モブNo.76:「それなら問題はありませんよ。発見者はテーズ教授。私の名前は絶対に出さないように私からお願いして約束してもらってますから」
テーズ教授の発掘現場を出発してから、12か所の発掘現場を経由して、72時間近くかかってようやく海上都市に戻ってきた。
だれがダズブロウト博士の手下かわからないために、助けを求めることも出来ず大変だったお。
食糧はなかったけど、水に関してはこの船が釣り船だったのもあって、載せられて放置していたバケツに溜まった雨水で凌ぐことができた。
ちなみに上陸時は、海上都市にも釣り用の水上船の発着所があるので、時間が朝方だったので、夜釣りを楽しんでいたら大物に竿をもっていかれた。みたいな会話をしながら水上船を係留してその場をさっさと立ち去った。
本当なら着替えを買い、ホテルに戻って風呂にはいって4日ぶりの食事と行きたかったが、テーズ教授がどうなっているか気になるし、ダズブロウト博士の手下がどこにいるかわからない。
なので取り敢えず依頼者のテーズ教授に与えられている研究エリアにいってみると、何人もの人達が発掘品の保存ボックスを保管庫に納めていた。
どうやらその指揮はテーズ教授が取っているようだ。
「すみません。ただいまもどりました」
その指揮を取っている教授に声をかけると、
「ウーゾス君!生きてたんだ!よかったー!」
と、教授に抱き付かれそうになったが、
「自分、今かなり汚れているので触らない方が」
と、全力で接近を拒否した。
汚れているから以前に、抱き付かれようものなら周りの学生や研究員から殺されかねないからね。
「連絡が出来なかった上に、何日も仕事を休む形になって申し訳ありませんでした」
そしてテーズ教授には、依頼された仕事が滞った事を謝罪した。
不可抗力とはいえ、仕事を放り出した形になるので、相手によっては文句を言ってきて、契約不履行になってしまうだろう。
「今回の事は君に落ち度はない。原因は私の方にあるのだからね」
どうやらペナルティにはならなそうでよかった。
すると誰かが通報したのか、警察がやってきて身元確認を求められた。
どうやら昨日から僕の捜索が行われていたらしく、テーズ教授の発掘現場とその周辺の発掘現場を捜索していたらしい。
そして、是非とも話を聞かせて欲しい、要は事情聴取を受けてくれと言われたので、まずは僕が居ない間に何が起こったのかを詳しく聞かせてくれと頼んでみた。
するとあっさりとOKを出してくれたので、空きのある保管庫にパイプ椅子を持ち込んで、テーズ教授も交えて話を聞くことになった。
テーズ教授が僕と引き剥がされたあと海上都市にもどると、本当に学生や研究員が人質に取られ、研究成果を全て奪われ、保管庫に監禁されたそうだ。
さらに警察内部にも協力者がいて逃げ出す事すら出来なかったらしい。
そこに現れたのが、たまたまナンパにいそしんでいてその場に居なかったデイビッド・トライスという学生が、教授達の救出・チンピラ退治・警察内部の協力者の逮捕・博士の悪事の証拠集めなどに活躍したらしい。
そのお陰でダズブロウト博士は逮捕。さらには大学からも除籍処分を食らったらしい。
当然ダズブロウト博士は無罪を主張する。が、今回の事以外にも様々なやらかしの事実が発覚。
さらにはいままで被害にあった人達が一斉に声を上げて被害届をだした。
時間が経過していて無効になったものもあったらしいけど、被害届をだした事が大事らしい。
まあやらかした事実は無くならないからねえ。
極めつけは、息子さんが父親の悪事の全てを暴露、さらには被害者達に声を上げてくれと頼んだ張本人だったらしい。
その事実をしったダズブロウト博士は当然激怒したが、息子にあっさりやり込められたらしい。
海上都市には裁判所の建物はあっても機能していないため、帝国首都で詳しい取り調べと裁判を受けるべく、現在は護送待ちらしい。
ちなみに僕の船に関してだが、テーズ教授と大学とダズブロウト博士の息子が1/3ずつ出してくれるらしい。
さらには保険金も降りるので有り難い話だ。
が、問題は同じ船が見つかるかどうかだ。
そして次に僕が何をしていたかを聞かれる事になった。
なぜ発掘現場に残らないといけなくなったかを全て話した後、僕が発掘現場を離れたのは、あのままあそこにいた場合ダズブロウト博士とその手下に殺害される可能性があったからだと説明した。
「これがその時のやり取りです」
そして僕が発掘現場での通信のやり取りを録画したデータの入ったメモリーを見せたところ、警察の人が感謝しながら僕に握手を求めてきた。
そしてゲルヒルデさんに会ったことは伏せて、古代文明の遺跡を発見したことと、そこにあった水上船で戻ってきたと報告した。
そして、遺跡の発見者はテーズ教授とし、絶対に僕の名前は出さない事を約束してもらった。
そしてその話が終わると、テーズ教授は水上船の場所を聞いて飛ぶようにその場から居なくなった。
警察の人には聞きたいことは全て聞いたのでもう自由にしていいと言われたので、第二層にある店で着替えを買ってから、入浴施設で約4日ぶりの風呂。約4日ぶりの食事を楽しんだ後、ホテルに戻って取り敢えずベッドに横になったところ、すぐに意識が薄れていった。
気が付いたら朝になっており、慌ててテーズ教授の研究エリアに向かったところ、テーズ教授以下研究員や学生が、僕の乗ってきた水上船を囲んで、検査の機械をかけたり、観察に夢中になっていた。
その状態の研究者に話しかけるのは何となくヤバイ気がしたが、話しかけないわけにはいかないよね。
「おはようございます…」
すると全員がこちらを向き、
「待ってたよウーゾス君!さあ、私の発掘現場にいそごう!」
すぐさま貨物船への乗り込みを開始した。
「はっはいっ!」
その全員の迫力は、コミックバザールのそれに近い、いや。それ以上のものがあった。
そして現場にたどり着いた教授達は狂喜乱舞していた。
あの休憩所は最初からあの形だった上に、書類なんかも見つかったために怪しいとは思っていたらしい。
さらにあの下にいく穴は、何かあるんじゃないか?と、ためしためし掘り進んでいたらしい。
僕はエレベーターを教え、水上船があった場所を教えたあとは地上に戻った。
地上では、破壊された僕の船と小屋の残骸の撤去。臨時の小屋の建設が始まっていた。
そのため貨物船がひっきりなしで停船できる場所も少ないので、僕の船の残骸から無事そうなものをあさったら帰ることにした。
そうしてあさっている時に、地上の監督をしていた、眼鏡をかけたエリートらしい女子学生が声をかけてきた。
「ちょっといいですか?」
「なんでしょう?」
僕が反応するとものすごい顔になり、
「お前が教授を守れなかったことは、今回この古代遺跡を発見した事でチャラにしてやる。
だがな、この古代遺跡を発見したのはお前じゃない。テーズ教授だ。余計な事を喋るなよ?」
と、思い切りドスをかましながら脅してきた。
この女子学生は、豪雨の中を帰るときに、僕に絡んできた教授を嗜めてくれた学生だった。
帰ってきた時教授を拒絶してて助かった。もし抱き付かれてたら、彼女に殺されてたかも知れない。
「それなら問題はありませんよ。発見者はテーズ教授。私の名前は絶対に出さないように私からお願いして約束してもらってますから」
「そう…ならいいわ…」
彼女はちょっと驚いたが、どうやら彼女にとって満足する答えだったらしく、それ以上はなにも言わず小屋の建設現場に戻っていった。
ま、彼女みたいな言動をする人は時々いるので気にする事じゃないね。
それより早く帰って新しく船を探しておかないとね。
ちなみに使えそうなものは一切残っていなかった。
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