表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

第六話-いざ裏道を征け-

「それで……キミはどうしようと考えているんだ?」


 シルヴィアに尋ねられる。

 当然、ここからが肝心な内容だ。


「この洞窟は階層が五階まである。その内、一階から三階がマナシュルーム採集に適しているとされてるエリア」


「……四階から、五階は?」


「適していない。でも、それはマナシュルームが生えていないってわけじゃない。逆に、むしろマナシュルームが大量に取れるエリアなんだ」


「とすると、向こうのチームはすでに……?」


「いや、恐らく行っていない」


「……そうなのか?」


 首を傾げるシルヴィア。


「さっき、キノコ採集をしていた時、ラソールがモンスターがいるか見張りしていたのは覚えてる?」


「あぁ、覚えている」


「あそこ、実はモンスターが出ないエリアなんだ。おそらくラソールも含めて、この洞窟に潜ったのは初めてなんだと思う」


「なるほど。知っていれば、そもそも見張りなんてしていない……!」


 シルヴィアがポンと手を打つ。


「今回のクエストは採集任務。知らないエリアに入ったら、マナシュルームを探しに隅々まで歩き回る。それに加えて二階と三階はかなり広い。まず、四階や五階に来る時間はないだろうね」


「しかし、私たちは最初から四階と五階に絞って探索――と言うわけか」


「その通り」


「ふむふむ、確かに筋は通っている」


 結論を先取りするシルヴィア。

 そう、俺たちは確かに四階と五階に行く。……が、まだ肝心な部分をシルヴィアを知らない。


「――ただし、四階や五階はめちゃくちゃモンスターが強い」


「えっ」


「二階から三階は危険度は3だけど、4階と5階は危険度15くらいになってる。マナシュルームの生えている数が多いだけ、それを食料とする魔物も強化されてるってことだね」


「け、桁が違うじゃないか!?」


「さらにモンスターの数は少ないけど、二階と三階より狭いからエンカウント率も高い。それが、採集に適してないって言われてる理由」


 もっとも、ある程度の強さがあれば、旨味が勝る。

 正直、俺一人だと旨味とリスクでトントンくらいだけど、もう一人いれば旨味が上回る。


 ただし、『アレ』に手を出さなければ――という前提にはなるけど。


「ライゼル、私は思うんだ。適していないのなら、そこは探すべきじゃないんじゃないかと。命を大事に、だぞ?」


「ただ、こっちは人数で負けてる。単純に同じやり方だとこっちが不利だ。だったら、別のやり方で勝てるようにするのが戦い。つまり、いろいろガンガンやろう」


「頭がパンクしそうなスタイルだ……」


 多分、頭ではシルヴィアもこの調子では勝てないということはわかっているはず。

 

「……わかった。騎士ならば、時として茨の生えた道筋も踏み越えていかねばな」


「でも、その茨の道の先に勝利がある。大丈夫、俺がそこへ導くよ」






「……この辺だったかな」


 三階まで降りた俺たちは、『四階』の入口を探す。


「この辺といっても……。壁と岩しかないような」


 たしかにシルヴィアの言う通り、パッと見は何もないように見える。


「実は、この岩の後ろに道が続いてる」


 壁にもたれかかった岩を傾けると、下に続く通路が現れる。


「なっ……!? す、すごい。よく、こんなところに気づけるな……」


「ここを知っている人間はそう多くはない。知る人ぞ知る、隠し通路だね」


「そうなのか……。ふふ、そう聞くと悪い気はしないな。なんだか通になった気分だ」


 シルヴィアが楽しそうで何よりだ。


「そうだ、これ渡しておく」


「これは……ポーション?」


「危険になったら、すぐに使って。一応、もしものことはあるから」


「も、もしものこと……」


 本来は俺用のポーションだけど、なんせシルヴィアはレベル1。

 事故率は圧倒的に高い。全力でカバーするとしても、何かが起こらないとは限らない。

 冒険は命あっての物種。命を守るために使える手は全て使う。それもまた、冒険者としてのセオリーだ。




「――ここからがビギナ洞窟の四階。『深層』になる」


 ビギナ洞窟、四階。通称『深層』。

 苔むした緑色の壁は、黒々とした岩肌へと変わっている。岩の隙間からは青く輝く結晶体が伸びており、先ほどまでの階層の有機的な空間とは一転して、無機的な印象だ。


 さて、ここからの立ち回りが勝負を左右する。気合を入れないと。

 そう思い、シルヴィアに振り返る。

 シルヴィアは、周囲の光景に呆気にとられていた。


「――なんと、これは。なんという美しさだ、思わずため息さえ出そうな」


「あの水晶みたいなのは、地中から滲み出たマナが結晶化したもの。ここは上の階層に比べても大気中のマナは結構濃い方だから、もし気分が悪くなったら言って」


「いやいや、気分が悪くなるなど……むしろ、美しさに心が洗われるようだよ」


「それなら良かった。……うん、目論見通りだ」


 俺は、洞窟内の「ある物」に気づく。


「目論見通り……? ――なぁっ!? な、なんだあれは!?」


 シルヴィアも気づいたらしく、それの元へと駆け寄る。


「す、すごい……! こんなにマナシュルームが生えてるなんて……! 8、9、10、11!? こ、これだけで一階で取れたマナシュルームを上回っている……!」


 岩陰に群生するマナシュルームたち。

 一階では、一本一本まばらに生えているマナシュルームだが、ここでは群がるように大量に生えている。


「ライゼル、すごいぞ! ほら! 大量だ!」


 目をキラキラとさせながら、袋いっぱいのマナシュルームを見せてくる。


「たしかにこれなら、向こうにだって勝てそうだ……! いやいや、すごいなこれは……!」


 とはいえ、先ほども説明した通り、ここからはキノコが豊富なだけではない。



 ――シュルル!


「構えて、シルヴィア!」


 強力なモンスターも出るわけだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ