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第五話-盾の少女シルヴィア-

「――実は、私はレベル1なんだ」


 衝撃の告白。

 シルヴィアがレベル1……?


「し、信じてもらえないかもしれないが、でも本当の」


「ちょっと、失礼」

 

 近づいてシルヴィアの手を握り、意識を集中する。

 スキル、発動。


「なっ、あっ……!?」


 ――鑑識眼ステータスオープン


------

《シルヴィア》

職業:ナイト

レベル:1


HP:100/100

MP:10/10


攻撃:20 防御:30

魔力:10 精神:10

素早さ:10


【スキルツリー】

└:[0]騎士道-C

└:[0]剣術-E

└:[0]盾術-SS


------


「なっ――、盾術SS――!?」


 思わず、驚きが声に出る。

 雷に打たれたような感覚だった。

 

(まさか、こんなところでSSランク持ちに出会えるなんて……!)


 我ながら、なんだかとんでもない運の使い方をしているな……。


「い、今、私のステータスを?」


 どうやら、シルヴィアに俺の声は聞こえていないようだった。

 動揺する心をなんとか落ち着かせる。


「そうだね。スキルで見せてもらった」


「すごいな、クラスブック抜きにそんなことができるなんて。……いや、感心してる場合じゃないな」


 育成師の能力の一つ。鑑識眼ステータスオープン

 相手に触れた状態で発動することで相手の詳細なステータスを確認することが出来る能力だ。

 たしかに、この能力を持ってしても、シルヴィアは疑いようもなくレベル1であることを示していた。


「そのスカーフ、たしかデュライ騎士学校のものだよね?」


「あ、あぁ、これはデュライ騎士学校で支給されたものだ。……偽物とかではない、ぞ?」


 ナイトはファイターにあたる。前線に出る機会が多いから、冒険を始めたてでもレベルはかなり上がっている事が多いんだけど。

 なんだろう、学校を休みがちだった――とか?

 と、色々推理していると、シルヴィアが話し始めた。


「……ざ、座学はそこそこできたんだ。戦いの方は、その、からっきしで……。本当に名乗るほどの者じゃないんだ。たしかに名門校は出ているが、落ちこぼれで。それで、ハッシュクエストに参加すれば、こんな私でもレベルを上げられるかと」


 なるほど、チーム分けの話が出てから、やたらしどろもどろしていたのはそういう理由だったのか。

 せっかく、レベル上げもかねてたのに、いきなり勝負をふっかけられるもなかなか不憫だ。


「なるほど……。勝負の方、どうする?」


「わ、私一人でやる。……私と一緒に組んでも、私が君の足を引っ張るだろうから。負けるなら私一人のほうがいい」


「勝負を降りるつもりはないんだ?」


「あ、あぁ。……弱くとも騎士としての誇りは守らなければならない。騎士とは皆を守るもの。そして騎士とは勇敢なるもの」


 そう話すシルヴィアの声色は、ずいぶんと神妙なものだった。

 彼女は『騎士』だ。たとえ、レベル1であろうと『騎士』としての生き方は全うする。

 

 不器用な生き方だな、と思う。でも――。




「……正直、運が良かったよ」


「え?」


「実は俺はサポーターなんだ」


 そういうの、嫌いじゃない。


 俺も、冒険者として目指す姿がある。

 彼女と俺で、目指すべき理想の姿は違ったとしても。同じく、理想を追う者という部分は同じ。


「サポーター……? もしかして、私をサポートするつもりなのか? し、しかし、レベル1の弱い私をいくら強化したところで――」


「弱いなら、強くなれば良い。レベルが1なら上げればいいし、スキルがないなら覚えれば良い。でしょ?」


 だから、彼女に手を貸したい。


「間に合うとは……」


「それについては問題ない。俺は育成師。仲間を育て上げるのは、俺の最も得意とするところだから」


 このダンジョンは既に来たことがある。

 何も手を講じなければ、たしかにシルヴィアの言う通りかもしれないけど。

 シルヴィアが持つとんでもなく高い素質。そして、それを俺の育成のスキルで伸ばすしてやることができれば。


「――俺たちが力を合わせれば向こうのチームにも勝てると思う」


「かっ、勝て――ッ!? ず、ずいぶん、大きく出るんだな」


「そう思う? まぁ、でも冒険者は貪欲であれ、だからさ。どうせなら勝てるって思う方が楽しくない?」


「……たしかに、どうせ勝負するなら勝つことを考えたい」


 レベル1だったシルヴィアがレイジボーを倒したラソールチームを破る。なかなかのジャイアントキリングだ。

 難題だけど、育成師としてなかなか挑戦しがいはある。


 この洞窟も一度は攻略済みだ。

 やり方はある。一つ一つを確実にこなしていければ。


「……う、うーん」


 シルヴィアは、前髪をいじって少し考え込んだかと思うと。




「――わかった、キミの力を貸して欲しい」


 よしきた。


「どうせ、私一人では何もできない。だったら、キミの力を借りる方が、賢明だと思う」


「ダンジョン探索は、皆で力を合わせるもの。だから気にしなくていいよ。でも、うん。その賢明な判断に感謝、かな」


 シルヴィアに手を差し出す。


「よろしく。えっと……そうだ、キミの名前を聞いてなかった」


 たしかに、裏チームには最初に自己紹介していたけど、シルヴィアには自己紹介していなかったか。

 それじゃ、改めて。


「俺はライゼル。ライゼル・アクト・フォード。『育て屋』って言われることもある」


「――ライゼル。これからよろしく」


 俺とシルヴィアは、堅く握手を交わした。

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