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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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例のエリア

 こうして私は一人、嫁入りすることが決まった。


 「一人で嫁入り!?」と友人は驚き、「可哀そう」と同情してくれるが……。


 私はあまり気にしていない。

 幼い頃より、自立を求められて育ったから?

 ただ、人間、生まれる時も死ぬ時も一人なのだ。

 一人で嫁入りしても……どうせライルと結婚するのは私なのだから。

 別に一人でも構わない。


 そう思う一方で。

 私に付き従うことになった数名の侍女と従者に、私が「可哀そう」と思ってしまう。


 私としては断ってもらっても構わなかった。

 でも貴族に仕えたら最後、強い忠誠心を持つことが求められた。

 「ローズロックまで行くのはちょっと……」とは言えない。


 ゆえにいよいよ婚礼が近づき、出発目前となった時。


 同行が決定している侍女、メイド、従者、御者を集め、私は感謝の気持ちを伝えた。


「王都暮らしがこれまで長く、これからも王都で暮らしていけると思ったのに。私に仕えたばかりにローズロックの地に移住させることになり、ごめんなさい。でもきっとライル様はタウンハウスを王都に持つようになるから、そうなれば一年の半分ぐらいは王都へ戻ることができると思うの。それに状況に応じ、休暇をとり、王都へ戻ってもらって構わないわ」


 これを伝えると使用人達は驚き、でも感動してくれた。

 さらには気持ちよく、私について行くことを誓ってくれたのだ。


 こんな風に私が行動できたのも、今いるミルフォード伯爵家を離れ、両親と妹ユーリの束縛から解放されるからだろう。他者を気遣えるゆとりが心にできたのだ。


 その点を加味しても、この結婚は間違いなく私にとっての転機になる。


 だから前向きに行こう!


 こうして過ごす結婚式までの三か月は、あっという間だった。


 ウェディングドレスの微調整と、ベールだけは新しく仕立てた。そしてシンプルなデザインの、ライルに贈る結婚指輪を用意したのだ。さらに祝ってくれる友達と食事会をしたり、お茶会をしたり。両親のそれぞれの親族のところへ報告を兼ねた挨拶に行き、荷造りをして……。婚礼道具を揃え、手土産を用意していると。


 遂にその日を迎える。


 結婚式の三日前にローズロックに到着できるよう、王都を出発することになった。


「幸せになりなさい、アイリ」

「ライル様に尽くすのですよ」

「お姉様、どうかお元気で!」


 両親とユーリの見送りは、実にあっさりしたもの。

 私の乗った馬車が出発すると「寒い、寒い」とばかりにすぐに屋敷へと入って行く。


 自分自身、厄介者のつもりはなかったが、この最後の反応を見るだけでも……。

 やはり家族の中で私は、極力お金も手間もかけずに済ませたい、ただの邪魔者だったのかもしれない。


 でもそんな家族ともこれでおさらばだ。


 ということで馬車はひたすら道を進む。


 途中で休憩を挟み、その日のティータイムの時間には、王都郊外に到着。

 そこには旅宿があるので、一泊することになる。


 旅宿には入浴設備も整っており、快適に過ごすことができた。


 翌朝は、日が出て暖かくなってからの出発となる。

 秋の終わり、冬の足音が聞こえ始め、朝晩は冷え込むようになっていた。

 ウールのローズ色のワンピースに毛皮のコートを合わせ、宿を出発することになった。


「アイリお嬢様、今日はいよいよ例のエリアに入ることになります」


 そう教えてくれたのは、馬車に同乗している侍女のフィオナだ。

 赤毛にそばかすで焦げ茶色の瞳、リスみたいで私より六歳上だが、同い年ぐらいに若々しく見える。

 白い襟と袖のついたグレーのワンピースを着て、私の対面の席に座っていた。


 そのフィオナの言う例のエリアとは、父親が「ぜひ駆け付けたいが、途中に戦時中に激戦と言われた土地があり、そこは今も荒廃したままだと聞いている。もしもがあると、とても恐ろしくて……」と言っていたあの場所だ。


「あ……」


 私の声に、フィオナが馬車の窓から外の様子を伺う。

 窓の外に細い幹の木々が見えていた。同時にその根元には倒木も多い。


 草や苔も生えているのだろうが、秋を迎え、冬目前。

 その多くが枯れていた。

 さらに壊れた武器や武具なのだろうか?

 不自然な膨らみが地面に見えるが、遺棄された人工物に草が生えているようだ。


「見て、フィオナ。焼け焦げた木々も見えるわ。この辺りが戦場になったのは、今から三十年近く前よね? でもあれはつい最近、焼け落ちたように見えるわ」


「そうですね。このエリアが荒廃しているのは、かつての戦場だったというのもそうなのですが、森が復活してくると……」


 そこでフィオナがハッとして、口を閉じてしまう。


 どうしたのかしら……?


 不思議に思い、尋ねると、フィオナは、少し困った表情になる。


「実は……旦那様から口止めされているのですが……」


「え、お父様が? 何を? もうお父様に会うことなんて、滅多にないと思うわ。話して、フィオナ」


 そこでフィオナが教えてくれたことは……。


「ならず者がこの辺りを根城にするようになったと聞いています」


「……! 荒廃した場所だとは聞いているわ。だから夜は獣がうろついて危険だと。でもならず者……つまり盗賊や何らかの犯罪者が、この辺りに潜んでいるということ?」


 私の問いにフィオナはコクリと頷く。


「人が近づかない場所なので、いい隠れ蓑になるようです。あちらの奥の方は、かつての森に近い状態だと思います。あのような木々が昔の状態に戻っている場所に、潜伏していると聞いています」


「一部木が燃えているのは……宴会でもしていて、うっかり焚火が引火でもしたのかしら?」


 私の問いにフィオナは「違います」と答え、真実を教えてくれる。

 この辺りに潜むならず者に、旅の人間、商人が何人も襲われている。

 その際、ならず者達は馬車や荷馬車を足止めするため、火矢を放つという。

 立往生する馬車や荷馬車を襲い、女子供は攫われ、金や商品は強奪される。


「さらによそ者がここに入る込むと、火を使い、追い詰めるのだとか……」


「つまり今通過した場所で、襲われた人々がいたのかもしれないということよね……?」


「そうですね」とフィオナは頷くが……。


「そんな危険な場所なら、もっと護衛の兵や騎士をつけて欲しかったわ! 随行している兵は三人しかいないのよ」


 私の嘆きにフィオナは自身の唇を噛み締める。


「ユーリ様が第二王子の参加する舞踏会に顔を出すにあたり、ピンクダイヤモンドのネックレスを欲しがりました。お嬢様の結婚支度金を流用しても足りず、護衛のために雇う予定だった兵士の数を減らし……そのダイヤのネックレスの購入資金に充てたそうです。『どうせ元の護衛の兵士の数でも、ダメな時はダメでしょう。そこは運だと思い、いざとなったら諦めるしかないわよね』とユーリ様は言っていたようです」

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