【特別編】LoveLink Week(おまけ)
愛する女性。
片想いしている女性。
感謝を伝えたい女性に。
ハートのペンダントトップを贈ろうというイベント――「LoveLink Week(愛の絆週間)」。
ライルは自分の嫁が主催しているイベントなのに、変装して買いに行くと言う。
堂々と買いに行き、プレゼントすればいいのにと指摘すると、ライルはサプライズの重要性を説いた。
そうなのか!?
女性はそんなにサプライズが好きなのか……?
そう思っていたら。
「ベルナード卿、こちら、若奥様から。なんと手作りですよ」
アイリの侍女であるフィオナが、俺の目の前に箱を差し出した。
「これはもしかして……」
「『LoveLink Week』の対となるイベント、『RE:LoveLink Week』。とあるお客様の声で始まりましたよね」
そこでフィオナがしたり顔で自分を見るので、内心でドキリとしてしまう。
ライルがアイリにLoveLink Weekでペンダントを贈った翌日。
実に清々しい顔で朝食の席に登場したのだ。
爽やかな表情をしているのに。
アイリを見る時には情熱的な視線を送る。
きっとLoveLink Weekが上手くいったのだろうと思った。
そのことに喜びつつ、なんとなくLoveLink Weekのペンダントが気になり、昼休憩でカフェに行った際、ショーウィンドウを眺めていた。すると店員に「リサーチに協力いただけますか?」と声を掛けられ、うっかり応じてしまい……。
『……LoveLink Weekのペンダントを妻に贈った主は、どうやら大変アツアツの夜を過ごした様子。正直、羨ましいです。自分も愛が欲しい……。女性からの愛のギフト、待っています……』
なんて回答してしまったのだ!
とにもかくにも『RE:LoveLink Week』というイベントでは!
LoveLink Weekで男性からギフトを贈られた女性達が、その喜びの気持ちをRE:LoveLink Weekで男性へお返しする。それだけではなく、女性から男性へ感謝のギフトを贈るイベントとして、先日新たにスタートしていたのだ。
「この手作りチョコレートは、若奥様が『RE:LoveLink Week』として、サプライズで旦那様にプレゼントされるため、作られたんですよ」
「なるほど!」
「ベルナード卿にもぜひ食べさせてと、若奥様が言っていたんです。良かったですね、ベルナード卿」
これに俺は目から鱗が落ちるだ。
サプライズは……なんて嬉しいのだろう!
ライル……娼婦が言っていたことは、嘘ではない!
だって今、自分は嬉しくて仕方ないのだ!
「いいんですか!?」
「ええ、どうぞ。両方ともカシスリキュール入りの、ビターチョコレートとミルクチョコレートです」
「ありがとうございます!」
死を意識するような戦場で過ごした日々もあるのに。アイリの手作りと聞き、感動で手が少し震えている。
まず、ミルクチョコレートを食べてみると……。
「甘い……。カシスリキュールの甘さとミルクチョコレートの甘さが……」
「ベルナード卿、泣いています!?」
「! まさか」
そこで慌ててビターチョコレートを口に入れる。
「あっ……」
「!? 泣いていますよね!?」
「……だって、このほろ苦さ……。まるで……これは……大人の恋の味じゃないですか……!」
それはなんだか手の届かない令嬢に恋に落ちた時のような、甘く、ビターな味わいだった。
「……ベルナード卿は泣く程喜んでいたと、若奥様に伝えておきます」
フィオナがアイリに伝えたら、それは……ライルが知るところになる。
アイリの手作りチョコレートを泣きながら食べていたと、ライルが知ったら……。
いろいろいじられそうだが、仕方ない。
実際……涙は出ているのだ。
そこで俺はハッとする。
そうだ! サプライズがいいと分かった。
ならば自分も……!
懐中時計を取り出し、時間を確認する。
間もなく夕食の時間だが、アイリのお店『ローズ・ジュエリー』は18時まで開いている!
「あ、ベルナード卿、どうされたのですか!?」
驚くフィオナの方を一瞬見て、手を振ると、ダッシュで店まで向かう。
屋敷の一角に店はあるのだが、遠い!
何せこの屋敷、元は王都の一等地にあるホテル。
巨大なのだ!
ということで閉店ギリギリセーフで間に合い、LoveLink Week用のハート型のペンダントトップと、それに合わせたペンダントチェーンをゲットできた。
「よっしゃ! 手に入った!」
思わず喜びの声を上げると、近くにいた令嬢達がクスクス笑っている。
これには少し恥ずかしくなり、LoveLink Weekのリボンがついた紙袋を隠すように持ち、歩き出して――。
そこで重大なことに気が付く。
……勢いで購入してしまった。
女性はサプライズを喜ぶと分かったから。
だがそもそも。
このペンダント、誰のために買ったんだ……?
ベルナード・フィン。
ライルを心からリスペクトし、上級指揮官の職を辞し、彼の従騎士になる道を選んだ、ちょっぴり変わり者。楽をして生きたいと言いつつ、主であるライルのため、例え火の中水の中でも厭わない、実は熱血漢。
襟足が長いホワイトブロンドにエメラルドグリーンの瞳。笑顔になるとえくぼができ、とても朗らか。
普通にしていればモテるはず。
だがライルの影響を受け、脱・童貞は自分の愛した女性に捧げたいと、乙女な心を持っている。既にライルは恋愛勝ち組の道を進む中、ベルナードは……。
今日もベルナードは恋愛街道を迷走中。
頑張れ、ベルナード。
負けるな、ベルナード!
お読みいただき、ありがとうございます~
やっぱりこうなるベルナード!
いじりがいがあるなぁ(笑)
ということで筆者が楽しみたくて書いてしまったおまけですが。
読者様もくすりと笑えたら嬉しいです☆彡
『宿敵の純潔を奪いました』でも番外編を公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n6514jw/
主人公たちの溺愛編を良かったらご賞味くださいませ。
さらに『ボンビー男爵令嬢は可愛い妹と弟のために奮闘中!』は完結しました!
https://ncode.syosetu.com/n2333ju/
この機会に一気読みはいかがでしょうか~!?
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良かったら遊びに来てくださいね~