表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/112

【番外編】春

「なあ、ライル」


「なんだ、ベルナード」


「お前はさ、よくやったよ。最後まで有言実行だった。何せ十二歳で団長になる、爵位を得ると、私に宣言し、実際に団長になった。侯爵位を得て、ウィンターボトムというファーストネームだって得たじゃないか。あとはザーイ帝国をこのまま退け、王都に戻る。その道筋が見えていたのに。なぜ切り捨てなかったんだ?」


 激戦に備えたライルの髪は、冬の間にアイスシルバーから金髪に染められていた。


 カトレア王国では、金髪に碧眼が多い。

 ライルのような髪色はどちらかというと……ザーイ帝国に多い髪の色だった。


 その染められた金髪が、強い南風を受け、乱れていた。


 アーモンドの花びらが舞い、冬が終わったと告げている。


 春が到来し、激戦の日々は始まっていた。


「憲兵達も言っていたじゃないか。『大局を見た時、彼らの救出はリスクでしかない。時間の無駄だ。切り捨てるのが妥当であり、世間もその選択を非難することはありません』と。それに彼らは脱走しようとして、罠に落ちたのに」「ベルナード」


 ライルが大きく息を吐く。


「彼らのことを脱走しようとしていた……という言い方にはしないで欲しい。戻ったら憲兵達にもそう伝えるつもりだ。ザーイ帝国との激戦で、騎士団の一部が敵陣の近くで孤立してしまった――ということにしたい」


「あくまでも庇うのか?」


「庇う……というか、気持ちが分かるからだ。陣営を離れたソード騎士団の騎士、ローク、シダル、レニー。彼らは三兄弟。母親が危篤という知らせが届いたんだ。女手一つで自分達を育ててくれた母親が亡くなるかもしれない。居ても立っても居られなくなった」


 そこで言葉を切るライルを見て思う。

 ライル自身と境遇が、この三兄弟は近い。


 庇うわけではないが、気持ちが分かる。

 まさにその通りなのだろう。


「だが今、ザーイ帝国との戦は山場だ。とても王都に戻らせて欲しいとは言えなかったのだろう。真面目なだけに。そこでこっそり抜け出そうとしただけだ。敵を恐れて逃げようとしたわけでも、裏切るつもりでも、寝返るつもりでもなかった。彼らがソード騎士団の騎士であることに変わりない。仲間は当然助ける。それだけだ」


 春になり、激戦が始まると、ソード騎士団の指揮権もライルが担うことになった。ソード騎士団の団長は、実質副団長的な立ち位置になるが、文句はなかった。彼もまた、ライルを認めていたからだ。


 ソード騎士団の指揮権までとることになったライルに突然降って来た話が……騎士の脱走だった。


 理由はライルが言った通りだ。


 確かに母親を心配する気持ちは分かる。だからといって、脱走をしなくても……。


 ローク、シダル、レニーの三人兄弟は、明け方陣営を抜け出し、迂回して国境から離れようとしたが……。


 春になったが、まだ雪が残る場所もある。


 三人の乗った馬は、その雪解けが中途半端な場所に入り込み、さらにそこが沼地だった。それは底なし沼だったようで、馬を捨て、なんとか逃げることになったが……。

 沼地はいい防御となる。

 そばに帝国軍の一部が陣営をはっていたのだ。


 三人は彼らに見つかり、味方の壕に身を隠したものの。馬はなく、かろうじて武器はあるが、敵は弓を構え、彼らを狙っている。


 三兄弟は身動きがとれない状態になってしまったのだ。


 この状況はライルへすぐに報告されると同時に。

 脱走者が出たと、王都へ報告されることになった。

 これは騎士団の規律として報告が義務付けられており、ソード騎士団の団長が報告したのだ。

 そして王都から、憲兵がやって来た。

 騎士団の規律違反の調査・逮捕を担っている憲兵が。


 脱走した騎士が、身動きがとれなくなり、助けを求めている――そのことを憲兵は知っている。

 だが彼らは切り捨てることをライルに進言した。ところがライルは「助ける」の一点張り。


 呆れた憲兵の一人がこう言った。


「脱走した騎士を救うため、味方の騎士が犠牲になるかもしれないのですよ? ウィンターボトム団長は、それをよしとするのですか? 犠牲になるなら、あなたお一人にしてくださいよ」


 これを聞いた瞬間。

 椅子から立ち上がろうとした自分をライルは制し、「なるほど」と深々と頷く。


 「なにが『なるほど』なんだ、ライル!」と激高しそうになるのを、拳を握りしめ、なんとか堪える。


「名案ですね。自分が囮になります。イーグル騎士団の団長の首、欲しいはずです。敵の目をこちらに引き付け、その隙に三人には自力で逃げてもらいましょう」


「な、君は何を言っているんだ!?」


 憲兵が目を剥いている。

 これを聞いたわたしは、もう笑いが止まらない。

 気付けばこう口にしていた。


「これより上級指揮官の役職を返上し、ウィンターボトム団長の従騎士になります。従騎士は、あるじである騎士に従うもの。ウィンターボトム団長が囮になるなら、自分も彼に従います!」

お読みいただきありがとうございます!

【新作です】

『宿敵の純潔を奪いました』

https://ncode.syosetu.com/n6514jw/

ページ下部に目次ページへ遷移するバナー設置。

読んで頂けたら嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●心温まる物語●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~
『悪役令嬢は我が道を行く~婚約破棄と断罪回避は成功です~』は勿論ハッピーエンド!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ