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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊7/1発売:商業ノベル&漫画化進行中


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狭間で揺れ動く

「痛みはないですか? もし辛いようなら、無理をさせるつもりはありません。お休みになってください」


 限りなく優しいライルにメロメロになりそうな私だったが、なんとか踏ん張り「大丈夫です」と答える。


「辛くなったら遠慮なく声を掛けてください。アイリのことが大切なんです。約束してくださいますか?」


 この言葉に感動し、こくこく頷くしかない。


 私の体への気遣いだけではなく「アイリのことが大切なんです」と明言されたことも、嬉しくてならなかった。


 こんなに優しいライルなら、焦れ焦れ作戦で追い詰めなくても、「どうして高級娼館に足を運んだのですか?」と尋ねたら、素直に白状してくれそうな気もするが……。


 その点をフィオナに話したところ、こんな風に言われてしまったのだ。


「焦れ焦れがピークの時は、ある意味、理性が崩壊寸前です。平時に尋ねられたら『うん!?』と思うところで立ち止まることなく、目の前の欲求を満たすために、本音をさらすことになると思います。でも焦れ焦れピークではない時。どんな反応になると思いますか?」


 フィオナに問われた私は考え込むが、正解が分からない。


「高級娼館に若旦那様が行ったこと。知らないはずなんです、若奥様は。よって『どうして高級娼館に行かれたのですか』と普通の状況で尋ねると、『なぜ、それを知っているのですか? まさか後をつけたのですか?』とマイナスな反応を得ることになってしまいます。自分の何かを疑い、尾行をつけたと思われた時点で、若旦那様の態度は硬化する可能性が高いです。本音を打ち明けてくれるとは……思えません」


 ここまで分析されてしまうと、信憑性があり、そしてそうだろうと納得してしまう。自分が逆の立場ならそうなると思える点も大きい。


 それに焦れ焦れ作戦で理性が崩壊寸前だからこそ、「なぜ高級娼館に行ったことを知っている……?」と考える余地を与えずに、「なぜ高級娼館に行ったのか」の答えを得ることが出来るというのもその通りだと思えた。


 ゆえに今、甲斐甲斐しいライルに尋ねたら、その瞬間。

 彼の表情が変わり、心を閉ざしてしまう……可能性が大きいので、やはり聞けない。


「……辛そうですね。やはり無理をさせてしまいましたか? 良かったらベッドで横になりますか? 自分はそばに椅子を置いて見守るのでも構いません」


「ごめんなさい。つい、ぼーっとしてしまいました。でも大丈夫ですよ。今は痛みもありませんから」


 そこでライルがチェスを用意していないことに気付く。


「今日はチェスは?」


「アイリの体調が良くないことを考え、チェスは持参しませんでした。体調の悪いアイリに勝利しても、なんだかフェアではないと思えるので……」


 ああ、やはりライルは騎士ね。

 正々堂々戦いたいと思っている。


「私の体調を気遣ってくださり、ありがとうございます。でも月のものは病気ではありませんから。そこまでお気遣いいただかなくても大丈夫ですよ」


 そこでベルを鳴らし、メイドを呼ぶと、ライルはチェス一式を持ってくるように命じた。メイドは「かしこまりました」と出て行き、すぐに持ってきてくれる。


 ラズベリーリーフティーを飲み、プルーンをつまみながら、リラックスした状態でチェスを出来た。ライルはなんと白ワインを口にしながら、チェスをしているのだけど……。


 これはもしかして自らハンディをつけてくれたのかしら?

 酔って冷静な判断ができないように。

 それともお酒を理由に負けるつもり?


 ともかく私も勝つつもりはない。

 ということで実際プレイし始めると……。


 ライルはどうやら自分が負け、私の唇へキスをしたいと思いつつも。

 私が負けて、どこにキスをされるのか、ドキドキしたい気持ちもあるようだ。

 負けたいけれど、勝ちたくもある……その狭間で揺れ動いているのが分かった。


 ならばここは私がぐいぐい負ける方向で動けば、押し切れる!


 そう思ったら……。


「昨晩と同じですね。自分が四勝で、アイリが一勝。やはりアイリの体調が万全ではなかったからですね」


「決して病気ではないので、体調のせいにはしたくないのですが……。でも負けてしまいましたので、体調が……影響していたのかもしれません」


「いずれにせよ、勝負はついたので」


 ライルがふわりと私を抱き寄せた。


 ああ、ライルにキスをされる。


 恍惚とした気持ちになりかけたが、ぐっと我慢してライルに提案する。


「ライル、私の好きなところ、沢山あるでしょう? 同じ場所はダメということにしましょう」


 これを聞いた瞬間。

 ご馳走を前に「待て」を命じられた犬のように、ライルの表情がしゅんとなる。

 あまりに愛らしく、抱きしめたくなる衝動を抑えるのが大変!


「……分かりました。でも、そうですよね。アイリの好きなところ、沢山ありますから……」


 ライルはそう言うと、私の顎をくいっと持ち上げる。


「!?」


 同じ場所は×。つまり唇のキスはもうできないのに!


 ライルの端正な顔が近づき、私は本能で目を閉じ――。

お読みいただき、ありがとうございます。

次話は糖度高めになるので、苦手な方はブラウザバックなどで自衛をお願いします~

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