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11−13 衛星都市 (1)

 ラッセル領の中心都市でラッセルの本拠地となっているのがインヴァネス市だった。東西にスペイ川が流れ、そこに北上したネス川が合流する、その角を利用した要塞都市だと言う。

「面倒臭い。市全体を凍らせよう。もうそれで良い」

ヨハンが勝手に決める。駄目だって言ってるじゃない!

「その経路でまた蜂起が起こったりしない?ブリアレオス、周囲の都市はどうなの?」

「市の北を流れるスペイ川沿いにドッガーロックとカロデンがあるが、今回は北上していくから関係ない。だから問題が起こるとしたら経路近くにあるロッカーデイルだろう」


「問題を起こしてラッセルをおびき寄せるか」

ヨハンが楽し気に言う。火でも点けたいのか…

「では、我々が蜂起させよう」

ブリアレオスがそう言う。

「…西部教会が扇動すると?」

ヨハンが眉を顰めて言う。

「実は東西南北にある四つの衛星都市では不満が溜まっている。市民・農民関係なく、インヴァネスの外周の陣地作りに徴用されているのだ。労働力不足になった衛星都市は運営に支障を来たしている。小勢力が大勢力と闘争を行えば当然の事態だ」

「不満の度合いはどうなんだ?」

「充分だろう。例のアシュリー領討伐の際に長期に徴用がなされ、今度はもっと大人数を徴用している。二度目と言うのが不満を高めている」


「魔獣の配置状況はどうなんだ?」

「インヴァネスに20、ロッカーデイルに10、インヴァネス東西の衛星都市に4が配置されている」

「内容は?」

「インヴァネスにオオトカゲが4、ミノタウロスが6、川沿いの池にスキュラが6、ケルベロスが4、インヴァネス東西の4はケンタウロス、ロッカーデイルはミノタウロスとケンタウロスの混成だ」

「スキュラが実在するのか…女の姿で水に誘いこむと言うが、人間に似ているのか?」

「おでこがある顔をしているので人に見えない事も無い、という程度だ。しかし顔面の両側に人の腕に近い器官があり、これで捕らえて食いちぎる」

「水に入らなければ恐くない、と認識しておこう」

「大体はその通りだ」


「それで蜂起だが、どのタイミングで起こすつもりだ?」

「もちろん、こちらの接近に対してロッカーデイルで迎撃体勢を整える段階で起こす」

それを聞いて私は不安になった。

「戦闘前で気が立っている者達に反抗するのは危険じゃない?」

「市民達は不安のピークだから切れやすくなっている。蜂起させるには良いタイミングだ」

「でも…」

ヨハンが口を挟んだ。

「教会側から武器を渡すんだろ?」

「そうなるな。口火を切り、あちらの武器を奪わせる」

「それは死人が沢山出るやり方だと思うの…」

またヨハンが口を挟んだ。

「じゃあ、その直前に狙い撃ってやるよ。ラッセルの部下を」

「分かった。先方に伝えておく」


 ロッカーデイルまで二日の時間があった。西部教会の工作員にはこちらが到着するタイミングが伝わっていた為、毎日食料の補給が受けられた。

「リチャードはどうしてる?」

ブリアレオスは把握している様だ。

「商人達の伝手で農村を説得して回っている。足場を固めながら進んでいる」

「まあ、絶対こちらには追いつかないペースで進んでいるって事だな」

「追いつく気はないだろう」


 こちらが攻めるタイミングをラッセル側に伝えないとタイミングが合わない可能性があるから、こちらは前日に近郊の農村に頼み込んで泊まらせてもらった。間諜が北へ戻っていくのを私もブリアレオスも確認した。


 翌日、夜明け直前に農村を出発すると、また間諜が北へ戻って行った。

「ブリアレオス、準備は間に合ってる?」

「ロッカーデイルの方なら早朝に一悶着あった。市民達の不満は上手く頂点に届きつつある」

「上手く工作が出来て良かったな」

ヨハンはそういう見方だ。

「いずれにせよ、結果は良かった。安心して火を放てば良い」

「控え目にして…」

私としては都市が全焼するのは見たくなかった。


 ロッカーデイルは壁に囲まれた都市だった。都市、と言うには若干狭い。幅は3マイルくらいではないだろうか。その壁の中に建物が犇めいているその街道に面した扉が開いている。その扉に向かう道路の両側にバリケードが斜めに作られている。その後ろに枯れ枝が盛ってある。そこにある水気が、私達が入市しようとすると襲い掛かるという手筈だろう。


「門の向こうの壁に隠れて40人くらい、その奥でも待ち伏せていて、侵入者に継続的に襲い掛かる作戦みたいよ。バリケードの向こう側にも合計16人」

私の言葉に、ヨハンはにやりと笑った。

「じゃあ、出て来てもらうか」

そう言ってフレームランスの呪文を唱えた。

「それ、防護魔法を使う人がいないと大惨事だと思うけど…」

「火だるまになる奴が30人くらいいるだろうが、ヴァルカンで皆殺しにするよりは少ないだろ?」

「いや、蜂起してもらうんだから皆は殺さない様にね」

「だから、前列の兵士に火を点けるんだよ」

そうして、スターリングで威嚇の為に放ったファイアーボールとは比較にならない熱と速度で、フレームランスが飛んで行った。

 この物語はフィクションですので実在する団体ならびに人物とは一切関係ありません。インヴァネスという地名は語感で選んでおります。どこかで聞いたな、と思ったら、インスマウスに似ているんでしょうね。

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