【特別編】次は……(後編)
新婦がかなり思い切り投げたブーケ。
それは未婚令嬢達を通り越して……。
「うわぁ」とシダルが落下してきたブーケをトスする。
本当はブーケが欲しいのだろうが、これは未婚女性のためのイベント。自身がゲットするわけにはいかず、トスをした形だ。
その瞬間、青い花が一輪、ブーケからこぼれ、シダルの頭に乗っかった。
「うん!?」と今度はレニーが驚く。
咄嗟にトスされたブーケはほぼ真上に飛んで行き、シダルの隣にいたレニーのところへ落下してきたのだ。ここは慌ててレニーもトスを行う。
白い花が一輪こぼれ落ち、レニーはそれをゲットし、ブーケは……。
「!」
レニーのトスは真上ではなく、ほぼ真横でロークの顔面を直撃。
仰天するロークだったが、その手はトスをしようと伸ばされていたので、ブーケは落下しながらその腕に当たる。そして紫の花を一輪、ロークの腕に残し……。
なんと自分の目の前にブーケが飛んできた。
「「「兄貴!」」」
「「「ベルナード卿、ずるい!」」」
令嬢達の抗議の声が聞こえ、そのまま受け止めそうになったブーケを両手で一瞬持ちながらも、横に流す。
「!?」
驚くフィオナが最終的にブーケをゲット。
「「「まあ」」」
令嬢達は最後の最後で未婚女性にブーケが渡ったので、驚きと安堵の声を上げる。
「なんとブーケは四人の男性を経て、領主様の若奥様の侍女フィオナ嬢の手元に! きっと来年はフィオナ嬢が幸運の鐘を鳴らす人物になるかもしれません! おめでとうございます!」
ブライズメイドの声に拍手喝采が起きた。
◇
「「「ブーケの花をゲットした!」」」
披露宴の席でシダル、レニー、ロークの三兄弟は、大喜び。
思いがけずトスすることになったブーケから落ちた青・白・紫の花を各自一輪ずつ手に入れることになったからだ。
「来年、結婚式を挙げるのは俺だ!」とシダル。
「新居を用意しないとな……」とレニー。
「教会の予約をしておこうか」とローク。
結婚とは相手があってこそなのに。浮かれる三兄弟の頭は、結婚式のことで頭がいっぱい。
その一方でベルナードは。
「別に気にしていない。そもそもあれは未婚令嬢向けのイベント。未婚の令嬢が受け取ってこそ、意味がある。自分には一輪の花のポロリさえなかったが、関係ない。そもそも相手もいないんだから……」
三兄弟と違い、ブーケに触れながらも一輪の花を得ることがなかったベルナード。表向きは気にしていないそぶりだが……。
実はがっかりしていた。
「ベルナード卿」
披露宴の席も偶然に隣になったフィオナが、ベルナードに声を掛けた。
「あ、はい。何でしょうか」
「幸運のお裾分けです」
「!」
フィオナは、偶然にも手に入れることになったブーケの水色のリボンをほどく。そしてベルナードが付けているブートニエール(男性用のコサージュ)にそのリボンを結わきつけた。
「! いいのですか!?」
「何なら、ブーケごと入りますか?」
「! それは手に入れられなかった未婚令嬢から抹殺されそうなので、遠慮しておきます」
微笑むフィオナにベルナードは「ありがとうございます」と笑顔になる。
襟足が長いホワイトブロンドにエメラルドグリーンの瞳。笑顔になるとえくぼができ、とても朗らか。普通にしていればモテるはず。
だがライルの影響を受け、脱・童貞は自分の愛した女性に捧げたいと、乙女な心を持っている。既にライルは恋愛勝ち組の道を進む中、ベルナードは……。
そんなベルナードを微笑ましく眺めている女性がいることに、果たしていつ、気付けるのか!?
何も気づいていないベルナードは、今日も恋愛街道を迷走する。
頑張れ、ベルナード。
負けるな、ベルナード!
お読みいただき、ありがとうございました!
兄貴に幸せの兆し……!?
【お知らせ】
昨年の今頃も「冷やし中華始めました」ならぬ
「新作始めました」と言っていましたが。
はい!今年も新作スタートです☆彡
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