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聖女トゥキスモの恋  作者: 水無月 一夜
2/10

優しいお兄ちゃんとカッコいいお姉さん

全6話、朝6時投稿予定です。

今日も朝から泳いでいると

「泳ぎが早いね」

私より大きなお兄ちゃんが声を掛けてきました。

<そうなのかなぁ>良く分からないけど、自分に声を掛けてくれたことが嬉しくって、それからはいつも、お兄ちゃんと一緒に泳いで、美味しい食事の採り方を教わりました。

お兄ちゃんは物知りで、どこが気持ち良く泳げる所だとか、巨大な魚に見つからない方法とかを教えてくれました。

ただ、トゥキスモは真っ白なので目立つから、気をつけた方が良いとは何回も言われました。


ぼーっとしながら泳ぎ回ると水が体の周りを流れて行くのが気持ち良くて、

風に吹かれて流されるのも、なんだか気持ち良くて、暖かな陽の光に照らされ続けていると水温が上がって、のぼせかけたこともあったけど、それも気持ち良くって、世界は気持良いことだらけだなぁ、なんて思いました。

毎日がとっても楽しかったです。夜になると綺麗な星が見えて、<いつか、あの星のそばに飛んで行ってみたいな。>そんな事を思いながら、ゆっくりと空を見上げて夜を過ごしていました。

「大人になったらね、空を飛べるようになるんだよ。」

お兄ちゃんが教えてくれたことで一番印象に残った言葉でした。

<空を飛べるって、私達にそんなことが出来るんだ。>

良く分からないけれどお兄ちゃんに聞いてみました。

「本当? どうしたら飛べるようになるの?」


「ん~ 知らないけど、前に羽の生えた女の人が教えてくれたんだ」

お兄ちゃんも、詳しくは知らないみたいでした。

「じゃぁ、私にも羽が生えるのかな?」

その女の人に会ってみたいなぁって思いながら、自分に羽が生えた姿を想像してみるけれど、正直ヘンテコな姿しか思い浮かびませんでした。

<ん~、不細工だわ。。。>

何回思い浮かべてみても、自分に羽が生えても美しくない姿しか思い浮かばないのでした。


<それとも、妖精のようになるのかなぁ? 素敵だなぁ お兄ちゃんは、大人は全然見た事無いけど、なんでその女の人と話が出来たのかな?>

色々と考える事はあったけれど、眠くなってきたから話は続かなかったです。

「どうかなぁ、詳しく教えてくれなかったからなぁ」

眠気が勝って来て、なんだか上の空でお兄ちゃんの話を聞いていると気もち良くなって寝てしまいました。


それから、お兄ちゃんが教えてくれた、空を飛べるようになるって言う話に、胸を膨らませ、その時が来ることを楽しみにして過ごしている自分がいました。


ある時、そばで泳いでいたお兄ちゃんが、じっと待ち構えていたおおきな奴に捕まってしまいました。

「誰か助けて~」

「トゥキスモ逃げろ!逃げるんだ!」

「やめて~、やめて~、お兄ちゃんを虐めないで」

おおきな奴がお兄ちゃんに嚙みついているのを、虐めていると勘違いしたのだけれど余りの恐ろしさに

なにを叫んでいるのかも分からない程めちゃめちゃに叫んでいました。

そして自分もやられてしまうって、本能が言ってるから必死で逃げる事しかできなかったのです。

「誰か~ 助けて~」

逃げながら叫んでも誰も助けてくれなくて、同じ池でずっと過ごして来た仲間なのに、誰が敵なのか分からない事が恐怖に感じられたのです。


お兄ちゃんの声が聞こえなくなった直後、空が暗くなり大雨が降りだして池の水が溢れだしました。

とにかく必死に泳いで、洪水になった水の流れに乗って逃げました、なんとか別の池にたどり着き助かったと安堵しました。

だけど、お兄ちゃんが噛みつかれている光景は目に焼き付いて離れませんでした。

自分だけで生きている気になっていたけど、そんな事無くって偶然助かっただけだったんだって、その偶然に感謝するしかありませんでした。


洪水のおかげで、だいぶ小さな池に移動してしまった私は、初めて会うお姉さんと二人だけでした。

「あんたまっしろだね、めずらしいね。これから着替えるからこの先会話も出来ないけどさ、ここ狭いけど、まぁよろしくね」お姉さんはさらっと挨拶をしてくれて、それまでの服を捨てて素敵なドレスに着替え始めました。

その様子は、なんかカッコ良いなって思いました。

<自分もあんなドレスを着るのかな?>

憧れの気持ちでお姉さんを見ていました。


その後ドレス姿になったお姉さんは、すっごく気難しくって、話しかけても返事もしてくれなくって、ちょっと音がしたりするとプイッと、背を向けて日陰に隠れてしまいました。<良く分からないけどお姉さんは思春期っていう奴なのかしら?>

一人ぼっちでやる事が無いので、久しぶりに回復魔法の練習を始めましたが、何十回頑張っても全然光りは出ませんでした。

この小さな池は陽が昇り出すと、直ぐに水温が上がってのぼせそうになるのでした。

そんな池での生活は、お姉さんが一言もしゃべらないでいるのもあって、私は孤独になってしまった事を実感して、なんだか寂しい気分で、物思いにふけっていたら、急に陽が遮られて暗くなりました。

 人間がやって来て、大きな声でわめきながら池をひっくり返してしまったのでした。私は幸運な事に、はねた水と一緒に小さな洞窟に入り込むことが出来たので無事に生き延びることが出来ました。

 そのあと人間は、恐ろしい事をしました、池に毒を撒いたのです。

池に残っていた仲間は、みんな動かなくなっていました。

 皆の悲鳴は聞こえなかったけれど、毒液を流すトクトクという音は耳にこびりついてしまいました。

皆を助けたくて洞窟から懸命に、回復魔法をかけ続けましたが、結局誰も助けられませんでした。

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