-----聖女の結婚-----
すみません、投稿予約をいじっていたら、本日2話投稿になってしまいました。
この前に1話投稿されています。
すっかり、人間的な甘すぎる砂糖水の味に慣れてしまっていましたが、故郷の花の味はやっぱり落ち着きます。
花と林を行ったり来たりしているうちに、空が急に暗くなって雨が降って来たので、林に入って雨宿りをしました。
その時、子供の頃そばに居てくれたお兄さんのように優しい人が居て、しばらく話をしていたら、<この人と一緒になりたい>って思いました。
お兄さんもそう思ってくれている気がして、私のことを見つめてくれていました。
その後も、しばらくたわいもない会話が続いていましたが、だんだん自然と笑顔になってしまう自分がいました。
お兄さんも、なんだか笑顔で何をどう話したら良いか分からなさそうな雰囲気が伝わってきます。
何も話さないで、隣に座っていたら
沈黙のあと、突然「好きです」って言われました。
いきなり直球の言葉を言われたので、反射的に言ってしまいました。「ダメです」
<嗚呼何を言ってるんだろう私・・・>
でも、お兄さん一瞬俯きかけましたけれど、諦める様子ではなく
真剣な表情で「どうしてもダメですか?」と聞いてきました。
頭が真っ白になってしまって、何も答えられずにいたら
やがて、「一緒になってください」と彼が言いました。
一気に顔が沸騰してしまって、何も言えなくて、また逃げ出そうとしたんだけど、前に蜘蛛の巣に捕まった彼の事が思い出されたので
絶対にこの人と一緒になるって言う思いで、逃げる事を思いとどまりました。
じっと彼のことを見つめて頷くと、私の手を取って口づけをしてくれました。
完全に硬直してしまって、口をパクパクするだけでいたら
彼にそっと抱きしめられました。
ほんのわずかな時間のはずなんだけど、何時間にも感じられて、意識が遠くなりかけていたら周りにいた皆も私達の様子に気が付いたようで、
「「「おめでとう」」」
「よっご両人幸せになっ」
「よかったな〜」と言ってくれました。
祝福を受けて、真っ赤になりながら二人で仲良く手を繋いだまま空を飛び始めました。
とっても幸せな飛行でした。
これが恋って言うものなのかしら、私結婚するんだ、っていうか結婚したのかな?
うふふふふふふ、幸せだわ~♪
生まれて初めての感情、幸せを全身に感じながら、ゆったりと空中でダンスを何分も続けました。
二人で密着したまま空をふわふわと飛んでいました。
全ての景色が美しく見えて、ここは天国かなって思ってしまいました。
どんなに美味しい花の上を飛んでもこんな気持ちにならなかったのに、思考は止まってしまって目の前にいる相手に何も言えずただ一緒に居ました。
ずっとこのまま密着していたいなぁって思っていたのに
やがて、お兄さんは私と離れて、ふらふらしながら、どこかに飛んで行ってしまい戻って来ませんでした。
ん? もしかして私一人になっちゃった?
幸せな家族を夢見てたんだけどなぁ、一気に突き落とされた気分だったけれど
今度は猛烈にお腹が空き始めました。
「ああ、花の蜜じゃ物足りない。」
「お腹空いたよ~」
恐ろしい事にあの火箸で叩いてきた人間の臭いにくらくらとしてしまっている自分がいるのです。
人間の居る場所を目指して飛んでいきました。
そばには同じように「お腹空いた〜」と言っている女子が何人も飛んでいました。
恐怖で一杯なのに、なぜか人間に惹かれているのです。
恐る恐る人間の元へ近づいて行きます。
神社で出会った人たちは、本当に特殊な出会い方をしていたから安全だったのに・・・
その時、「危ないこっちに来て」と声がしたので、急反転して声の方へ飛びました。
「私はムスティ、まっしろなんて珍しいわね、あなたは新人さん?」
「あっ、あのっ、以前洞窟の中で声を掛けて頂きました。トゥキスモですっっっ。」
「あ〜あのお嬢ちゃん、綺麗ねぇ、大人になったのね。
肩もみして貰ったっけねぇ、あれからすっごく調子いいのよ、誰よりも早く飛べるようになったしね、おかげで長生きさせてもらってるわ、それじゃ一緒に飛びましょう」
「はい、あの 赤ちゃんたち元気でしたよ」
「あら、見ててくれてたのありがとう」
一緒に飛びながらムスティさんが、人間の家の隠れやすい場所とか、開いたり閉じたりする出入り口の事やぶら下がっている黄色いリボンには近づいていけない事、ブタの形をした煙の出る置物から煙が出ていたらそばに居ると死ぬ事などを詳しくレクチャーしてくれました。
人間の顔の周りを飛ぶと気が付かれやすいからなるべく背中側を飛んだ方がいい事や、服の上からだと上手く行きにくい事、人間に接触する時間は短時間にとどめておくこと、とにかく生き延びることが最重要だっていう事を口酸っぱく教えてくれました。
そして、ムスティさんが人間にくっつくお手本を見せてくれました。早業で3回の接触、人間は大声で喚きだしました。
そして奥に行くと、煙の出るものを持って来ました。
「トゥスキモ逃げましょう、あの煙のそばに居ると皆死んじゃうのよ、危険だから今夜は退散」
「でもっブタの格好してないです」と言うと、「ブタの中にあれが入るのよ、もう早く出なさい死ぬわよ」
ムスティさんはそれだけ言うと上手に隙間を出て行きましたが、私は出られませんでした。
どうしても、人間が気になって仕方なかったんです。
急にさっきまでの空腹感が戻ってきました。
空腹感で頭がおかしくなっている自分は既に恐怖心すら捨ててしまっているようです。
煙の無かった廊下からまた別の煙がある部屋に入ってしまった為に、さらに頭がくらくらしてきました。
人間に気づかれない様に腕にとまると麻酔剤を吹きかけてストローを突き刺し花の蜜の要領で吸い始めました。
<ああ・・・満たされる・・・>
<もっと・・・もっと・・・>くらくらとする頭の中には、子供たちに囲まれて幸せに過ごす自分の姿が描かれていました。
<子供たちには沢山いっぱい教えてあげるんだ、この世界の事を・・・
そして、みんなにも回復魔法を教えてあげるんだ>
気が付くと、人間が向かっている画面から、声がしている。
「「聖女様、回復魔法をかけてあげてください まっ白な聖女服を着た聖女が回復を唱えると、光に包まれて見る見るうちに怪我が治ったのです」
あ~、この話を聞いたから私もまっ白だし回復魔法を使おうって思ったんだわ
「ね~ 亜希って本当に 転生した聖女様の話好きだよね~、また流してるでしょ、こっちにも聞こえてるよ~、そうそう関係ないけどさ、なんかケガとか治してくれる蚊がいるみたいだよね」
「居る訳ないじゃん、あんなの合成だよ~」
「そっか~ あははは信じちゃったよ~ 馬鹿っぽ~い」
幸せな未来や今まであった事を思い浮かべながら、人間の腕に立って汁を飲んでいました。
そうだ、この人もお腹調子悪そうだし回復を掛けてあげよう「回復」
ピカッと光が出た瞬間、私は激しい衝撃を受けました。
ばちっ
「あ~ ムカつく、蚊に食われた~ 血吸われた~ 痒い~ 蚊取り線香付けてるのに~、ボウフラ対策してるのに~ 痒いよ~」
少女は蚊に刺されたところに虫刺されの薬をつけながら
殺虫剤をスプレーして網戸の確認をするのでした。
「ふぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~
本当に危機一髪だったわ・・・
な~んで、あなた直ぐに外に出て来なかったの」
蚊に刺されて、蚊取り線香を炊こうと思った時に、この終わりを思いついて書き始めました。
もっとあっさりとした超短編のはずでしたが、トゥキスモが色んな事を知りたがっていて、
百足さんを治していくうちに、本当は終わらせたくなくなっていました。
トゥキスモちゃんは読んでくださった皆さんの事を元気にしてくれると思います。
-------------9月5日 加筆---------------
皆さんが読んでくださっている事を知ったら 余計にバッドエンドじゃ嫌だなって思う気持ちが沸いてきました。 という事で、バッドエンドは回避する事にしました。
トゥキスモちゃんの活躍もう少しだけお付き合いください。