表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/111

4−11 氷漬けの男

 ミノタウロスは立ち上がった。あの子にどれだけ知性があるか試す為に、足元に1ftのアイスウォールを作った。こてん、見事に転がった。うん、畜生並みの知性だ。立ち上がるまでの間に周囲をアイスウォールで囲む。それを見たミノタウロスは石斧をアイスウォールに叩きつけた。

「凄いぞミノタウロス!腕力で氷魔法に立ち向かおうとは、何て男らしい!」

「だから脳筋なだけでしょ」

ハイになってるヨハンと冷たく言い放つリアンナ王女。仲良しだなぁ。


 観衆のみなさんには申し訳ないけどそろそろ終わらせたいので、アイスウォールの壁を内側にどんどん厚くしていく。身動きの取れなくなったミノタウロスが大声で鳴いた。

「ぶもぉぉおぉぉお!」

「ひぃっ」

鳴き声に反応したのはリアンナ王女だった。牛が怖いのか。都会の女の子は可愛らしいなぁ。

「テティス!大丈夫か!?」

「牛が鳴いたくらいで騒ぐ田舎者はいないよ?」

「そうじゃないんだが…平気なんだな?」

気になって周囲を見渡すと、リアンナ王女がへたりこんで騎士に肩を掴まれて倒れない様に支えて貰っている。騎士の半分は跪き、立っている騎士の半分も膝が笑っている。

「精神感応魔法?」

「威圧だ!鳴き声に魔力が乗っていたんだ」

そうか、上級魔獣は魔法を使うんだ。脳筋だけど。だからヨハンが対応を指示してくる。

「声を抑えろ!頭部を氷で囲うんだ」

「うん、もう全部氷で埋めちゃうよ」


 そうして氷でミノタウロスの頭部全部を凍り付かせようとしたところで、再度ミノタウロスが鳴いた。

「ぶもおぉおぉおぉ!」

「きゃああああ」

リアンナ王女が今度は大きな悲鳴を上げた。私が作った氷にひびが入り、音が漏れたんだ。

「あ、ごめん。ひびが入っちゃった。すぐ埋めるから」

「…そうしてくれ」

ヨハンの声が疲れていた。何でよ。


 そのまま冷却を続けて、ミノタウロスは全く動けなくなった。体を震わせたけれど、もう鳴き声は漏れてこなかった。

「死んだか?」

「魔力は弱まっているけど、まだ残ってるから生きてるわ」

「そのまま冷却を続けろ。騎士達はお互いに声をかけて正気に戻れ!」

おう、しっかりしろ、大丈夫か、など騎士達が声を掛け合う。大部分がへたり込んでるなぁ…みんな牛さんを見慣れてないから恐いんだね。都会で彼氏を作ったら、地方に行った時に牛舎に近づけるのは止めよう。そもそも臭いし、牛舎。


「マシな奴を8人集めろ!ミノタウロスを見に行く。槍持ちが4人欲しい」

隊長らしき人は素面な様で、部下に声をかけて人選をする。人選が終わったところでヨハンが私に尋ねる。

「奴はどうだ!?」

「大分弱ってると思うわ。近づいて本格的に冷やして良い?」

「騎士は先導しろ!リアンナはここで待機。護衛は残れ!」


 そう言う事で、騎士の先導で崖下に進んだ。

「うん、頭部に魔法反応がある。まだやる気みたい。もっと冷やすわ」

先導する騎士が後ずさる。

ミノタウロスを囲う氷は表面に霜が付き、その霜がどんどん増えていく。しばらくすると、ミノタウロスの魔法反応が消え、体内の物質と水分が見えて来る。

「魔力が消えたわ。ちょっと揺らしてみる?」

ヨハンが尋ねる。

「動かせるのか?」

「もちろん、地面から引っこ抜いて、周りも少し解かさないといけないけど。まあ中の温度は上がらないと思うわ」

「じゃあ、ちょっとやってくれ」


 ミノタウロスを囲む氷を円筒形に残して他は解かし、凍った地面ごと引っこ抜いてごろん、と横にする。その際にどすん、と地面を叩いて揺すってしまった。

「ねぇ、ミノタウロスは動いた?」

「俺に分かるか!」

「ヨハンはミノタウロスが大好きみたいだから、よく分かるかと思ったのよ」

「そこまで好きじゃないぞ」

あの喜び様は何だったんだ。


 さて、ミノタウロスの中の水分は見えている。つまり、今の振動で蘇生はしていない。

「生き返ってないから死んでそうね」

「なら、良い」


 ここでヨハンが上の方に声をかける。

「この周辺の道に詳しい奴、降りて来てくれ」

そういうと全員が降りて来た。騎士達はミノタウロスの周りに集まってがやがやしている。

「でけぇな、ミノタウロス」

「こんな近くで完全なミノタウロスを見れるとは思わなかったぜ」

「牛顔か、これ?馬っぽくないか?」

「馬頭だと神とか言い出す奴がいるから、牛って事にしとこうぜ」


「おい、道に詳しい奴はいるか!?」

数人がヨハンに寄って来た。リアンナ王女と護衛も寄って来た。

「出来ればアレを運びたい。馬車を呼んで来て欲しいんだが、どこまで来れる?」

「このあたりには獣道しかありません。馬車は無理です」

ヨハンも眉を顰めて思考が止まっている。

「ねぇ、そんなにミノタウロスが好きなら、転がして行こうか?」

「そこまで好きじゃないって言ったろ?だが、水魔法で転がせるか?」

「限界まで転がしてみるから、駄目になったら人力で転がして」

「それで行こうか。リアンナ、場合によってはお前の護衛にも力を貸して貰う。良いな?」

「ヨハンがそんなにミノタウロスが好きなんじゃあ仕方がないわね」

「そこまで好きじゃないって言ってるだろ!お前等しつこいな」

「冗談よ。学術的に重要って事よね?」

「そうだ。いくら金を出しても手に入らない物なんだ」

「分かったわ」


 こうして私の水魔法でミノタウロスの氷漬けを転がして持って行く事になった。

 ちょっと遅くなりましたね。すみません。


 今朝は柴田ケイコ先生のインタビューをやっていて、クリエイター魂みたいなものを刺激して頂きました。ありがとう柴田先生。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ