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2−5 魔法の授業 (2)

 1組の魔法実技の授業では特待生と有力な一般生が一緒に授業を受けるが、一般生の中では次期侯爵のジェラルド・ファインズが頭一つ抜けていた。ヨハンがいなければこのクラス最強の火魔法使いだったと思う。女子は剣の授業を受けないから武道はどうか分からないけれど、見た目がよく魔力が強くて侯爵家の嫡男…優良物件なのは確かだし、この人に接近すれば周囲の女子の妬みを買うだろうね。まあ、ヨハンだってもう少し成長すれば俺様な性格が顔に出て男らしくはなるだろうけど。


 一方、この実技の授業で特待生と一緒に授業を受ける唯一の一般生の女性である公爵令嬢プリシア・サマセットも、地味な土魔法師だけれど過不足ない魔法を確実に発現する実力者だった。公爵家のご令嬢らしく鷹揚に見せているが、普通はおっとりした人が内面までおっとりしているとは限らない。ところが何となくこの人の内面、多分魔力が穏やかに流れている様に感じる。ヨハンやらジェラルドが魔法を使う直前には荒々しい力を感じるけれど、この人は自分を強く律しているのではないだろうか。


「あの、サマセット公爵令嬢、お話を伺ってもよろしいでしょうか?」

流石に公爵令嬢に声をかけるにはお許しが必要と思われた。

「学内ではそこまで気になさらなくてもよろしくてよ。せっかく同じ授業を受けているのですから、プリシアとお呼びください」

「はい。ありがとうございます、プリシア様。私の事も是非テティスとお呼びください。ところで、プリシア様は魔法発現前に穏やかな雰囲気を感じるのですが、例えば魔力を穏やかに魔力を使うなどのお心がけとか、そういう助言を受けられたのでしょうか?」

プリシア様は口に手を当てて瞳で微笑んだ。

「テティスさんは本当に優れた魔法師ですのね。力があるか、魔法感受性が強くないと他人の魔法の流れは感じられない筈ですから。ご質問に答えると、魔法の先生に最初に言われた事が、『心を静めてから魔法を使う』という事でしたの。そういう心掛けから教えて頂いたお陰で、魔法の練習で大きな苦労はしないで済んでおりますの。先生には本当に感謝しておりますわ」

いや、苦労しないのは才能もあると思います。こっちなんか喧嘩の様に魔法をぶつけあって能力を磨いていたもんな~。


 ここで、ジェラルド・ファインズが声をかけて来た。いや、私から粉かけてませんから、嫉むのは止めてね女生徒、と言いたいけれど、今ここには女生徒はプリシア様と私しかいなかった。

「ご令嬢方、少し良いかな?」

プリシア様が答えた。

「あら、貴方から女性に声をかけるなんて珍しいわね、ジェラルド様」

ジェラルドは苦笑しながら答えた。

「色々学ぶ事が多くてね、女性の扱いまでは手が回らないんだ」

「まあ、優良物件ですから恐い女性方も沢山集まって来ますものね」

「そのくらいあしらえないといけないのだがね」

「まあ、それはいいですわ。それで何用ですの?」

「ああ、プリシア嬢も素晴らしい魔法師だが、カーライル伯爵令嬢も優れた方だから、参考意見を聞きたいと思ったんだ」

「あ、私の事はテティスとお呼びください。また、魔法の事で答えられる事なら何なりとお伺いください」

「そうか、では私の事もジェラルドと呼んでくれ。テティス嬢は適切なタイミングで私の火魔法の防御を行っているが、私の火魔法は出が遅いのだろうか?それともタイミングを合わせやすいのか?」

「ああ、それは友人があの様に出が速い魔法を使うので、そういうのは早め早めに魔法の準備をしないと間に合わないと分かっている為に間に合っているだけです。ジェラルド様の魔法が遅いという事はないと思いますよ」

「そう言って貰えると安心するが、いずれにせよ君に間に合わせられると言うのは、君の魔法の出が速い事を割り引いても、私としては努力の必用を感じる事なんだ」

ここでプリシア様が潤滑剤となる言葉を挟んでくれた。

「まあ、テティスさんは優秀な魔法師ですから。お互い卒業まで高め合えればよろしいのではなくて?」

「そうだな。お二人の時間を頂いて済まなかった」

そう言ってジェラルドは離れて行った。

  

 ジェラルドがいなくなると、プリシア様は話題を変えた。

「ところでテティスさんは、あの中々見どころのある男性と仲良くされていますが、将来性を買っておりますの?それとも単純にお顔がお好み?」

あ~、そのへんは微妙な人間関係なんだけど…

「将来性はよく分かりません。あと、顔は卒業の頃にはもっと男らしくなっていると思いますから、その時好みかどうかは分かりません」

プリシア様の目に今までより感情の籠った笑みが浮かんだ。

「ふふふふ、良く見てらっしゃるのね。最後に好みかどうか分からないにせよ、せっかく仲良くなったのだから、女の方で気を使ってあげないと上手くいきませんわよ?殿方はとかく短気ですからね」

なんかお祖母ちゃんからの助言みたいなアドバイスを頂いた。

「ありがとうございます。なるべく受け流す様にはしています」

「そう、頑張ってね」

…公爵令嬢は魔法より色恋沙汰の方が気になるお年頃だった。なんだか凄く親しみが湧いてしまった。


 今日は公爵令嬢とも次期侯爵様とも話が出来て充実した日だった、と思っていたら、特待生寮に帰る道をヨハンと歩いている途中、5人程を従えたダミアン・カペルの待ち伏せに遭った。

「よう、ガキの癖に特待生なんて凄く嘘臭いんだが、いくらでその立場を買ったんだよ?」

特待生の立場って買えるんだ!?と素直に話を聞いた私を尻目に、ヨハンが応対を始めた。

「くくく、無知とは罪だな。あんたの子分が特待生と一緒に魔法実技の授業を受けてるんだ、俺の実力は聞いてる筈だろ?それでも特待生と自分の違いが分からないとは、無知というより、頭に脳が入ってないんじゃないか?」

「手前ェ、ちょっと魔法が上手いからっていい気になりやがって!」

「魔法学院の特待生ってのはちょっと魔法が上手いっていうだけで扱いが違うんだよ。身分だとか喧嘩の強さは関係ないし、喧嘩が強いってんなら一人で来いよ。弱い奴は徒党を組みたがるが、そういう弱い奴って思われるぞ、女どもに」

「手前ェ、いい加減にしろよ!」

「テティス」

はいはい。私が仲裁するしかないよね、こんなに煽ったら相手も引っ込みがつかないでしょうよ。と言って言葉でどうにか出来る程に私の舌は回らない。だから、私はダミアン達と私達の間にアイスウォールを作った。特待生寮の門前まで延々と。

「ああ、アイスウォールに触ると手が張り付いて離れなくなるから気を付けろよ。まあ、特待生にケチ付ける程の魔法師なら溶かせるんだろうが。頑張れよ」

何を頑張るか不明だ。溶かすのか?溶かしそうなら補修するだけだけど。

「まったく、テティスは容赦がないな」

人に振っといてその言い草は何!?

 寝落ちしてないにゃ〜。猫の日小説にまたポイントを頂いたので猫してみました。公園猫の行く末を心配している人がいるらしく心が温まります。いまだと温まるより涼みたいお日頃ですが。


 どうも話を切るところが上手くいかないので、次回は文字が少なくなります。なので、明日は本来お休みの金曜ですが、更新致します。短いけど。

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