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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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あ、本音をつい

「アイリ、着きました。こちらが滞在いただくホテルです」


 コバルトブルーの騎士団の隊服姿のライルが、馬車が止まると同時に教えてくれる。


 立派なファザードのこの建物は、宮殿から一番近い高級ホテルとして知られている『ザ・クラウン』。


 今日から私が三カ月、滞在するホテルだ。

 しかも今回、ワンフロア貸し切りだという!


 今回、王都に同行した騎士の三分の二は、ローズロック領へ戻る。でも残りは……私の護衛のため一緒にホテルに滞在。そのため、ワンフロア貸し切りとなったわけだ。


 さらに馬車を降り、支配人に案内された部屋は、ジュニアスイート!


 フロアには専用ラウンジが設置されており、他のフロアの客が出入りすることはない。というのも廊下の中央、左右の突き当りにある階段には、フロアボーイがいる。ここを通過する際、部屋の鍵の提示を求められるからだ。セキュリティが万全のホテルだった。


 ライルにエスコートされ、ジュニアスイートに入ると、まずエントランスホールがある。そこを進むと広々としたリビングルーム。一面が窓で、室内はとても明るい。ベージュの壁紙はダマスク柄で、ソファセットはターコイズブルー。テーブルセットは清潔感のある白木で、シャンデリアもとても豪華だ。


 ベッドルームはツインベッド、専用のバスルームもついている。


 さらに使用人一人分の部屋も併設され、ここにフィオナが滞在。通常のシングルルームと同じ作りなので、快適に過ごせること間違いないしだ。


 ラベンダー色のドレスを着た私は、ライルのエスコートでソファにそのまま腰を下ろしていた。

 一方のライルは起立の姿勢で話し始める。


「こちらの部屋でゆっくり寛いでください。荷解きは使用人がするので。昼食の時間になりましたら、お迎えにあがります。このホテルの一階のレストランを予約しました。午後は自分が国王陛下と謁見となり、結婚の報告と新たな任務を受けることになります」


 ライルとは完全に打ち解けたと思ったのに。

 王都に着いたら騎士団長モードで、口調が少し堅苦しくなっている。

 妻に対して「お迎えにあがります」だなんて。

 これではまるで私の護衛騎士みたいだ。


 そもそも私をソファに座らせ、自身が立っている時点からして、おかしいと思う。


「ライルは昼食まではどうするのですか?」


「自分は領地に戻る兵士や騎士を見送り、その後はこのフロアにある専用ラウンジに行こうかと」


「! 見送りは私もします。この旅の安全が守られたのは、兵士や騎士の皆さんのおかげです。ちゃんとお見送りを私もします! ところで専用ラウンジでは、残る騎士の方々とお打ち合わせですか?」


 私の言葉を聞いたライルは、ふわりと優しい笑顔になる。


「見送りは一緒にしましょう。アイリが顔を見せたら、皆、喜ぶと思います。旅の道中では休憩の際、手ずから飲み物を配ったり、声掛けをしましたよね、アイリは。皆、そこでアイリのファンになってしまったんですよ」


「まあ、そうなんですか。……そこまでのことをしたつもりはないのに……」


「元伯爵家の令嬢が、使用人のように、兵士や騎士に飲み物を渡したりはしません。アイリの優しさに、みんなメロメロですよ」


 そしてラウンジでは、特に打ち合わせをするわけではない。ただお茶を飲み、時間を潰すために行くと言われ、首を傾げてしまう。


「お部屋は手狭なのですか? それとも同室者がいるから……?」


「あ、そういわけではないです。自分は今晩から、宮殿にある騎士団宿舎で寝泊まりすることになるので、このホテルに部屋はとっていません」


 そうだった。

 タウンハウスの手入れが終わっていないから、私はホテルに滞在するわけで……。


 でも。私の部屋はジュニアスイート。

 リビングルームとベッドルームもわかれている。

 というかベッドルームはツインベッドなのだ。

 ……騎士団宿舎で寝泊まりせず、帰って来てくれればいいのに。


 そう思うが、私からそんなことは言えない。


 基本的に、夫の考えに従うのが妻――というのが社会通念。意見を求められれば、言ってもいいかもしれない。だが妻から、宿舎ではなく、ホテルへ帰ってきて欲しい……言いにくい! それに私達は白い結婚。同じ寝室で寝ることを望むのは……やめた方がいいはず。


「あ、あの……」


 ライルがほんのり頬を赤くして私を見る。


「もしや不安ですか? 自分はいませんが、ホテルに滞在する騎士も兵士も優秀な者達です。それにこのホテルはセキュリティも万全であると聞き、選びました。外部からの許可なき侵入は、難しいと思います。ご両親も無理に会いに来たりはしないでしょう?」


 生真面目なライルは、大いなる勘違いをしている。

 その可愛い勘違いはさておき。


 私の家族……両親とユーリ。


 王都へ向かう件は一応、手紙で知らせている。


 それに対しては貴族の礼儀として「そうですか。道中お気をつけて」という実にありきたりの返事の手紙が届いていたが。一言も「ではぜひ会いましょう」とか「食事でも一緒にしましょう」とは書かれていなかった。ただ「いろいろと忙しい」と書かれており、そこから察しろと言うことなのだろう。忙しいから、のんびり会う時間はないと。


「アイリ、心配ですか?」


 私が黙り込んでいたので、ライルはわざわざ片膝を絨毯につき、跪いて手を取った。やはりこれではライルは、私に仕える護衛騎士で確定だ。


 そうではないのに!

 ライルは私の護衛騎士ではなく、夫。

 そして私は不安なわけではなく、ただライルと一緒にいたいだけだった。


「ライルと離れ離れになることは、不安です。でも騎士団長としてすべきことあるのですから、そこは仕方ないこと。ただ専用ラウンジに行くぐらいなら、この部屋で一緒にお茶を飲みませんか」


 あ、本音をつい、口にしてしまった……!

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