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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊7/1発売:商業ノベル&漫画化進行中


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彼の目論見

 ユーリの計画が狂うことになったのは、エドガーと私の出会いだ。


 エドガーとの出会い。

 出会いというか、その時の私は“再会”だと思っていた。

 しかも“偶然の再会”。


 でもこの広い王都において、偶然、なんてあり得なかった。


 真相はこうだ。


 エドガーは唯一、ユーリの悪巧みを知っていた。

 当然、この悪巧みの件。

 ユーリからすると、秘密にして欲しいはず。

 そうなればすることは一つ。

 口止めの料の支払いだ。

 エドガーからすると、口止めすることの対価の要求。


「とはいえ純潔もいただいているので、お金(口止め料)は、貰わなくてもいいかなと思ったんですよ。でもユーリの方は、なんというか慣れていました。人を従わせるには、お金を使うしかない。そう心得ていたんです。よって僕が何か言う前に、金額を提示した。それで手を打つようにと、言って来たんです」


 慣れている……。

 なるほど。

 ミルフォード伯爵家の使用人もまた、ユーリに擦り寄る姿勢だったが、それは間違いない。お金をバラまいていたのだろう。だからこそ、人を従わせるにはお金しかない。そんな発想になっていた。


 人はお金でばかり動くわけではないのに。


 それにしても。

 エドガーに渡した口止め料は、かなりのもの。

 どうやって用立てたのか。


 まさかここで登場するとは。

 ピンクダイヤモンドのネックレス。

 まさに私の命の代償とも言うべきこのネックレス、手に入れた直後、両親に内緒で質入れしていたのだ。そこで得たお金。その大半がエドガーに渡っている。


 エドガーはその身分、平民である。

 だが家はとても裕福。

 伯爵家に匹敵するぐらいの財力があった。お金に困る……なんてことはない。ただ、お金はあるに越したことはない。それに商売人なのだ。お金が手に入るなら、手に入れたい。


 というわけでユーリが差し出したお金はありがたく受け取り、以後、関わるつもりはなかった。


 ただ、とんでもない悪女が王族の一員に名を連ね、その後一体何をするのか。娯楽として楽しむぐらいの気持ちだった。


 その一方で、そもそもとしてユーリがエドガーに近づいた理由。

 それは……私が発端。

 ユーリの実の姉であり、騎士団長に嫁いだ私に対し、エドガーは興味を覚える。


 社交界で噂になるのは、妹であるユーリ。

 存在がほとんど知られていない伯爵家の長女アイリとは一体?

 なぜユーリはそこまで私を嫌うのか?と。


 エドガーは強く興味を持ったようだが。

 そんな深い理由なんてないと思う。

 ユーリはただただ、自分にスポットライトが当たっていないと、落ち着かないのだ。

 主人公は(ユーリ)(アイリ)は引き立て役に過ぎない、と。


 ともかく私に興味を持ったエドガーは、探るようになる。

 私の動向を。

 そこで私がライルと共に王都へ戻るという情報を掴み、接触の機会を得ようとした。


 ところが。


 私は薔薇石英のこともあり、忙しくしていた。

 単独で参加することも多い舞踏会や晩餐会は、知り合うには絶好の機会。

 しかしエドガーは貴族ではない。

 招待状は入手できなくもないが、どの舞踏会や晩餐会に参加するかが分からないのだ。ゆえにそこで接点は持てないと分かった。


 行き詰ったと思ったが、すぐにあることに気が付く。


 家業である家具店の顧客リストに、ウィンターボトム侯爵の名がある。

 そう、あのタウンハウスでの新しい家具の購入だ。

 担当者は別にいたが、エドガーは代わってもらい、頻繁にタウンハウスに足を運んだが……。


 まだ旧グランドホテルであり、改装の最中。

 私の姿はない。

 それでも一度、私は足を運んでいる。

 だがその時エドガーは、別の案件に対応していた。

 よってせっかくのチャンスを逃す。


 人間とは不思議なもので、最初はちょっとした好奇心に過ぎなかった。

 さらに簡単に会えると思っていた。

 それなのに会えない。

 しかもチャンスを逃している。

 そうなると、何としても会いたいという執着心が形成されるのだ。

 気になる程度の関心から、なんとしても会いたいに変わっていく。


 よってあの日。

 私が昼食を洋食屋で摂ると知ると、大慌てであのお店へ向かった。


 時間はお昼時。

 エドガーも昼食を摂ろうと街中へ出ていた。

 しかもチェイス家具店は王都の中心部にあり、立地は抜群。

 あの洋食屋も徒歩ですぐに向かうことが出来た。

 そして何食わぬ顔で店に現れ、私と接点を持ったわけだ。


 妹のユーリが光であるならば、私は影だ。

 目立たない地味な姉。

 エドガーもそのイメージで私に会うことになったが……。


 私は以前の私ではなかった。

 ライルと結婚し、薔薇石英の売り込みに奔走していた。

 忙しく大変だが、充実していた。

 自分でも感じていたが、やりがいを覚え、活き活きしていたと思うのだ。


 その様子をエドガーも感じることになる。


 ユーリの影のような存在の姉かと思いきや、これはこれでありだな、と。

 つまりちょっと味見でもしてやろうと、下心を持つことになったのだ。


 とはいえ下心剥き出しでは警戒される。

 私が望むような男性になりきり、徐々に私のガードを緩めて行こうと思ったが……。


 やはり私と二人で会えるチャンスがなかなかない。


 それでもホリデーマーケットに向かっているらしいと分かると……。

 毎年の買い付けにかこつけ、自身も向かい、そして私に話しかける。

 だがそこでライルにガツンとやられた結果。


 じわじわと私の心を掴むのではなく、そこそこの信頼を得られたら、とっとと食べてしまおうと考えた。


 するといい具合に私と直接仕事ができそうな案件が舞い込む。

 タウンハウスでありながら、元ホテルだった建物を生かし、屋敷の中で店舗を運営する。居抜きでそのまま店舗を利用しつつ、内装や一部の家具を、入れ替えることになった。その家具の入れ替えを、チェイス家具店が担当することになったのだ。


 これはまさに願ったり叶ったりの展開。


 エドガーは何かしら理由をつけて私を呼び出し、うまく人払いをした改装中の店舗の中で、私に手を出すことを考えていたが……。


 思いがけず舞踏会の話が出た。


 舞踏会。


 貴族の娯楽。

 面白そうだが強い興味があるかというと……。

 なかった。

 むしろその招待状を手に入れるために、貴族に媚びへつらうことが嫌だったのだ。


 仕事ならいくらでも頭を下げるが、プライベートでまで、貴族に媚びるつもりはない。

 だが舞踏会。

 私の夫であるライルは、任務で参加が難しい。

 そして舞踏会は社交の場でありつつ、不倫文化の温床でもあった。

 既婚男女が社交という名目の元、知り合い、アバンチュールを楽しむ。

 つまりそういう行為がやりやすい場と、エドガーは考えた。


 そこで私に「一度は舞踏会に行ってみたい」と健気なアピールをして、同伴者に選ばれることに成功したのだ。

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