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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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勝敗の行方

 部屋に入り、私を見ると、ライルはいつも通りの眩しい程の笑顔になる。


 ただそれだけで、私の体からは力が抜けそうになるが、奥歯を噛み締め、ぐっと堪える。


「今日もまた、チェスのお相手をお願いできますか? ルールは昨日と同じです」


 フィオナの言う通り。

 今日も昨晩と同じチェスだ。


「ええ、勿論です。私も楽しみにしていました」


 ライルに負けじと笑顔になると、彼は嬉しそうに微笑む。

 そして昨日と同じように私の隣に腰を下ろしたが……。


「……! アイリ、香水を……変えましたか?」


「はい。……もしや苦手な香りでしたか?」


「! まさか。甘くて……なんだかドキドキする香りです」


 陶器のような肌を赤くして、少し伏し目がちでそんなことを言うライルは……。


 ズルい。


 そんな横顔を見せられて、冷静でなんていられない!


 ホワイトムスクの香りは、自分でかいでも、どこか官能的だった。

 ライルの表情に胸が高鳴る中、この香水の香りは……。

 彼より先に、自分が興奮しそうだった。


「その香水はなんだかドキドキします。それに今日は部屋が……少し暑く感じませんか?」


 チェスボードにチェスピースを並べながらライルはそう言うと、着ていた濃いグレーのガウンを脱いだ。パールブルーのシルクの寝間着姿のライルは……。


 騎士団の団長であると分かる、体のラインが浮き彫りになっている。無駄を削ぎ落し、引き締まったその体を感じるだけで、体が熱い。単純明快に、ライルと一線を越えたいという気持ちになってしまう。


 まだチェスを始める前からこんな状態で、大丈夫かしら、私!?

 主導権を握ることなんて……。


 出来る気がしない!


「では始めましょうか」


 最初の勝負は動揺しまくっていたせいで、負けるつもりはなかったのに、負けてしまった。


 この結果にライルは驚き、嬉しいはずなのに残念そうな表情になるのは……。

 フィオナの予想通り、負けるが勝ちで動いていたのかしら……?

 つまり私にキスをしたくてわざと負けていたの?


「次も勝てる気がします!」


 ライルのこの言葉に、つい反応してしまった私は、本気を出してしまい、あっさり勝利してしまう。だがすぐに我に返り、「しまった!」と思う。負けるが勝ちなのに! でも初戦は勝つはずが、負けている。トータルで見れば、作戦通り。これでいいわ。でも次はちゃんと負けないと! 負けないとキスをできないのだから!


 ちょっとでも集中力を切らすと、ライルの体のラインが浮き彫りになった寝間着、自分のホワイトムスクの香水の香りで、余計なことを考えてしまいそうになる。必死に気を引き締め、勝負に挑んだ結果……。


「驚きました。自分はチェスの才能が開花したのでしょうか。四勝もできるなんて」


「そうかもしれません。なんて言うとおこがましいですが、勝負はライルの勝ちです」


「ありがとうございます。……嬉しいはずなのに、なんだか複雑な気分です」


 ライルはなんて素直なのだろう。


 勝利を喜びたいのに喜べないのは、自由に自分から私へキスできないからなの……?


 本当は私とキスや……それ以上をしたいと思っていたりする……?


 切ない気持ちが募り、思わずライルをじっと見ると、彼は「アイリ」と短く名を呼び――。


 抱きしめられ、そして唇が重なった。

 これはライルが一敗した分のキスだと分かる。


 このキスをされると、私は自分が骨抜きにされることを昨晩、身をもって理解していた。


 口を開けてはいけない!


 唇に昨晩同様の熱いものを感じるが歯を食いしばって開けないようにする。

 だが。

 ライルが私の下唇を甘噛みしたのだ!

 これには一気にドキッとして、全身に痺れが走り抜け、口も自然と開いてしまう。


 しまった!


 と思った時には遅くて……。


 また意識が飛びそうになる前に、残された力を振り絞り、ライルの胸を両手でグッと押す。


 そんな風に抵抗されると思わなかったのだろう。

 ライルがキスを止めたのだけど……。


 お互いに息が上がっていた。

 呼吸が乱れ、瞳が潤んだ状態で見つめ合い、必死に二人して何かを我慢している。


 どうして? なぜ?

 夫婦の寝室にいる夫と妻なのに!

 もっと深いキスと、その先に進めない理由って!?


「アイリ」


 掠れた声で名を呼ばれ、今も十分に激しく鼓動している心臓が、止まりそうになる。


 ライルが再び私を抱き寄せ、キスをしようとしていると分かった瞬間。


 彼と私の唇の間に、指をそっと滑り込ませた。


 私の指にキスをすることになったライルは、本当にビックリした様子で目を開けた。


 透き通るような碧い瞳と目が合う。


「負けたのは私です。ライルは一敗しかしていないのですから、キスは一度だけでは?」


 心臓は爆発しそうなのに。

 私は落ち着いた声でそう告げている。


 ライルは私の言葉にハッとし、そして「そうですね……」と素直に返事をした。

 その瞳は実に切なそうで、見ていると胸にグッとくるが、ここは心を鬼にする。


「では、私から、四敗分のキスをさせていただきます」

お読みいただき、ありがとうございます。

次話は糖度高めになるので、苦手な方はブラウザバックなどで自衛をお願いします~

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