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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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32/112

四敗分の……

「では、私から、四敗分のキスをさせていただきます」


 落ち着いた声でそう告げたものの。

 実際の私は、心臓がドクン、ドクンと大きな音を立てている。

 呼吸だって、まだ落ち着いたわけではない。

 全身も熱くて……。


 そう、暑い!


 着ていた厚手のウールのガウンを脱ぐと。


 ライルが息を呑む気配が伝わって来る。

 そこで彼を見ると、慌てて視線を伏せた。

 伏せられた目元はほんのり赤く、さらに顔も赤くなっている。

 耳たぶも真っ赤だった。


 突然、どうしたのかと思ったが……。


 いつもの寝間着ではなく、シルクのネグリジェを着ていた。

 厚手のガウンを脱いだので、体のラインがくっきり浮き出ている。


 私の体を見て、そんなにも赤くなっているの……?


 その事実に体の芯が、キュンと震える。

 ライルから異性として強く意識されていることが、単純に嬉しい。


 自分に自信が持てたし、ちゃんと行動することができた。


 つまり。


「ライルの好きな所へ、キスをしますね」


 隣に座るライルの耳元に顔を近づけ、そっと囁く。

 息が耳にかかるように、ゆっくりと。


 それだけでライルの体がビクッと分かりやすく震えた。


 その直後に、その耳たぶにキスをして甘噛みをする。


 「くっ……」と短い声が、ライルから漏れた。


 そのまま耳たぶから唇を離し、首筋にギリギリ触れるか触れないかで顔を移動させる。


 その間、息が首筋にかかっていたので、ライルが息を呑んでいる様子が伝わってきた。


「次にここです」


 首筋にゆっくり唇で触れ。その陶器のような肌を吸うようにすると――。


 「あっ……」という声と吐息が、ライルからこぼれた。


 私がキスをして肌を吸った後に、いわゆるキスマークが出来ている。


 チラリとライルを見ると、彼の碧眼は熱く潤んでいた。


 その横顔に、またも体の芯が疼くが、そのまま一度体を離す。

 次にどこにキスをされるのかと、期待と不安が混じったライルの瞳と目が合う。

 戦場で“野獣”(ビースト)と呼ばれる騎士団長とは思えない姿に、つい興奮しそうになる。


 でも次は手ね……と思い出し、視線を移動させると……。


「……!」


 ライルは手をぎゅっと握りしめていた。

 それは……私のキスがもたらす何かに、必死に耐えているように思える。


 力が入った状態のその手に触れると、ライルが全身を震わせた。


 私はただの小娘で、敵兵でも暗殺者でもないのに。

 こんなに反応をするなんて。


 両手でライルの手を包み込むようにすると、自然と彼の手から力が抜ける。


 そのまま自分の顔の近くまでその手を持ち上げ……。


 きっと手の甲にキスをされる――ライルはそう思ったはずだ。


 でも甲ではなく、中指の先端にキスをすると。


 苦し気なため息をライルがついて、何かを期待するように私をじっと見ている。

 なんだか腰の辺りがゾクゾクして落ち着かない。


 ゆっくり持ち上げていた手を元の位置に下ろすと、ライルが残念でならないという顔をするので、思わず笑いそうになるのを堪える。


 やはりライルは……可愛らしい!


 そんなライルをさらにドキッとさせることをする。

 今度のキスは背中だから、着ている寝間着のボタンをはずし始めたのだ。


「!? ア、アイリ、な、何を……」


 声を震わせるライルが乙女で、私は乙女を襲おうとする悪者みたいになっている。


 ライルが私の両手を掴むので、ここは盛大にため息をつく。


「最後のキスはなしですか?」

「! い、一体、どこへキスされるおつもりですか!?」

「それは……今はまだ秘密です」

「!」


 ライルは瞳をうるうるさせて私を見つめ、掴んでいた手を離す。

 ゆっくり私にボタンをはずされていくライルは、その立派な体躯に反し、愛らしくてならない。


 寝間着のボタンをすべて外し、素肌が目の前に見えると。


「あ……」


 声を漏らし、思わずじっと見てしまう。

 深い傷痕が胸の辺りに見えたが、胸筋、綺麗に割れた腹筋、形のいいおへそに目が釘付けだった。


「……すみません。お見苦しいですよね」


 ライルが慌てて自身の手で前を合わせようとするので、両手でそれを止めさせてしまう。


 私は見事な筋肉に反応したのに、傷痕に驚いたと、ライルは思ったようだ。


「騎士なんです。傷が全くない方が、本当に騎士なの?と思ってしまいます。傷痕も含めてのライル。私は傷について、気にすることはありません」


「アイリ……」


 見つめ合った瞬間。

 ライルの想いがその瞳から溢れ、思わず瞼を閉じそうになる。

 そうなれば絶対にキスをされるが……。


 今はダメ!


 すっとライルの熱い視線から逃れ、ソファから立ち上がると。

 ライルは、「くぅん……」と鳴き出しそうな、子犬みたいな表情になってしまう。


 今すぐ抱きしめたくなるが、それを我慢してソファを回り込むと、彼の背後に立つ。


「アイリ……」と振り向こうとするライルを制すると、寝間着の上衣を肩からぐっと押し下げる。


「……!」


 ライルの体が盛大にビクンと震え、またも乙女の服を脱がそうとする、悪者の気分を味わう。


 背中にもいくつか、傷痕が残っている。

 でも見事に鍛えられた背筋に、その傷痕は、勲章にしか思えない。


 そっと傷痕に指で触れると、ライルが再び体を震わせた。

 一方の私は、その傷痕に「ちゅっ」とキスをすると……。


 「う……」とライルから熱のこもった声が上がる。


「背中の傷痕も含め、私はライルのことが大好きですよ」


 最後にそう伝えると、ライルはソファから立ち上がり、私に駆け寄る。

 寝間着の前ははだけたまま、私を抱きしめようとするが、それをするりと猫のようにかわす。


「ライル、今晩もチェス、楽しかったです。負けたものの、あなたの傷痕という勲章も確認できて、よかったと思います。明日は、もっと別の場所の勲章も……確認できるかしら……?」


 そう言って視線を一度落とし、その顔を見ると。

 完全にライルの顔は真っ赤になっている。


「では私はこのままこの部屋で休みますので、ライルはお部屋にお戻りください」


 にっこり笑顔で彼の着ていたガウンをソファからとって広げる。


「アイリ、自分は、その」「はい、腕を伸ばして」


 有無を言わせず、ガウンを着せてしまう。寝間着のボタンをとめていないが、そのままガウンの紐をぐっと結わくと、とんでもなくセクシーな姿のライルが完成した。


 これはなんだか押し倒したくなるが、代わりにその手を取り、扉の方へと連れて行く。


「おやすみなさいませ、ライル」

「アイリ……」


 主導権は完全に私が握った。


 今のライルは昨晩の私のように「もっとキスをしたい、続きをしたい」という気持ちになっているはず!

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