表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女トゥキスモの恋  作者: 水無月 一夜
4/10

----- 聖女大活躍 -----

夕方になりぼーっとしていると、人間の怒鳴る声が聞こえました。

見に行ってみると、百足さんが踏みつぶされていました。


「し・・・死ぬ」百足さんは身体の後ろの方が潰されていて藻掻いていました。

「あ・・・あのぅ」私は恐る恐る声を掛けました。

「なんだ、俺はもう死ぬんだ放っておいてくれ」百足さんは言います。

「良かったら私に治させてください」そういうと百足さんのつぶれた身体に近づいて「回復」と唱えました。


しばらく手をかざし続けていると、じわじわとつぶれた身体が戻り始めて、やがてすっかり元に戻り百足さんは動き始めました。

そして動いた百足さんの身体がトゥキスモに触れた途端、百足さんが毒液を吹き出しながら襲い掛かってきました。


「きゃぁ~」


「悪い悪い、あんたか 俺は目が見えねえから、触れたものはなんでも攻撃しちゃうんだよ。治してくれてありがとうな」

そう言うと百足さんは石の下に潜って行きました。


そこへ、人間がやって来ました。


百足に逃げられたと騒ぎながら手に持っていた袋と火箸で手あたり次第に叩き潰そうとしてきました。


私は慌てて、家の床下に逃げ込みました。

すると、苦しそうな声が聞こえてきました。


「どうしたんですか?」トゥキスモが声を掛けると、今にも消えそうな声で

「おいしそうな臭いにつられてやってきたら、罠にかかってしまったんだ。

もう30分も何も食べていないし、挟まれていて痛くて身体もしびれてきた。

もう駄目な気がするんだ。」


真っ暗な床下なので、私は以前物語で聞いた呪文を唱えました。「ライト」


床下が仄かに明るくなり、ネズミ捕りに捉えられたネズミさんが見えました。

ネズミさんに触れながら「回復」を唱えました。

するとネズミさんは元気になりましたが、まだネズミ捕りは放してくれません。


このネズミ捕りを壊せばいい事は分かりますがどうすれば良いのか分かりません。

ネズミ捕りに手を触れて「壊れろ」と唱えましたが何も起こりません


「壊れて」呟くように唱えてみましたが、やっぱり身体から力が出て来る感じもしません。

う~ん、少し考えてみました。「壊れるって回復の反対だよねぇ。・・・思いついた♪」

もう一度ネズミ捕りに手を触れて「復回(ふくかい)」どうだ!!!

何の反応もありません”ふくかい”じゃなくて、”くふいか”が正解かな? もう一度ネズミ捕りに手を触れて「くふいか」と唱えました・・・がやっぱり全く反応しません。


ネズミさんは、呆れたように言いました。

「魔法の事は全然分からないけどさぁ、壊したいんだったら、破壊(はかい)とかじゃないの?」

はかいなんて言葉ははじめて聞きました。

よしっ、ネズミ捕りに向き直して厳かに見えるように手を触れて「はかいし」と唱えると全く反応しません。


ネズミさんはふうとため息をつきました。

「はかいしは、死んだ人が眠る所、物を壊す事は()()()三文字だからね。」


そっか「はかい」って言うんだ勉強になったわ。


よしっ、もう一度手をついて「破壊」と唱えると、ネズミ捕りのバネが外れてネズミさんは自由になりました。


ずっと「ライト」の力を使っていたせいか魔力を使い過ぎたようでフラフラになってしまいました。

そこで「ライト」へ魔力を注ぐのをを止めると疲れ果てて、地面に倒れてしまいました。

その光景は白い綿埃が地面に転がっているようでした。


ネズミさんは「ありがとう」と言うととっとといなくなってしまいました。

その様子を見ていたゴキブリさんが、やってきて言いました。

「ねぇ、あなたまっ白で目立つわね。


疲れているだけだったら、目を覚ますまで見張っててあげるわ」

目を覚ますと、ゴキブリさんが喜んでくれました。

「良かったわ生きてたのね。ねぇ、私の子供たちも助けてもらえるかしら」

ゴキブリさんが聞いてきたので、一度花の蜜を吸って来てから、ここに戻ってくると約束をして、蜜を吸いに出て行きました。


前に吸った花はみんな枯れてしぼんでいましたので、別の花の蜜を吸いました。

今度は、<回復>を掛けながら蜜を吸ったので、多分今度は花が枯れずに、ずっとおいしい蜜を吸えるんじゃないかなぁ


そんな事を思いながら、急いで床下に戻ってくると

ゴキブリさんの姿がありません。

「あの~っ」

声を出したら、ゴキブリさんが戻って来てくれました。

「ゴメンね物陰に居ないと落ち着かなくってさ。」そんな事を言いながら

ゴキブリさんは、私を案内してくれました。


「ライト」を唱えて見えるようにしてみると、可愛いおうちの絵が描かれた紙の箱の中に、ゴキブリさんの子供が沢山捕まっていました。

 でももう、殆どの子が死んでしまっていました。


私は紙の箱の中にいる子供たちに向けて「回復」を唱えて、続けて箱に向かって「破壊」を唱えると、おうちの絵の描かれた箱がびりびりに破れて、生きている子供たちが無事に逃げ出しました。


 ゴキブリさんにお礼を言われ、美味しい飴玉を貰いましたが、大きすぎて持てなかったので、一口だけ舐めさせてもらい、床下を後にしました。


翌朝、昨日恋をしかかった彼が亡くなった事が一瞬頭をよぎりましたが、忘れることにして、気分一新で花の蜜を吸いに行きました。


昨日蜜を吸った花を見ると、みんな花が根本から膨らんでいました。

なんでだろう、花がみんなしおれてしまったわ、回復って唱えなかったせいかなぁ?あれぇ?回復を唱えながら吸った花もしおれて根元が膨らんでいます。


おかしい・・・まだ回復がヘタなのかな?


そのあと、何本ものしおれた花についた膨らみに「回復」と唱えてみましたが、何も変わりませんでした。


そのうち、後ろから「回復って何」と声がしました。

振り返ると柴犬でした。


私は自分は聖女で、回復魔法の練習をしているのだと教えると

柴犬はヘぇそうなんだと 確かにあなたはまっ白で妖精みたいだと言ってくれました。そして、少し考えるような顔をした後


「ねぇ、僕のお父さん足がずっと痛がってるんだけど治せるかな?」

と聞いてきました。

「分からないけどやってみるわ」治るかどうかは分からないけどこれは人助けのチャンスだと思った私は、即答しました。


柴犬について行くと人間の住処の中に、じっとしゃがみこんでいる柴犬がいました。「父さん、今ね治してくれる人が来てくれたからね、足が痛いの治してもらおうね。」

私は、どの足が痛いのか分からず右後ろ脚に近寄ると柴犬に言われました。


「違うよ反対の足だよ」

そうなんだと思って、左後ろ足に近寄って「回復」と唱えました。

でも何も起きませんでした。

今度は左足に着陸して「回復」と唱えました。


でも、やはり反応はありませんでした。

「ねぇ、君本当に聖女なの?何も起きないじゃないか」柴犬は不満そうに言いました。


 私はちょっとやけになってお父さんの左足に花の蜜を吸う時に使うストローを突き刺すと同時に言いました。「回復」


柴犬のお父さんは、チクッとした痛みを感じてとび上がりました。

「あっ、とうちゃんが立った」

ずっと座ったままだった柴犬のお父さんが数週間ぶりに立ち上がりました。

「おお歩けるぞ、痛くない」

「聖女さんありがとうございます」

「聖女様ありがとう」


柴犬はとっておきのお礼と言って、大きな骨を持って来てくれました。

私は、「そんな大きなものは持てないわ」と断りました。


その様子を見ていた三毛猫が言います。

「ねぇ、そこのまっ白なあなた、こっちにも治してもらいたい人が居るのよ」

そう言って、私は隣の家に案内されました。

 そしてやはり痛がっている黒猫を紹介されました。

「私はトゥキスモと言います、今からあなたを治そうと思います」と自己紹介をすると、黒猫は「右の腰がだるく関節が痛くて動けないんだよ」と教えてくれました。


黒猫の右腰に着陸して、ストローを刺して回復を唱えると

「痛ってぇ」と言いながら黒猫も立ち上がりました。

そして、少し行ったり来たりを繰り返してから、またしゃがみこんで言いました。

「なんか、だるさも痛みも取れたよ、普通に歩けるよありがとう」

様子を見ていた三毛猫が

「お礼になんかあげたいけど、あんた小さいから、私の持って来た食べ物食べられるかい?」


傍には、カリカリの猫エサ、干からびたトカゲ、死んだクモが並べられていました。

私は、お礼を言われて嬉しくなりましたが、どれもトゥキスモが食べられるものではありませんでした。お腹が空いて倒れそうです。


「お気持ちだけ頂きます、そろそろ花の蜜を吸いに戻ります」と言うと外に出て行きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ