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第九話 血を飲む欲望

ゾーヤは家に帰ると早速、真里を呼んだ。3人がソファーで座っていると、真里は窓から入ってきた。

「早く来てくれたのは良いけどさぁ…」

ブツブツとゾーヤが言っているのを真里は気にしていなかった。それよりも、見知らぬ女の子に興味があった。

「何、この子?かわいい〜。えーっと、お名前は?私は『古寺 真里』よろしく〜!ゾーヤと同じ研究所で働いてるの!」

話しかけられた来はどうすればいいか分からなかった。結果、数秒間止まってしまった。

「え…ら、来です。」

戸惑って、モドモドしている来をみて、真里はぎゅっと来に抱きついた。

「だめだ、かわいさが止まらない〜!」

「おいおい、来がフリーズしてるじゃないか。真里!やめてあげろ」

そう言われた真里は顔を膨らめて来から離れた。

「ちょっとぐらい良いじゃない!って、この子はもしかして、もう1人の弟子?ゾーヤってばこんなかわいい子を選んだのね。見る目あるわね〜」

「はいはい、そんなのはどうでも良いから…。ちょっと今から来ちゃんとお話するからさ。外に桑一を連れ出して、面倒を見てくれるかい?」

「もー、分かったわ。桑一くんの面倒を見れば良いのね。じゃあ、楽しんで」

真里は少し顔を膨らめながらも、了解した。

「来ちゃん、こっちだぞ」

ゾーヤが手招きすると、来は大人しく部屋に入っていった。そんなやり取りの間、びくともしていなかった桑一は真里に連れ出された。


少し狭い部屋にゾーヤと来の2人で入り2つの回転椅子にそれぞれ座った。来は回るのが新鮮だったらしく笑顔で回っていた。ゾーヤから切り出した。

「あの支部長って言うおっちゃんから聞いたんだけど、来ちゃんは前の家族へ恨みがあるのかい?」

「うん、そうだよ〜」

回りながら来は答えた。

「前の家族はどんな感じだったんだ?」

来は回るのをやめた。

「うーん、前の家族はお母さんとお父さんだけだったんだけど、わたしはさびしかったの。学校のみんなは新しい服を来てるのに私はずっとボロボロで、勉強ができないとなぐってきたり、わたしをあいしてくれなかった。で、クタクタだったの、くるしかったのだから、お姉ちゃんが来なかったらどうしてたんだろう…とにかく、あの2人は許さないの…わたしはヴァンパイア、ヴァンパイアだから、ヒトなんて怖くないもん」

来の話を聞きながらゾーヤは考えを巡らせていた。

(うーん。どうしたものか。この考え方が悪化するとこの子が気づく前に死んじまう。どうにかしないと)

『ピンポーン』

(ん?何か頼んだっけな?)

そう思いながらもゾーヤは玄関に向かった。配達員が持っていた段ボールを受け取りリビングで来が見る中で開けた。すると中には朝に見たのと同じような血のパックが入っていた。

(誤配達かよ。びっくりしたじゃねーか)

気づいたら、箱の中にあった血のパックが消えていた。不思議に思ったゾーヤがふと、来の方を見ると、来が血をおいしそうにがぶ飲みしていた。

(まずい、飲みすぎてる…)

来の体が震え始めた。床には空の容器が転がっていた。ゾーヤが呆気にとられてる間に来は血をほとんど飲みきっていたようだ。

「ふふ…」

そう微笑んだ来は突然、糸を失った操り人形のように崩れた。ゾーヤは駆け寄ろうとしたが、体が鉛のようになり動けなくなっていた。

(このままじゃ…)

操り人形は新たに糸を手に入れたのかおどろおどろしく腰を曲げて立った。操り師が糸を引いたのか背筋を伸ばした。すると、背中から真っ赤かな羽が生えた。赤い液体が滴りそうな羽だった。人形は壁に指を刺し壁を切り開いた。その裂け目の先は真っ暗だった。その中に来は吸い込まれるように入っていった。

(ワープキーを作っちまったか…まずいな。噂にはきいていたが、本当に血の飲みすぎで欲望状態になるなんてな…)

ゾーヤが改めて裂けた闇を見ると、さっきよりも小さくなって元通りになろうとしていた。考える間もなくゾーヤは暗闇に飛び込んだ。

(来の欲望がもし親を殺す事だったら、絶対に止めないと…そうしないと、あの子は、死んじまう!)

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