11−14 衛星都市 (2)
ロッカーデイルの城塞都市の門のすぐ中にフレームランスが当たった。ヨハンの長距離攻撃の狙いは正確だ。その場で開放された火の固まりが発する熱が門の木製部品に引火している。門外のバリケードにまで火花が届き、枯れ枝に火がついて隠れていた兵士が表に出てきた。
「もうちょっと手前にもう一ついくか」
そうしてバリケード付近に出ていた兵士の近くの地面にフレームランスが当たり、周辺に熱と火を巻き散らした。当然兵士達にも火が点き、地面に転がったり火が点いていない兵士が手で叩いたりして火を消そうとしている。
「第一騎士団は馬車を守れ!カール達は付いて来い!」
私とヒルデガルド、ヘカトンケイルのブリアレオスと子ブリアレオス、そして護衛騎士を引き連れてヨハンが門に歩み寄る。バリケード付近の兵士が弓を持とうとするが、素早くヨハンがフレームランスを放つ。直撃を受けた兵士は衝撃と熱で上半身が飛び散った。
「うわっ」
その攻撃むしろ私達にもダメージ与えるよ。
やはり門の上の方にある見張り台から弓を放とうとした兵士にもフレームランスが直撃した。周囲の木の柱に引火してその周辺にも火が点いた。
「ブリアレオス、蜂起は始まったか?」
「門の近くで簡素な槍を持たされていた連中が上官を殺して喚いている。まだ教会の人間が流れを把握出来ていない。急いで近づかない方が良い」
「じゃあ、攻撃しながらゆっくり近づくか」
ヒルデガルドを見ると真っ白な顔をしている。
「子ブリアレオスが守ってくれるから大丈夫」
「子?」
「少し小さいゴーレムが守ってくれてるじゃない」
「小さいって、私より背が高いけど…」
「だから近くは任せて、とりあえず何か飛んで来そうなら結界で守りなさい」
「うん、そうね」
ヨハンは壁の上から弓を射ようとしていた連中にフレームランスをぶつけた。
熱で壁の一部が崩れている。
「引火しないと良いけど…」
「目の前の門以外にも連中が対応する事があるなら、こちらへの攻撃に集中出来ないだろ」
「そうだけど」
確かに門の上の見張り台でも桶で水をかけたり余計な仕事が増えている様だ。
「ブリアレオス!いい加減にしないと全部燃やしちまうぞ!?」
「西通りの教会方向から騎士詰所にデモ行進が始まっている。東通りの裏通りでも武器を配って蜂起が始まっている。まだ中に入らない方が良い」
「ちっ、こっちを全滅出来ちまうぞ」
バリケードは全焼して役に立たなくなっている。門にも引火しているが、そちらは桶の水で消火を試みている。
しかし、ここで門外に動きがあった。
「ヨハン、両側から2頭ずつ足の速い奴がこっちに向かっている。水気は二つずつだから騎兵じゃなくケンタウロスだと思う」
「ケンタウロスは外部を迂回して、この門で足止めをされている外敵を討つ様に配置されている。足止めが出来ていると考えて投入したのだろう」
ヨハンが私を見て言う。
「俺が左をやるから右をやれ。その方が川の水を利用出来て良いだろ?」
「ところがね、ネス川の水に魔力が流れているの。スキュラらしき魔法反応が水中に二つあって」
「全く川の水が使えないのか?」
「半分は使えそうよ」
「もっと川に近づいたらどうだ?魔法干渉力が強まる筈だ」
「そっちの処理より陸上の排除が先でしょ?」
「もっともだ。ここで迎撃するぞ」
さて、ケンタウロスって言っても速さは馬並みだ。地中の水分を操って…うん、こんな感じかな。では、空気中の水蒸気を使ってアイスランスを4本作って待つ。
急に足元が柔らかくなってケンタウロスは2頭共転倒した。地面を泥濘にしておいたんだ。立ち上がろうとする彼等に2本ずつアイスランスを叩きつける。
「ギャアッ」
二つの悲鳴が上がる。人っぽい悲鳴が辛い。とは言え、二つの水気はただの水に変わった。神よ、人馬さんたちの魂を救済してあげてね。
「ふん、馬並みに俺が翻弄されると思うなよ」
ヨハンはそう言ってフレームランスを連発する。一発目を斜めに飛んで避けたケンタウロスだが、予測着地点にヨハンのフレームランスが向かう。膨大な魔力を使って無理やり速度を上げているフレームランスは至近弾でも大ダメージを与える。だって熱と火がばら蒔かれるから。3発めの至近弾で尻尾と髪の毛に火が点いたケンタウロスは横になって火の点いた体を地面に擦り付けたが、その腹にフレームランスが着弾した。腹部が熱で爆発したケンタウロスは、苦痛でのたうちまわりながら死んでいった。もう一頭もすぐにお仲間の後を追った。
「そろそろ入門出来ないか?」
ブリアレオスの方から私達に言って来た。
「さっきはまだ入るなと言ったろ?」
「代官側が反乱鎮圧にミノタウロスを放とうとしている。虐殺になる」
「テティス!門から中に入るぞ!?」
「そうね。急ごう」
まあ、こんな状況ですので、明日の金曜も更新します。




