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ファイブカード  作者: アルト
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6 スペードのエース

6 スペードのエース



埃臭い数学準備室、夕日が赤く差し込んで、さっきのやつの炎みたいだな、と思った。


「さすがにあの放送があってから調べませんでした?俺たち悪魔憑きがどういう存在なのか。

俺は殺されたくなくて、結構活動しましたよ?」


「……お前、まさか3ヶ月前の長期休み」


「てへ」


「ズル休みかよ!おい!」


スパコーン、もう一度、頭に教科書をくらった。そういや学校に具合悪いって電話した時、タカハシ先生が出たなぁ。相当心配そうな声色だったっけ。


「まあそのズル休みで都会に出て、悪魔憑き同士の争いに巻き込まれて、色々わかりました。悪魔憑きには4種類います」


俺は炎男のカードを見せた。


「感情のままに罪を犯したハート」


次にカドヤ先輩のカードを見た。


「仕方なく、それしか道が残されてなく、罪を犯したスペード」


カドヤ先輩が目を見開いて、グッと唇を噛むと俯く。


「金銭目的で罪を犯したダイヤ、無知ゆえに罪を犯したクラブ。

俺たち悪魔憑きは魔法を自由自在に使えるわけじゃありません。魔法はトランプのカードとして普段は具現化してます」


「これがそのトランプか……」


「ですです。これがあの炎男のカード、どうぞ?」


タカハシ先生にハートの1を渡す。カドヤ先輩はスペードの1を握りしめて俯いたままだ。


「このカードを失えばその時点で悪魔憑きは死ぬ。これは、俺たちの命と魔法を一緒にしたやつなんです。悪魔憑きの証拠、罪の証。

誰でも最初は1から、同じナンバーを合わせれば数字が上がる。カドヤ先輩、これ」


俯いたままのカドヤ先輩に炎男が持ってたスペードの1を渡す。

片方に自分の、片方にあの男のカードを持つとカドヤ先輩は顔を上げた。


「重ねてください」


恐る恐るカードを重ねると、カドヤ先輩の手の中でスペードの1がスペードの2に変化する。

ほお、とタカハシ先生が声を上げる。カドヤ先輩も目を見開いた。


「…トランプのナンバーの数だけ魔法が使えます。これでカドヤ先輩は翼を1度全壊してももう一度、発動できます。

あと、取り込んだ魔法を一つだけ活用出来る。何かは発動してみないと分かりませんけど」


「なるほど…じゃ、これはユウキが取り込むのか?」


タカハシ先生はヒラヒラとハートの1を揺らす。


「いや、俺はそれ取り込めないです」


定期入れから自分のカードを取りだし2人に見せる。二人の目が見開かれたのがわかった。


「ハートの2…もう既に1回戦ってたのか?」


「感情的……まさか」


「別にカドヤ先輩のことで罪を犯した判定になったわけじゃないですから。言ったでしょ、俺が悪魔憑きのこと調べたのは3ヶ月前、ストーカー扱いされ始めたのは2週間前、ね?」


慌てたカドヤ先輩はその言葉に少し申し訳なさそうに口を結んだ。

……なんだ、悪いと思ってたのか。べつに、嫌われてなかったのか。

少しほっとして口角が緩んだ。


「んで、トランプは通知役も担ってて、半径1キロ以内に悪魔憑きがいると、同じスートならトランプどおりの色に、別のスートなら別の色に光るんです。常灯なら同じナンバー、点滅なら別のナンバー」


「じゃあいつも登校途中で赤くチカチカしてたのは……」


「カドヤ先輩、俺と登校時間被ってましたからね、十中八九、俺でしょうね。

この通知が厄介で、都会での情報収集の時、どんだけ追っかけ回されたか……」


「都会はあの放送があってから思いっきり乱闘騒ぎらしかったからな……

ん?16384人…?」


「……あ、タカハシ先生、気づきました?」


指で何かを書き始めた先生に勘づいたことがわかって笑って見せた。


「……まさか、まさかだよな?」


「まさかです」


「……シオン?タカハシ先生?」


真面目な顔をしてタカハシ先生がカドヤ先輩を見つめる。


「カドヤ、2の12乗はいくつだ」


「……2の6乗の2乗だから…64の2乗………4096」


「トランプの最高は?」


「キング、13」


「同じナンバーを重ねれば数が増えるんだよな?お前が13にたどり着くには今回を含めて何回、重ねないといけない?」


「12…あ、」


「トランプのスートは4つだ」


「4096×4……16384…つまり」


カドヤ先輩が俺に嘘だろという目で訴えてくる。

残念ながら嘘じゃない。


「願いを叶える4人っていうのはおそらくハート、ダイヤ、スペード、クラブ、それぞれの、キングのことです」

















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