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第八話-才と心は錦-

 手頃な敵がいないかと洞窟を道なりに進む。

 そうだ、一つ確認しておかないといけないことがあった。


「ところで、盾は持ってる? さっきのスキル、盾がないと使えないからさ」


「あ、あぁ。……持っては、いる。いるが」


 おずおずと盾を取り出して見せるシルヴィア。


「キミにスキルポイントを振ってと言われた手前振ってみたが……正直かなりチープというか。ぶっちゃけ鍋の蓋というか」


 シルヴィアの持つ盾は、朽木の盾と呼ばれる簡素なもの。通称、鍋の蓋。

 木の板――それも、廃材の板を張り合わせた、地面にころがしておけばそのまま土に還ってしまいそうな盾だ。

 良く言えば環境にやさしい。悪く言えばゴミ一歩手前の代物。


 たしかに、防具としてはこの上なく頼りない。


「大丈夫。どんなにチープだろうと、盾は盾。スキルを使う上で、武器防具の質は問わない」


「……だと、いいが。おや?」


 シルヴィアが何かに気づく。


「マナシュルームだ! すごいな、さっきよりさらにたくさん――あ、る」


 駆け寄ろうとしたシルヴィアが、急に足を止める。


「シュルル……」


 岩の陰から特徴的な羽がコンニチハしている。

 レッサー・バジリスクのものだ。しかも、先ほどよりだいぶ大きくて立派である。羽の大きさから察するに、全長は俺たちの倍以上は確実、といったところ。


「で、でっか……」


 青ざめた顔でこちらを振り返るシルヴィア。


「ど、どうやら、先客がいるらしい」


「殺してでも奪い取ろう」


「言ってることが強盗だ……!」


 そんな事を言っている間に岩の陰から出てくるレッサー・バジリスク。


「シャアアアアアッ――!」


------

【レッサー・バジリスク】

レベル:17

HP  :350/350

MP  :50/50

------


 さっきよりも大きいだけあって、ステータスもかなり高い。


「ギギギギィ!」


 レッサー・バジリスクの目が妖しく輝きはじめる。

 やっぱ、当然使ってくるか……。でも、ここはさっきシルヴィアが獲得したスキルがあれば、押し切れるはず。


「め、目が光り始めた……!?」


「シルヴィア、さっきのスキルを!」


「わ、わわわかった!」


 シルヴィアがレッサー・バジリスクに駆け寄り、盾を構え。



「――『イージスバッシュ』!」


 そのまま、盾でレッサー・バジリスクを殴りつける。


「ギギェッ……!?」


 シルヴィアの攻撃をモロに受けたレッサー・バジリスクは、焦点があわずフラついている。

 【スタン】状態だ。このまま、行く! 


「はぁッ!」


「ギッ……ギィ……!」


 バジリスクの胴に俺の剣が突き刺さり、絶命する。

 スタン状態となっていれば、回避も防御も出来ない。かなり大きい個体だったが、シルヴィアのレベルが上昇していることもあって、なんとか二撃で仕留めることが出来た。


「ゆ、油断はしない。き、来てみろ化け物……!」


 盾を構えてシルヴィアがバジリスクににじり寄っていく。


「もう、倒したよ」


「……へっ? いや、しかしこんな大きいモンスターが、こんな簡単に、一瞬で」


「シルヴィアもレベルアップしてるからね」


「そう、か。私も、強くなってる……のか」


 最初出会った個体なら、当たりどころが良ければ俺も一撃で倒せていたが、今の個体はおそらく当たりどころが良くても倒し切ることは難しい。

 倒しきれなければ、そのまま向こうのスキルの効果が入っていた。


「正直、向こうのスキルが発動する前に処理できて良かった。結構よろしくないスキルだし」


 会話しながら、そそくさとマナシュルームを回収する。


「そういえば……たしかに目が光っていたが、あれは?」


「レッサー・バジリスクのスキル『パラライズ・アイ』。あのまま放っておいたら俺たちは麻痺状態になっていた」


「ま、麻痺!?」


「慣れ始めて調子に乗った冒険者たちを何人も返り討ちにしてきた名物モンスターさ。マナシュルーム探しが適していないって言うのもわかるでしょ」


 青ざめた顔でブンブンとうなずくシルヴィア。

 麻痺の時間は決して長くはないとは言え、一々食らっていればさすがに危なくなってくる

 でも――。


「その『イージス・バッシュ』があれば、レッサー・バジリスクも安全に倒せる。どんなスキルも発動できなければ意味はない」


「なるほど、君が盾スキルを上げろと言った意味はこういうことだったのか……!」


 納得の行った様子で、盾を構えるシルヴィア。


「モンスターを安全に倒せれば、マナシュルームが多いメリットだけを受けられる。あとは、このまま集めれば」


「――向こうのチームにも勝てるかもしれない、と」


 シルヴィアの言葉に、うなづき返した。


「やろう! その先に勝利が見えるのなら、そこへ全力で向かうまでだ!」


 シルヴィアの眼が爛々と輝く。

 やる気が出てきたようで何より。シルヴィアの言う通り、勝利の可能性があるのなら、全力で手を尽くさなければ。


 俺たちは勇みながら洞窟の奥へと向かう――。

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