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11−12 北上

 半日も北上したところに町があり、小さな教会があった。そこに修道兵に守られた馬車が停車していた。

「聖女テティス様を我が身でお守り出来ない事は断腸の思いですが、その代わりにこちらの物資をお届けしました。お受け取りください」

「ありがとう。あなた方の帰りのご無事をお祈りしております」

そうして物資が私達の馬車、第一騎士団の馬車に移された。


 その頃、少し離れた他の馬車の前に、ヘカトンケイルのブリアレオスとヨハンの姿があった。馬車の中に布をかけたものがあり、ブリアレオスがその布をめくると、その下には人の身長ほどもある6本足のゴーレムが横たわっていた。ゴーレムはブリアレオスの目を見ると、口をぱかっと開けた。その口の中に剣のグリップが生えていた。


「抜きたまえ。ウトナビシュトからの贈り物だ」

ヨハンはしばらく黙っていたが、やがてゴーレムの口に近づいてグリップを握り、引き抜いた。剣は鞘ごと抜けた。

「お前等の趣味にどうこう言っても意味がないんだろうが…俺を相手にする時はもうちょっと趣味の良い物の出し方をしてくれ」

「厳重に保管していたんだ。感謝して欲しいな」

「物によるな。この剣は何だ?」

「魔剣プロメテウスだ。隠れて素振りをしておけ」

「まあ、とりあえず喜んだふりをしてやろう」

「私の目には君が喜びの感情を表しているとは観測出来ていない」


「口で言っただけだからな。それは良い。一つ質問をさせろ」

「君には3つ質問がある筈と想定している」

「一番大事な話だ。誰がテティスがこちらのルートに来るとばらした?」

「当然、リチャード王子が意図して捕まえていない間諜がラッセル派に報告した」

「その意図をお前はどう判断する?」

「結論から言うと、リチャード王子の陣営には魔獣を相手にする実力がないからだ」

「ウトナビシュトもその結論なのか?」

「私とウトナビシュトの結論は一致している」

「それで、リチャードの指示に従っているとも勝手をしているとも取れる行動を俺達に取らせているのか?」

「そう考えるのが一番合理的だ」


「合理的じゃない可能性として、リチャードまたは奴の部下が裏切っている可能性はないのか?」

「この質問は君の中の仮説の確認をしているだけだろう?聖女テティスと君にはラッセル派を壊滅させる力がある。勝手をさせた方がラッセルの破滅が早まる。だから裏切りという仮説は理に適わないし、聖女と隣国の王子を見捨ててもリチャード王子と王国に益はない」


「戦場を渡り歩くと客観的な判断が出来なくなる事がある。完全に客観的なウトナビシュトとおまえがそういう結論なら俺も今は間違っていないのだろうな」

「私はウトナビシュトよりは聖女テティスの生命を重視している。一部客観的でない発言があると予測する」

「まあ、良い。じゃ、最後の質問だ。魔剣とやらを俺に押し付ける理由を聞かせろ」

「ラッセルを斬る為に必要だからだ。まあ人目を避けて素振りをする事だ」


 護衛騎士のもとに戻り魔剣を護衛隊長のカールに渡したヨハンに、女性騎士のゲルダが近づいた。

「テティス様がお待ちです」


 私達が待つ教会の部屋にヨハンが入って来た。

「ヒルデガルドは?」

何で連れてきた、と言いたいのだろうが。

「心細くなっているの。隠し事はしたくない」

「足元が見えてないんだな。ヒルダ、テティスは本気でお前を相談役にしようとしている。逃げたくても逃がさないからそう不安に思うな」

それを聞いて不安にならない人がいるのか心配になるが、ヒルダの水気は普通のままだった。

「お邪魔でしたら退席します」

「今ここでテティスに愛を囁く予定はない。だから話を聞いて良いが、情報を得たら疑問点はテティスと擦り合わせをしろよ。俺とテティスとお前は思考過程が多分違うから、間違える可能性がある」

私は思わず口を挟んだ。

「私とあなたの思考過程も違うと思うけど?」

「そのくらい飲み込んでやる。それで、聞きたい事は何だ?」


「西部教会から何か指示でもあった?」

「今日は目が覚めてる様だな。リチャードが裏切ってる訳ではないと連中は考えてる」

「何を根拠に?」

「名目上、リチャードがラッセル討伐の指揮をする必用がある。だが、魔獣狩りが必用になった場合、通常戦力は大損害を被る可能性がある。だから俺達に先行させた方が良いという判断だろう」

「スターリングに罠があったから、心配していたんだけど。まあ確かに近くにいるとお互いやりにくいかな」

「そういう訳で、今後の西部教会の支援も俺達がリチャード陣営より先行する様に行われる。そのつもりでいてくれ」


 ヒルデガルドの瞳が揺れた。

「何だ、ヒルダ。言ってみろ」

「実質二人…ゴーレムが仲間を呼んだとして、やはり侯爵の本拠地にこのメンバーで進むのは危ないんじゃないの?」

「何なら全部燃やす。熱に強い魔獣はテティスが凍らせる。それで終わりだ」

私としてはヨハンを睨むしかない。

「ヨハン…住人を虐殺したら場合により西部教会に抹殺される可能性もあるんじゃないの?」

「何ならやってやる、と言っただけだ。冬の夜に濡れた建物で過ごすのは辛い。その辺りを使って追い出す手もある」

「いや、水責めもだめでしょ。凍死する人が続出するわ」

「今度、ブリアレオスにラッセルの本拠地の地図でも用意させよう。まだ時間はある」

 まあ、率直に言ってブリアレオスの従魔ゴーレムだけで魔獣20体くらい相手にできる訳ですが。それをヨハンはあてにしてなさそうです。全部灰にして良ければ。

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