11−16 衛星都市 (4)
代官の館は塀に備えた扉を閉めていた。そして向こう側に20人程度が控えているのが分かる。
「20人が控えているけど、アイスランスで扉を壊す?」
「もうフレームランスで良いだろ」
無造作にフレームランスが放たれ、瞬間の熱上昇に耐えられず木材が破裂した。そこにオオトカゲゴーレムが前足を前に突き出し、火の点いた扉を壊して侵入出来る様にした。
「やっぱり前足2本が腕扱いか」
ヨハンがまた呑気な事を言う。そのゴーレムは中に侵入し、不自然に素早くぐるっと右を向いた。そのまま尻尾を振ると、声が上がった。
「ぐわっ」
人を吹っ飛ばしたんだろう。悲鳴が上がった。
そうしてオオトカゲゴーレムが暴れている間に子ブリアレオスが門に入り、続いて私達も門から入った。先程と同じく、ヨハンが左、私が右を担当した。既に両側3人ずつ呻き声を上げて倒れていたので、7人を相手にすれば良かったのだが、何も考えずにアイスボールを連射した。通常のアイスボールより直径が倍のものだ。当たっても人は吹き飛ばない代わりに、皮の防具を通して肉体にダメージを与える。騎士達は前進できずに両腕を前に並べて防御をしようとする。それなら無防備な足を叩けば良い。単発なら耐えられても、上、下と順番に叩くアイスボールに手が下げられず、連打で痛みを我慢出来なくなって全員しゃがみこんだ。ここで側面からアイスボールで頭部を殴る。
これで5人まで昏倒したけれど、二人が頭部への打撃にも耐えている。
仕方が無くアイスランスで吹き飛ばす。腕のガードがなくなった段階で鳩尾と側頭部を叩く。ようやく右側は制圧された。
左側はさっきから悲鳴と布や肉が焼ける臭いがしていた。ヨハンは情け容赦なく7人を燃やしていた。広範囲の火傷は人間の自然治癒能力を越えているから、その自然治癒力を利用する聖魔法ではもう救いようがない。
「状況は?」
ヨハンが尋ねるが、私よりブリアレオスの報告の方が早かった。
「ミノタウロス2頭への投薬が終わった。誘導餌を撒いて、こちらに向かわせている」
「テティス、下水道の方はどうだ?」
「この館付近の南側と東側が探知不能になってる」
「じゃあ、西側へ行こう。ミノタウロスはどうだ?」
「東側から2頭向かって来ている」
「じゃあ、そういう作戦なんだろう。西側に追いついて来たらそこで倒そう」
殿をオオトカゲゴーレムに任せて館の南を西に向かう。館の上、館の西側から弓で狙っている者がいるから、その辺りに水をばら蒔き、熱を奪う。
「うわぁっ」
服に霜が付いたところで射手は館の中に逃げ込んだ。
「館の北側で何かやってるのが投薬?」
水気を感じた私の質問にブリアレオスが答える。
「そうだ。魔獣に注射をするのは興奮する危険性がある。だから水に混ぜて投薬している様だ」
水で飲ませる興奮剤は効くまで時間がかかるだろう。となると、今興奮状態にあるミノタウロスを早期に倒さないと襲ってくる敵の魔獣が増えてしまう。
「むしろ中に入って人間の方を減らせば良いだろ」
ヨハンがそう言うので、子ブリアレオスが西勝手口から入り、中を偵察する。
「水気は部屋に隠れている様だけど…」
「廊下に人影は無い」
「じゃあ、入るぞ」
勝手口から入ると、廊下が東西に延びていた。
「逃げようがないね…」
「敵が出てきた時は俺がフレイムランスで吹き飛ばすか、アイスウォールで防御するか選べ」
「とりあえず氷の壁を作らせていただきます」
ヒルデガルドが恐る恐る発言する。
「聖結界で守る手もあるけど…」
「それだと攻撃出来なくなる。壁だけ作れるならそうしてくれ」
「壁で良ければ、そうします」
「この部屋に入った様だ」
「水気が4あるわ」
「まずゴーレムを突入させる。続けて魔法攻撃をしてくれ」
扉を開ける子ブリアレオスに、矢と槍がぶつかる。残念ながらゴーレムの固さの方が勝り、跳ね返した。私は8つのアイスボールで一人2個ずつ打撃を与える。悲鳴も上げずに4人が昏倒する。
「意識を失ってると思う。水気に色が無い」
「では、先に進もう」
私の指摘にヨハンが判断し、廊下を東に進むが…
「ヨハン、赤い水気が館の外を西に走っている。ミノタウロスだと思う」
「ブリアレオス、東を人型ゴーレムで守らせろ。トカゲ型ゴーレムを盾にして、入って来るミノタウロスを魔法で倒す」
この回も文字数が少ないので、本日もう一回更新します。30分後の予定です。




