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3−2 聖女候補襲来 (2)

 日曜の晩に特待生寮に帰った私は、念のためヨハンに連絡を入れる。下女に男子寮の管理人まで届けてもらったんだ。すると特待生用食堂の個室に呼び出された。


 ヨハンは開口一番、本題を話し出した。

「聖女候補の事なら聞いているぞ」

「ファインズ家では能力を心配していない様よ。逆の意味で」

「リチャードもそういう意味では心配していない。教会が見つけられなかった人物なんだから、埋もれているに相応しい能力しかないだろう」

「でも、これから伸びる可能性もあるよね?」

「大体、人間の魔力は成長に従って伸びる。神経系が成長しきっている16才から急激に伸びる事は無い。一般的にはな」

「聖女なら一般的じゃない成長をするんじゃない?」

「聖女ならな。だから、2年ならリチャードが、1年なら俺が実物を見てある程度判断する訳だ」

「聖女の能力って、治癒とか聖盾とかになるんでしょ?そういう機会がなければ分からないんじゃない?」

「持っている魔力の強さは、魔法感受性が強ければ分かると言う事になっている。魔法感受性は基本的な魔力の強さに比例する。だから、俺とかお前が見ればバケモンか凡人かは分かるだろ」

「そういうの、私はあんまり分からないけど」

「じゃあ、一緒に魔法実技の授業を受けている奴の中で、圧力を感じる者の名前を挙げてみろ」

「ヨハン、ジェラルドお義兄様、プリシア様」

「それ、お前が頭が上がらない人物の事じゃないか?」

「そう、上位貴族の威厳なのか、魔力の圧力なのかは区別が付かない」

「それ以外に圧力を感じる奴はいないのか?学院に」

「ダミアン・カペルがうざい」

「それは魔法の圧力じゃないだろ?」

「彼がこっちを見てるだけで頭が痛いの」

「テティスは心配性だな。まあ、俺が隣にいる時ならどうとでもしてやるから、安心しろ」

うん、こないだ私に処理を任せたのを棚に上げてるな。


 月曜の朝、1組の担当教師が女生徒を連れて来た。通常の金髪とは少し色合いが違う髪の色の、目がくりっとした少女だ。

「今日から皆と一緒に授業を受ける事になった、セシリア・ストーナー嬢だ。教会で聖能力が確認され、貴族の推薦があった故に聖女候補となった。セシリア嬢、自己紹介を頼む」

「お初にお目にかかります。セシリア・ストーナーです。聖女候補として一生懸命、能力を磨いていきたいと思います」

ダミアン・カペルと数人が熱烈的な拍手をしたので、皆おつきあいで拍手をした。

「他に連絡事項はない。以上だ」


 教師が教壇から去ろうとしたところ、ダミアンが大声で文句を言った。

「おい!聖女様に対して皆、自己紹介をすべきだろう!?何でさっさと帰ろうとしてんだよ!」

「まだ聖女候補の一人として学院に通う事になっただけの女生徒を特別扱いは出来ない」

「何を失礼な!ラッセル侯爵が選んだ特別な聖女だ!早く馴染める様に心を配るところだろう!?職務怠慢だぞ!」

心を配る…この男には一番似合わない言葉だ。また、聖女候補もにっこり笑ってダミアンの発言を歓迎している。私なら謙虚にお断りを入れるところだ。


 ダミアンに譲る気が無い事があきらかなので、仕方なく教師が端から自己紹介させた。皆、名前と魔法の属性だけの手短な自己紹介をした。


 下位貴族の男子達が小声で話し合う。

「可愛い娘じゃないか。それで聖魔法使いなんて、憧れるな」

「ばーか。聖女候補は殿下と一緒に試練を受けるんだぜ?つまりリチャード殿下狙いの女だ。お前なんか相手にされるかよ」

よく知ってるな。知らなかった私が無知なのか。一方、女子達は冷ややかだ。

「まだ聖女候補一人目だもの。候補の中で上なのか下なのか分からないのに、ダミアンあたりにちやほやされていい気になってるなんて、聖女らしくないでしょ」

「でも、中々現れなかった聖女候補だから、それなり以上なんじゃない?」

「ラッセル侯爵の後ろ盾なんて、まともな人間なら断るところなのに、まともじゃないわよ」

ラッセル侯爵、人気ないな。一方ダミアンみたいなのがその侯爵を熱狂的に支持してる。あれか、不良のヒーロー、マフィアのボスみたいなもんかな。


 真面目なヨハンと私は教壇の真ん前に座っている。ちょうど半分の人間の自己紹介が終わったところで私達に順番が回って来た。

「ラルフ・アルベルトだ。属性は火魔法だ」

皆同様にそっけない自己紹介、それも偽名をヨハンが終えた。半目で口元を上げてセシリアを眺めている。彼女の魔力を感じただろうか。私には感じないのだが。

「テティス・ファインズ、水属性です」

さて、今朝は私の右手側にヨハンが、左手側にジェラルドが座っている。今日はダミアンと聖女候補がどれだけ暴れるかを心配したジェラルドが隣に座ってくれているのだけど、なんかこの席、息苦しい。危険人物二人の目に見えない圧力を両側に感じて、一般人の私は思わず息を潜めてしまう。


 そんなジェラルドが自己紹介をした。

「ジェラルド・ファインズ、火属性だ」

ジェラルドを見るセシリアの瞳が熱っぽい。一目ぼれか、リチャード殿下狙いじゃないのか。


 その後も自己紹介は続いていたが、セシリアはジェラルドをちらちら眺めていた。うん、しばらくジェラルド狙いで動きそうだ。リチャード殿下は多分、ヨハンの感想を聞いて顔を出すか出さないか決めると思うから、多分顔を出さない方向だろう。ヨハンのセシリアを見る視線はいいとこカエルかトカゲを見る熱量だった。


 そしてセシリア、聖女候補は多分、ヨハンの言う様に相手の魔力の大小を感じる能力が必用らしいのに、王子レベルのヨハンの魔力を感じないのか。これで王家はあなたを見切ったと思うよ。

 初心者作家は悪役を書くのが苦手です。『最果て…』の時は悪役セリフを書いただけでしばらく頭抱えてたもんなぁ…

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