【特別編】LoveLink Week(4/6)
「若奥様、大盛況ですね!」
「ええ、まさかこんなに反響が出るとは思わなかったわ!」
LoveLink Weekの第二弾として、同時進行でスタートした『RE:LoveLink Week』は……とんでもなく大成功。カフェではクッキーやマカロンは勿論、カシスリキュール入りのビターチョコレートとミルクチョコレートが飛ぶように売れた。
チョコレートは高級品であるが、LoveLink Weekは身分関係なく楽しめるイベントにしている。よって『RE:LoveLink Week』で提供するチョコレートは、通常より、うんと価格を抑えて販売することにしたのだ。しかも一粒単位で買えるようにしたところ……。
平民がまず飛びついてくれた。
普段、なかなか食べることができないチョコレートが、一粒から手に入る!――ここで人気の第一弾の火がつく。次に貴族達。『ローズ・ジュエリー』に買い物に来ていた貴族達に、試作品を提供したところ「美味しいわ……! 甘酸っぱい味わいが癖になります。旦那の分だけではなく、自分の分も欲しいわ……」となり、実際に販売をスタートすると、喜んで購入してくれる。
こうなると『ローズ・ジュエリー』とカフェは、連日ごったがえす賑わいで、邸宅の外にまで行列ができてしまう。これには王都警備隊が驚き、国王陛下まで興味を持ち……。
カシスリキュール入りのビターチョコレートとミルクチョコレートの献上を求められた。そして献上した結果。
「LoveLink Weekは実に素晴らしいイベントだ。寒い冬に心がとても暖まる。男女ともに、身分も関係なく楽しめるのも、実にいい。国として創設者であるウィンターボトム侯爵夫人に栄誉を授け、その名は王国史の一頁に刻むと約束しよう。そして褒賞もとらせる。その代わりとして、できればこれは国を挙げてのイベントにしたいが、どうだろうか?」
そんな提案をされたのだ。
これにはもうビックリ!
歴史書に自分の名が残るなんて……。
ライルやフィオナ、騎士団や使用人のみんなも喜んでくれているので、国王陛下の提案を快諾。
すると……。
2月に入った王都は、『LoveLink Week』でどこのお店も大賑わい。
それぞれのお店が『LoveLink Week』と『RE:LoveLink Week』用の商品を用意。その販売を始めた。
ただ、国王陛下からのお墨付きをもらっているのは『ローズ・ジュエリー』と併設しているカフェだけだ。そこはLoveLink Week発祥のお店ということで、人気は群を抜き、売り上げはさらにアップ。価格を抑えたカシスリキュール入りのチョコレートは、薄利多売のはずだったが……早々に利益をもたらしてくれた。
そんな最中。
私はライルにサプライズするために。自分でカシスリキュール入りのチョコレートを作ってみることにしたのだ。
屋敷のパティシエに頼み込み、ライルが宮殿で留守の間に、こっそり作り上げた。
コロンとしたハート型のチョコレートは、特注の木型で作った。
勿論、ビターなチョコレートとミルクチョコレート、その両方を作ったのだ。
それは……想像より大変だった。
料理は使用人に任せるのが当たり前。自分で厨房に立つのは初めてのことだったので……。
大変だったが、楽しくもあった。
なぜなら。
これを食べるライルを想像すると……。
間違いなく喜んでくれる。
ライルの笑顔を思えば、いくらでも頑張れる!
こうして完成したカシスリキュール入りのビターチョコレートとミルクチョコレートは、お店とは違う箱を用意し、綺麗にラッピング。
「若奥様、今晩、お渡しになるのですね!」
「ええ、そうよ。そしてこれ、味見用に作って残ったの。良かったらフィオナ、食べて頂戴。使用人のみんなや……そうだわ、ベルナードにも分けてあげて」
「まあ、ありがとうございます! 若奥様の手作りのチョコレートをいただけるなんて。嬉しいです!」
少し大きめの箱に入れたチョコレートを渡すと、フィオナは大喜びしてくれる。
そんな姿を見るにつけ。
頑張って作った甲斐がある。
「では若奥様、ディナーに向け、ドレスを着替えましょう!」
「そうね。お願い」
こうしてディナーのために着替えたドレス。普段とはちょっと違う。カシスピンクという、紫がかったピンク色の大人っぽいドレスを選んだ。
袖はフワリとしているが、身頃は体にフィットしている。
体のラインがくっきり出るデザインだった。
「若奥様、いつもより艶めいて素敵です。これは旦那様が……喜ぶと思います。いろいろな意味で」
フィオナが意味深に微笑むので、何だかドキドキしてしまう。
チョコレートもドレスも。
ライルの反応が気になる……と思いながら、ダイニングルームに向かった。