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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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逃げなきゃ、抵抗しなきゃ

「みーつけた」


 まるでハイド・アンド・シー(かくれんぼ)クをしているかのような気軽さで、盗賊が私に声をかけた。しかも左足首を掴んでいる。


「暗くてよく見えないが、甘くていい香りがする。香水をつけているなんて、間違いなく貴族のお嬢ちゃんだ」


 逃げなきゃいけない。

 抵抗しなければならない。


 頭はそう、理解しているのに、動けなかった。

 声すら、出ない。


 人は最大限の恐怖を感じると、何もできないんだ……。


「若いなら生娘として高く売れるからな。手を出さない。でも妙齢のねえちゃんなら、味見しようぜ。どうだ、若いか?」


「まあ、まず元の場所に戻ろう。ここじゃ暗くてよく見えねぇ。それでその可愛いであろう顔を拝もうじゃないか」


「そうするか!」


 その声を合図に左足を思いっきり引っ張られた。


「きゃあ」


「おう、可愛い声だ。こりゃ、まだ男を知らん娘だな」


 そこからはまるで自分が人形のようだった。

 自分なりの抵抗で、暴れていたが。

 簡単に担ぎ上げられてしまう。

 しかも私を担いだ男は「お、この弾力と柔らかさ。意外と胸はでけえかもしれん」などと言っているのだ。そうなるとこの男に、自分の体が触れまいという方に神経が向かい、逃げ出すどころではなくなる。


 バサバサ。


 再びの鳥の気配に、私は悲鳴を上げる。


「ったく、夜にこんなに鳥が飛んでいたか、この森!?」


「フクロウは夜行性だろう? まあ、人間のそばでこんなに飛びま」


 そこで男の声が途切れ、ズサッという音と、何かが地面に倒れる音。


 何が起きたか分からないがその瞬間、自分がまだ短剣を握りしめていたことを思い出す。


 鞘から剣を抜き、胸が男に触れるのも構わず、その背中に振り下ろそうとすると――。


「うぐっ」


 男の声が漏れる。


「?????」


 まだ、短剣は刺していない。

 なんでこんな声を――。


 自分の体が、いきなり後ろ向きで落ちそうになっていると気付いた。

 同時に。

 私を担いでいた男も前のめりで倒れそうになっていると分かった。


「!」


 私の体は誰かに抱きとめられ、男はそのまま地面に沈む。


「安心してください。賊は一掃しました。怪我をしている者は応急処置をしています」


 耳通りのいい涼やかな声だった。

 それにしても、体がとてもいかつい。

 というか堅い。

 そう思い、その姿を見ようとすると。


 雲に隠れていた月が、その姿を現わした。

 私を抱きとめてくれた男性の姿が、淡く照らされる。


 甲冑に兜、盗賊の返り血を浴びた男性を見た私は――。


「きゃあああああああ」


 盛大な悲鳴を上げると同時に。

 手から握っていた短剣が落ち、意識を失った。


 ◇


 ガタガタと揺れる振動で目が覚めた。


 淡いランタンの明かりで照らされているが、ここは部屋ではない。

 部屋ではなく多分、幌馬車なのだろう。

 天井と思われる部分に見えるのは、布だ。

 幌馬車の中に用意された簡易ベッドに寝かされていると理解した。


「!」


 丸椅子に座り、船を漕いでいるのは間違いない。


 フィオナだわ!


「フィオナ……」


 思わず声を出すと、彼女はハッとした様子で目を開けた。


「お嬢様!」


 笑顔のフィオナが私の手をぎゅっと握りしめる。


「ご無事で本当に良かったです! 団長様が、助けに来てくれたのですよ」


「え、それって……」


「ライル・ウィンターボトム、王立イーグル騎士団の団長様ですよ!」


 本来私達は、あの危険エリアを抜けた先にある旅宿で一泊。


 翌日の午前中に、ローズロック領に入る手筈になっていた。だが馬車でトラブルが起き、思いがけず野宿することになった。


 一方のライルは私達のことを迎えに行くため、ローズロック領を実は出発していた。本当は旅宿で会うつもりでいたが、待てど暮らせど私達が到着しない。


 何かあったのではと心配し、わざわざあの危険エリアまで駆け付けてくれたのだ。


 するとそこには盗賊により、荷馬車が荒らされ、メイドやフィオナは盗賊の魔の手に堕ちそうになっている。すぐにライル達は盗賊を殲滅し、私の安否を確認。フィオナから森の奥の方へ逃げたことを聞くと、自身の狩猟と敵偵察用で使っているフクロウを放ち、私の居場所を探らせた。


 何度かバサバサと耳にしていた羽音。

 あれはライルの飼っているフクロウだったのだ。


「それでみんなの様子はどう? 全員、怪我はしたけれど、無事だったのかしら?」


 これを聞いたフィオナは悲しそうな顔になる。


「最初に矢で射貫かれた従者はダメでした。あれは背後から心臓を一撃されていて……。あと御者も抵抗しようとしたことで、複数人の盗賊から剣で一斉に刺されてしまい……。でももう一人の従者と御者二人、兵士三名は無事です。兵士はみんな鎖帷子を着用していたので、打ち身や打撲はひどいですし、怪我は勿論していますが、一命は取り留めました」


「フィオナとメイド二人は……辱めは受けなかった!?」


「着ていたワンピースを引き裂かれましたが、団長様が駆け付けてくれたおかげで、事なきを得ました」


 そう言うフィオナのワンピースを見ると……。

 スカートの部分に、深々とスリットのような切り込みがある。


 それを見た瞬間、盗賊達への強い怒りが沸いた。


「盗賊は頭領の男を除き、全員あの場で死亡しています。私達に手を出そうとした盗賊も、既にあの世です。そこはもう、安心いただいて大丈夫ですよ」


 そこで幌馬車の揺れが止まった。

 するとフィオナが笑顔で私を見る。


「強行軍で、夜通しで道を進みました。遂にローズロック領に到着ですよ、お嬢様」

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