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第十一話 まっかかになったのに雨は降り続けた

昔、昔。とある世界大戦の数年前のとある国にゾーヤという女の子が生まれました。その国というのはあのスターリンという身勝手であり、何かに苦しみ続ける男の支配する国でした。まぁ、知らないと思うけど、その時の国名は伏せておくよ。話としてはあんまり関係ないからね。


 その女の子は少し裕福な家の子でした。そして、その子はとても頭がよかったのです。その子の通っていた学校で彼女は神童のように扱われていました。特にその子は物理学が得意でした。周りにはその才能に嫉妬する者もいました。また、恐れる者もいました。それが、彼女の両親でした。小さい頃は少し頭の良い子だと思い、褒めていた両親は段々と彼女が成長していく中で、自分達では理解できない知能を持っていると気づく様になりました。すると、ころりと態度を変えて「気持ちの悪い子だ」と平気で本人の前で言うようになり、日常的な会話をしなくなりました。そんな両親の心持ちの変化の理由など、大人に負けない頭脳をもつ彼女でも心はまだ子供なので、わからなかったのです。年を重ねる内にその親による実質的な暴力的行動は悪化する一方でした。


 そんな頃、彼女の恐ろしい知能の高さは国のトップにまで知られるようになりました。その彼女の存在を知るとスターリンは早速、彼女を国の研究者にしようと手筈を整え始めました。そして彼女が12歳の時に彼女の家にスターリンからの手紙が来たのです。紙には一言「ゾーヤ、来い」とだけ。その便りを見た両親は大喜びでした。おそらく、彼女を合法的に追い出す文言ができたからでしょう。両親はゾーヤにこの事を伝え急いで準備を始めました。両親に苦しめられてきたゾーヤは家族から解放される喜びはありました。しかし、底知れない不安を感じていた。そして次の日には迎えがきて惜しむ間もなく、ゾーヤは親元を離れたのでした。


 出発して2日経って、とうとうスターリンのいる建物に着きました。ゾーヤはだだっ広い部屋で待つように言われました。部屋にあった椅子に座って1、2分でそこまで背の高くない男が現れました。その男はスターリンと名乗って、ゾーヤに話しかけました。ゾーヤは素直に名乗りました。その後スターリンは淡々と優しく、ただ隠しきれない何かを持って、彼女のこれからについて語りました。彼曰く、彼女がやらなければいけないのはただ一つ。研究をすることでした。スターリンは武器を作ってもらいたそうな素ぶりを見せていましたが、強制はしませんでした。まぁ、信頼を得たかっただけだと思うけどね。そして、食事の時間や就寝は自由な事や研究部屋は1人専用な事、あと、研究結果をどんな形でも1ヶ月に1回報告する事などを彼女は聞きました。そのあと、彼女の部屋に連れられました。部屋は教室より広く、実験用器具がいくつもあり、学校よりも環境が整っていました。少しワクワクしました。こんな部屋で実験や考察ができると思うと1ヶ月に1回の報告なんか面倒くさいなと思っていた邪心は消え去ってしまいました。ひと通り説明が終わり、夕食を食べて、始まりの日は寝て終わりました。


それから彼女は研究を続けました。最初は粒子などの国が発展するのには必要なさそうな研究をしていました。でも、研究結果を報告していくうちにスターリンの顔が濁っていくのに彼女は気付きました。そして、気づいたら彼女は武器の研究にのめり込むようになりました。そう、彼女は親に嫌われた経験から同じことは本能で避けようとしていました。ただ、武器は彼女の得意としていなかった分野でした。そのため、段々と行き詰まっていました。そんな中、ある発表の日が来ました。彼女はその日もうまくいかない武器の研究報告をしに初めてあった部屋で待っていました。スターリンは不機嫌な様子で部屋に入ってきました。気づいた彼女は無視して報告を始めました。不機嫌な理由に触れるのが怖かったのです。報告が進むほど、顔が冷めていく彼は手足が震え始めていました。報告が終わる頃には鋭い目で彼女を見ていました。

「もう、こんなつまらない研究はやめてくれ。これ以上続けるなら出ていってもらう」

そう彼は言いました。彼はその言葉が彼女を縛り付けると確信していました。そして、彼の思惑通り彼女は過去を怖がり、自由を捨ててしまいました。


 縛られた彼女は後に大きな影響を与える人類災厄の兵器のであり、人類のエネルギー問題をかえる発明を始めました。そして彼女はとうとう、才能を開花させ、着々と整えていきました。スターリンに飼われて放し飼いされなくなってからたった7年で。


 彼女は世界を変える兵器のために時間を費やしました。しかし、国は戦争に忙しくなり原料が簡単に手に入らないそんな兵器に興味を持たなくなってしまっていました。そしてある日、彼女は倒れてしまいました。日々の研究で擦り切らした体、スターリンの顔色を伺う様に生きていた生活が彼女を壊してしまったのです。彼女が目が覚めるとそこはベッドの上でした。看病をしていた人曰く、彼女は1週間も倒れていたようでした。


 ベッドで横になっていたら、彼がやってきました。目を見て彼女は嫌な予感がしました。

「もう、用無しだ」

そう言って彼はさっさと病室からでて言ってしまった。


 彼女にとって恐怖だったのです。家に戻る事が。


 2日後には家に戻ることになりました。


 家は8年経っても変わらず嫌いな空気に包まれていました。


 両親の彼女への暴力はひどくなっていました。


 厄介者がまた帰ってきて、いやなのでしょう。


 そしてある日、


 「お前のせいで家はメチャクチャだ」


 そう母親が言ったとき彼女は初めて怒りました。


 メチャクチャなのは自分なのにと。


 怒りに任せて暴れました。


 制御していたシステムはどこへやら。


 気づいたら両親を踏みつけて鏡の前で立っていました。


 まっかかになったのに…


 でも、晴れなかったのです。


 振り続ける雨は。


 それどころか、夜になっていったのです。


 そして彼女は明るくなるまで待ちました。


 目を閉ざして。

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