両側にもした方が良いよね?前後の左右両足の根元の前後に丸太なランスを落とす。よし、これでトカゲの標本状態だ。


「…」

ヨハンが黙ってしまった。何でよ?考えてやってるんじゃない。しかし、どうやら水切れだ。川の水を蒸発させて利用させて貰う。

バキン、ゴトンゴトン。

バキン、ゴトンゴトン。

作業の様に同じことを続けると、遂に大オオトカゲの首から出血が始まった。


 ところが、大オオトカゲの血を浴びたアイスランスは、蒸発させにくい。

「あの大オオトカゲ、本当に強い魔力を持ってるみたいね」

「何を今更…気付いた事があるのか?」

「あいつの血が付いた氷は蒸発しにくいの。あいつの魔力の混じった血が魔法を妨害するのね」

「元々魔力の強い奴だから、そうだろうが…水が足りないのか?」

「川から持って来れば良いけど…枯れちゃうよ」

「……後で戻してやれ」

ヨハンの顔が疲れている…働いているのは私なんだけど!?

 長くなったのでここで切ります。ほぼ書けているので、明日も更新します。

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