------ 聖女の大冒険-----
皆さんに読んで頂けて、嬉しく思います。
本当にありがとうございます。
当初 バッドエンドのつもりでしたが
ちょっとだけ 変えようと思います。
急に強い風が吹いて、私は吹き飛ばされてしまいました。
そこへ買い物中の人が通りがかってその人のカバンの中に落ちたので
しばらくカバンの中で風から避難する事にしました。
お腹が空き過ぎて眠くなっていたので、ウトウトしてから外に出ると、そこは綺麗に整頓された林でした。
赤い鳥居の下をくぐって奥の方へ行くと水があったので、そこで休憩をしました。
小さな花が咲いていたので、ありつけたとばかりに蜜を吸いました。
暫くそんな事をしていると、良く知った人がやって来ました。
前に肩を揉んでもらっていた人間のお母さんでした。
私は、お母さんに回復をかけてあげなきゃって思いました。
でもトゥキスモが近づこうとすると、お母さんは大きく2回もお辞儀をしてから手をパンパンと叩くので、なかなか近寄れませんでした。
しばらく賽銭箱の向こう側で様子を見ていると、お母さんはじっと大人しくなりました。
私は気が付かれない様にそっと人間のお母さんの肩に静かに着地しました。
初めて肩もみを知ったのはこのお母さんの肩を揉んでいるのを見た事からでさ、そこで親子の愛情を知ったんだよね。そんな事を思いながら
恐くて逃げ回っていた筈の人間の肩に、ストローを刺して「回復」を唱えました。犬や猫にはトゥキスモの声が聞こえるのに人間には聞こえないのが不思議です。
「いたっ」
手が飛んできましたが、ギリギリの所で叩かれずに済みました。
イライラした顔をしていたお母さんが、ふと肩を回し始めました。
「あら? どうしてかしら、肩こりが治ったわ、お参りをしたからね、ありがとうございます」
トゥキスモの貢献は、お参りに取られてしまいました。
しょんぼりとした気持になって手水舎に向かって行くと
複雑な表情の夫婦に声を掛けられました。
「あの・・・もしかして あなたが肩こりを直したのですか?あなたから光が出て、そうしたら肩こりが治ったと言っていたのを見たのですが」
私は声を出して「ええ~わたしのことわかるんですか?」と
驚いて返事をしましたが、人間には聞こえないのが分かったので、小さく円を描くように飛んで見せました。
女性のお腹の辺りから、何か嫌な気配を感じたのでお腹の周りをぐるぐると飛んでみました。
すると、女性は涙をこぼしながら、「すみません私を治して頂けませんか?」と言いました。
男性も「私からもお願いします。妻を治してください。」
私は困惑しながらも、上下に飛んでみました。
私はお腹の上にとまって、回復を唱えストローを刺しました。
驚く事にストローからはっきりとわかる光が出ました。
私は一気に疲れて気絶してしまいました。
気が付くと、私は知らない部屋でティッシュペーパーで作ったベッドの上に寝かされていました。
夫婦は私が目覚めた事に気が付くと、水の入った容器を持って来ました。
「砂糖水ですが、飲めますか?」
私は砂糖水にストローを突っ込んで飲んでみました。
こっ・・・濃すぎる・・・くどいけど、激烈美味しい。
こんな濃い味の物を飲んでいたら、花の蜜を飲んでも味が分からなくなってしまうかも・・・知れないです。
濃すぎて・・・水を飲みたい・・・
折角の好意なので有り難く砂糖水を飲ませて頂いたあと、流しに行ってお椀に溜まっていた水を飲んでから、また奥さんのお腹の上に止まります。
そしてストローを刺して回復を唱えては気絶すること十数回
やっと、嫌な感じがしなくなりました。
砂糖水にも慣れてきたと言うか、その度に私が水を飲んで中和してるのを見て、砂糖水は大分薄くしてくれました。
完全に嫌な感じがなくなったので、奥さんのお腹の上で、グルグルと回って飛んで見せたら、二人顔を見合わせて喜んでくれました。
その他にも旦那さんの腱鞘炎や火傷の痕を治していたら、次の日には、旦那さんや奥さんのお友達も治してほしいとやって来るようになってしまいました。
皆にお礼を言われて嬉しいし、この家もとても快適なんだけど、
人間以外の誰にも会えないのがちょっと寂しく感じられていました。
数日後、医者へ検査に行くと言って二人が出かけようとしたので、奥さんのカバンの中に入りこんで、一緒に家を出ました。
何回も乗り物を乗り継いで、変な臭いの建物に入り煩い機械のある部屋に奥さんが入って行きました。
カバンを開けたら私が入っていたので、奥さんはとても驚いていましたが、一緒に結果を聞きましょうと言ってくれました。
水も砂糖水も無いので、お腹がとても空いてきました。
視界に花が見えたので、ふら~っと花に飛んで行ったら、造花でした。
絶望に打ちひしがれた気分でした。
お腹は空いていましたが、何故かここは沢山具合の悪そうな人が居ました。
3人に回復をかけたら、もう体力が完全に無くなってしまったので意識を失う前に、旦那さんのカバンに戻らなくてはいけません。
すると、パチンとすぐ傍で手を叩かれました。
まっ白な服を着た女性が、嫌そうな顔をして私を睨んでいます。
「あっ あの~あなたも聖女ですか?」
人間に私の声は聞こえないけれど、聖女だったら今の私に回復をかけて欲しい
そう思っているけれど、なんだか殺気が凄いです。
確実に私を殺そうと思っている気がします。
最後の力を振り絞り旦那さんの方へ逃げました。
失神寸前ですが、旦那さんはスマホに夢中で私に気が付いてくれません
スマホの上に乗ったら、指で押しのけられてしまいました。
イタタ私の身体はデリケートなのよ。
ふてくされて、旦那さんのカバンに入ると飴玉が一つ入っていたので
袋をずらして、ちょっとだけ舐めさせてもらったら寝てしまいました。
暫く寝ていたら「白い妖精さん」旦那さんの声で起こされました。
「奇跡のようです、完全に腫瘍が見当たりません、血液検査の結果も全て健康そのものです。
当分は、定期的に検査に来て頂きますが、手術はしなくて良いです。良かったですね。」
白い服を着た男の人が、淡々と夫婦に話していました。
あの人白い服を着ているわ・・・もしかして魔導士なのかしら、でも私の声は聞こえないだろうし、さっきの聖女服を着た女の人は私を殺そうとしてきたし、あんまりお話したい雰囲気の人じゃないなぁ
どうやったら魔導士かどうかを確認できるかしらと考えていたら、二人はさっと部屋を出てしまいました。
奥さんと旦那さんは涙を流しながら、トゥキスモに何度も何度もお礼を言いました。
そうして騒々しい場所でしばらく休んでから
「さぁ家に帰ろう」と言って変な臭いのする建物の外に出たましたが、
とたんに強い風に吹き飛ばされてしまいました。
「ああ~なんでカバンの口締めてなかったの?ちゃんとお礼してあげてないのに
、もうあの子にもう会えないの?」
「きっと役目が終わったんだよ、さようなら」
夫婦はずっと手を振ってくれていました。
その日のSNSのトレンドは「幸福を呼ぶ綿毛」「白い妖精さん」真っ白な埃っぽい何かが人の肌の上で光っている写真と共に、肩こりが治りました、腱鞘炎が治りました。病気が治りましたというコメント。
何人ものカバンに隠れたりしながら移動しているうちに
なんとなく記憶のある匂いがしてきました。
男の人の首元から離陸して、バスから外に出ようとした時、「あれっ白い妖精さんじゃない?」「きゃ~本当に真っ白」「え~おばあちゃんを治して~おねがい」「あれ肩凝り治ってる」バスの中がパニックになってしまいました。
バスから飛び出して、疲れたなぁとフラフラと飛んでいると
ここら辺は、生まれ育った家の近くだわ♪と気が付きました。
嬉しくなって飛んでいると、三毛猫が塀の上を歩いていました。
「こんにちは、私の事覚えてますか?」
久しぶりに会った三毛猫は「忘れるもんかい」と言ってくれました。
私は嬉しくなって、神社でお母さんの肩こりを治した事
夫婦の病気を治した事を話しました。
三毛猫は表情を変えずにずっと話を聞いてくれていました。
「それにしても、良くまぁ無事に帰ってこられたもんだよ、あんた凄いな」
と言って家まで先導案内してくれました。