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私の白い結婚  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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24/112

私の白い結婚

「自分も同じです」


「え」


「やはり今の自分ではこれが限界です」


 ど、どういうこと……!?


 ライルは私の手を離すと、ぽすっとベッドに座った。


「本来、貴族であろうと、平民であろうと、婚約から結婚まで半年ぐらいは必要になります。でもミルフォード伯爵は『姉がいつまでも独り身なので、妹まで婚約することが出来ないのです。せっかく妹のユーリにいい縁談話が来ているのに。あの子は姉を差し置いて、自分だけ幸せになるわけにはいかないと、縁談話をことごとく断っているのです。ユーリを不憫に思うなら、一刻も早くアイリと結婚してください。ウェディングドレスの用意もできていますので』と自分に伝えたのです」


 最悪だった。

 ユーリをだしに、私との早期結婚を、父親はライルに求めていたなんて!

 こんなの脅迫みたいなものだ。

 それにライルの性格からしたら、私の父親に言われるままに、ユーリのことを不憫だと思ったに違いない。


「ミルフォード伯爵が言うがままに、従ってしまいました。でもこれは大きな間違いでしたね」


 ライルが大きなため息をつく。

 そしてそう言われてしまうと、その通りだと思う。

 間違いなく、父親はライルを脅し、結婚式の時期を早めさせた。

 冷静に考えると父親の脅しを受け入れたこと、ライルは間違いだったと気付いてしまった。


「今日はもう休みましょう。このままこちらで休んでいただいても構いませんし、自室に戻っていただいても。とりあえず自分はこの部屋から出て行くので、安心してください」


 ベッドから立ち上がったライルは、スタスタと扉の方へ向かうと、深々とお辞儀をする。それを終えると、そのまま部屋を出て行ってしまう。


 パタンと静かに扉が閉まり、私は呆然していた。


 こ、これはどういうことなの……?


 ひとまずソファに座り、バクバクしている心臓を落ち着かせようとする。


 ロマンス小説でこういうシーンを読んだことがあった。

 いわゆる“白い結婚”の物語。

 結婚式挙げたその日の夜、すなわち初夜で夫婦は結ばれないまま、結婚生活を続ける話だ。

 夫には実は妻以外で好きな相手がいたり、何か誤解があったり、その理由は様々なのだけど。


 も、もしかして、それと私、同じ状況?


 ライルは私の父親に脅され、結婚式を婚約から三か月後に挙げることに同意した。


 でも彼自身、それは早過ぎると思っていたのでは?


 それでも私は領地へやって来た。しかも盗賊に襲われながら。同情心も働き、いろいろ思うところもあったが、呑み込んでくれていた。


 それなのにここに来て、私が不安だの、心配だの言い出したから……。


 いい加減、うんざりしてしまったのでは……?

 父親同様、口うるさい娘だと。


 待って。


 そもそもの話。


 父親は私に話していないが、何かからくりがあるのでは?

 ユーリではなく、私が選ばれたことに。

 実際に会ってみて、私でもいいかとライルは思ってくれたのかもしれないが、本当はユーリを望んでいたのでは……? ライルとベルナードも優しいから、決して明かさないだけで、やはり私ではなく……。


 そう思うと。


 ここ数日浮かれていた自分が空しくなる。

 さらに初夜で、夫婦の寝室に一人残されるロマンス小説のような展開にも、愕然としてしまう。


 今、自室に戻ったら、きっとフィオナがどうしたのかと思うはず。


 戻れるわけがない。

 このままここで休もう。


 潜り込んだベッドは、自室のベッドよりもサイズが大きい。

 そこで改めてこのベッドが、夫婦のために用意されたものなのだと気付く。

 一人で寝るには大き過ぎる。


 どうして私はここで一人で休むの……?


 今この状況では、悪いことしか考えられない。

 よって考えるのは……止めよう。


 止めようと思っても、考えるのを止めることは、意外と難しい。

 ならば。

 そもそもライルとの結婚。

 それはある意味、打算だった。

 このままあのミルフォード伯爵家にいても、私は嫁へ行くこともなく、両親を介護し、最後は修道院へ入ることになる……そんな人生を想像していた。


 でもそれはあまりにも味気ない。


 ライルとの結婚は、そこから抜け出すチャンスだった。

 さらに私とユーリを勘違いしているのでは?と思ったが、それを指摘するような行動も私はとらなかった。勘違いのままでも、一度国王陛下から許可された婚姻は覆せない。よって私はミルフォード伯爵家を出て、ローズロック領で暮らせる……そんな打算的な考え方をしていたのだ。


 もしかするとそんな私の狡さに、ライルは気づいてしまったのかもしれない。


 そう思うと、ライルと私の結婚が“白い結婚”になってしまったとしても……仕方ないこと。


 ここで腹落ちができた。

 仕方ないことなんだ、と。


 ユーリ中心に回っていた、ミルフォード伯爵家で暮らしていた時から。

 諦めるのは、私の特技だった。


 どんなに懇願しても、私の願いは叶わない。

 だから余計な期待はしなければいいのだ。


 ライルと私は白い結婚。


 でも私はミルフォード伯爵家を出ることが出来た。

 それで十分。


 そこで目を閉じると。

 なんとか眠ることが出来た。


 そしてこの夜を境にライルと私の関係は――。

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