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9−5 ポーレット領での修行 (1)

 カミラ様より少し年長の女性が午前中の修行の指導にやって来た。

「それ、ホーリーシールドの出が遅いですぞ。連続して10回、出しては消すを続けなされ」

カミラ様にも速度は指摘を受けて来た。でも、こういう具体的にどこを直せと言われると目標が出来て嬉しい。

「では、ホーリーボックスを10回、出しては消すを続けなされ」

早くやる、続けてやる、と言うのは集中出来てやり易い。

「では、あの木を覆う結界を作りなされ」

このサイズね。うん。


「若い方は飲み込みが早くて、指導する方もやり甲斐があります。先代のジュディス様は決定が遅れてこの地での修行は殆どやってくださらなかったから、長生きして待った甲斐がありました」

「そう言っていただけると幸いです」

つまり、最初は及第点じゃなかったという意味だからね。

「カミラは元気でおりましたか?あの娘はジュディス様に対する愛も嫉妬も深かったから、ジュディス様がお亡くなりになった後は心配でした」

「それなりにお元気だと思います。私とパートナーの間柄をからかったりして頂けますから」

「カラ元気かもしれませんが、そのくらいの元気があるなら良かった」


「続いては、破邪の魔法を練習してくだされ。聖魔力を前方に広げるイメージで放出するものです」

先生の魔力がほわっと広がって行く。なるほど、これは空中に聖魔力を固定する事が出来ない者には難しいだろう。カミラ様が聖盾と聖箱を最初に練習させる訳だ…って言うか、私の練習状況、進みが遅いのでは!?

「すいません、少し小さめでやってみます」

「最初はやり易い方法でやりなされ」

まあ、要するにウォーターボールを壊してシャワー状にばら蒔く感じで聖魔法をばら蒔けば良いんじゃないかな。


…ちょっと魔力が固まっている気がする。

「それをもっと均一にばら蒔きなされ」

とりあえず低木の幅くらいには散布出来る様になった。

「初日はそのくらいで良いでしょう。明日以降に頑張りなされ」

「はい。ありがとうございました」


 昼食を食べて剣の練習に入る。結局私は短剣より長い武器が使えない。だから護身術の練習が必用になっている。だから、シルビアと組み手の練習をしている。

「もっと相手の動きを見てください。自分が掴めなくても、相手に掴ませない様に動く事が大事です」

そうは言っても、シルビアは私から見たら手練れだもの。なかなかその動きに対応するのは難しいよ。でも、向上心を持って練習しないとね。でないと聖女審査の前に死屍を晒す事になるのだから。


 続いて短剣の練習を行った。大柄の修道女の杖の突きはヨハンの騎士隊長カールの手加減した突きより鋭い。こういう人達が夜の巡回をしているのが心強くもあり、申し訳なくもある。私は聖魔法師と言うより水魔法師なので、審査の合否には自信がないんだ。


「すいません、少し気分が悪くなりました。休憩をいただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。無理をしても練習の成果はあがりませんから」


 そんな私にリーゼが近づいて来た。シルビアが組み手の練習相手をしている以上、侍女役はリーゼがする事になる。

「護衛の方に連絡をお願いします。敷地外ですが、北側で不審者と護衛の方が小競り合いをしている様です。応援が必用かもしれません」

「急ぎ伝えてきます」


 そんな私にシルビアが近づいて来た。

「お嬢様、ご気分は如何でしょうか。何でしたらお部屋を用意していただきますが」

「大丈夫です。ただ、護衛の方に被害が出ると心苦しいので…」

「それが護衛の仕事ですから、お気になさらずに。お茶を用意しますね」

「お願いします」


 少し休んだ後、短剣の練習を続ける私に、リーゼが近づいて来た。

「北側の賊は追い返しました。こちらの被害は軽微です」

水気が三つほど魔力を失っていた筈だ。それは賊側の被害と言う事になる。

「負傷者はいませんか?是非治療させてください」


 負傷者は5人だった。深手を負った人が一人。相手の剣には例により毒が塗ってあったのだ。ヨハンに比べればずっと魔力の低い相手だから、毒はある程度は除去出来たが、細胞が壊死してしまったものはどうしようもない。

「楽になりました。ありがとうございます」

「経験のある聖魔法師に後で見て貰ってください。細かいところは経験のある方の方が得意でしょうから」

「ご指示に従います」

担架で運ばれて来た患者は歩いて帰って行った。


 他の4人は患部より上できつく腕を縛った為、腕の中の毒を除去すれば良かった。4人は笑顔で帰って行ったが、壊死した細胞があったため、何らかの後遺症が残るかもしれない…

 今週は少し短めが続くかもしれません。何とか火曜分まで書きましたが、膨らませる時間はなさそうなので。明日は出勤なんです。

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