モブNo.3:「それはそっちの都合じゃんか。それに美人だったらよけいにお断り!」
読み切り以降のお話になります
「ここは相変わらず人が多いな…」
前の依頼でしなければならなくなった船のオーバーホールを終わらせた後に僕がやってきたのは、傭兵ギルドの銀河大帝国ポウト宙域・惑星イッツ支部だ。
銀河大帝国帝星・ハインにある本部程ではないものの、かなり大きなギルドだ。
ここにやってきた理由は簡単、仕事を探しにだ。
掲示板に表示されている依頼のコードナンバーを端末に打ち込み受付に持っていく。
そこで詳細を聞き、仕事を受けるかどうか判断する。
僕が向かうのは、もちろん誰も並んでいないおっちゃんの受付に決まっている。
美人の受付嬢のところになんか並ぼうものなら、
「おい!てめえみたいなのが◯◯ちゃんの列に並んでんじゃねえ!身の程しらずが!」
といって殴られたり。
運良く受付をしてもらって仕事の話しかしていなかったとしても、
「おい貴様!彼女が嫌がっているのがわからないのか?とっとと失せろ!」
といって殴られるのが絶対だ。
とりあえず、近場のショボい海賊退治を受けるべく、いつものおっちゃんの受付に向かった。
「これよろしくっす」
「おう。お前か。またショボい海賊退治の依頼か?相変わらず面白くねえ野郎だな」
この受付のおっちゃんはアントニオ・ローンズ。
元傭兵・色黒・ハゲ・マッチョの四拍子揃ったおっちゃんだ。
これで実はギルドマスター。
なんて事はなく、この受付の普通の職員だ。
「面白くなくて結構。博打うって死ぬよりはマシでしょ。それにこのショボい海賊退治だって油断すれば死ぬ事だってあるし」
「まあな。新人が死亡する一番の理由だな」
ショボいショボいと言っているが、相手は容赦なくこっちを殺しに来るのだから油断はできない。
にも関わらず、ショボい海賊だからと舐めてかかり、思わぬ反撃を受けて宇宙の塵と化すわけだ。
まあ舐めプさえしなければ装備も貧弱だったりするから退治は楽ではある。
「だが、その依頼はちょっと待ってくれないか?」
普段ならそのまま説明を始める筈なのに、今日に限ってそうはならなかった。
「なんでです?」
「実はな、貴族令嬢が長期滞在先に移動する為の護衛を募集してて、その人数を50人用意しろと言ってきたんだ。それが後1人足りない」
「つまり人数合わせに参加しろってこと?」
「そうだ。報酬も悪くないし、50隻も船がいれば襲われる確率も少ないしな」
「お断りするお。それ絶対トラブルに巻き込まれるやつじゃん!」
戦場に援軍としてならともかく、護衛に50人は多過ぎ!!
目立ちまくって襲ってくれって言ってるようなもの。
それに、そんなに人数がいるなら絶対に主人公属性の連中らがいるに決まっている。
「そう言わずに受けてくれねえか?人数揃わないとこっちもヤバイんだよ。令嬢側が指定した日が明日なんだ。それにその令嬢、なかなか美人らしいぞ」
美人の貴族令嬢というのは大抵ろくでもないのが多い。
例え本人がいい人でも、大概周りにはろくでもないのがへばり着いているものだ。
なので、ここはなにを言われようとお断りだ。
「それはそっちの都合じゃんか。それに美人だったらよけいにお断り!」
そういってショボ海賊退治の登録を要請した。
「わかったよ。今詳細をやる」
ローンズのおっちゃんは、仕方がないとため息をついて手続きを開始した。
そんなやり取りをしていると、
「おい貴様!」
と、後ろから声をかけられた。
なんだろう?依頼関係の話をしている時に話しかけるなんて随分マナーの悪い奴だ。
そう思って振り向いた瞬間に、顔を殴られた。
殴ってきたのは、10代後半くらいで、自信に満ち溢れた感じの表情を常に浮かべている感じの、背の高いすらりとした体型で中性的な顔立ちのイケメン君だった。
服装も、清潔感に溢れつつスポーティーで優美なデザインのものを着ていた。
しかし今現在は激しい怒りの表情を浮かべている。
なんなんだこいつ?
幸い殴られても転倒したり膝を突いたりはしなかったけど、いきなり殴ってくるってなんなんだお?!
僕はこいつとは初対面だし、何かした覚えもないんだけど?
イケメン君は僕を殴ってから間髪を容れず、
「どうして貴様は女性が助けを求めているのになぜ依頼を受けない?貴様それでも傭兵か!
依頼主の女性は50人もの護衛が居ないと不安だから傭兵ギルドに助けを求めてきたんだ!
それを断るなんて傭兵失格だ!今すぐ辞めろ!この腰抜けのキモオタ野郎が!」
と、僕を罵ってきた。
あーなるほど。
こいつ、傭兵を『弱きを助け強きを挫く正義のヒーロー』だと思い込んでるんだ。
多分、僕やローンズのおっちゃんがなにをいっても聞く耳を持たず、自分の信念を絶対だと信じて疑わないタイプだ。
どうしたらいいものかと悩んでいると、ローンズのおっちゃんがこのヒーロー君に声をかけた。
「ギルドでの揉め事は止めて貰おうか?それに、お前の階級は兵士、そいつは騎士だ。先輩なのはもちろんだが、傭兵がどんな仕事を受けようが断ろうがそいつの勝手だ」
ローンズのおっちゃんがきつめな口調で注意するが、
「間違いなくこんなやつよりは俺の方が強いんだから今すぐ階級を上げてほしいね!」
ヒーロー君は僕を鼻で笑い、おっちゃんの言葉を無視し、完全に自分に酔っている言動をしていた。
「だったらこの依頼の最後の1人はお前が受けるか?」
「当然だ!」
そういって、ヒーロー君は自分のギルドカードと端末をカウンターに叩きつける。
「書いてある規定の時間までに指定の場所に向かえ。遅刻は許さん」
そんな注意をしながらローンズのおっちゃんは手続きを始める。
ちなみに傭兵ギルドには、傭兵の貢献度によって階級が6段階あり、下から、兵士・城兵・騎士・司教・女王・王という、チェスの駒の階級があてられている。
そのカードの色は、兵士:緑・城兵:黄・騎士:青・司教:白・女王:赤・王:黒となっている。
ちなみに騎士までは貢献度だけで上がれるが、司教になるには試験が必要。
ちなみに僕は、さっきローンズのおっちゃんが言っていたように騎士だ。
試験が面倒臭いし、注目されることにもなるので試験を受けるつもりはない。
そんなことを考えていると、ヒーロー君がこちらを睨み付け、
「まあお前みたいな腰抜けキモオタが入るよりは、依頼主も喜ぶだろう。それと、今後俺の前に現れたら容赦しないからな!」
と、僕に罵声を浴びせてからその場から立ち去って行った。
「なんなのあいつ…いてて…」
「新人だが、初っぱなからデカ目の依頼をいくつも成功させてる。まあ、期待のエリートって奴だな」
殴られたところを押さえている僕に、ローンズのおっちゃんが相手が何者か説明してくれた。
「それにしてもお前、なんで反撃なり反論なりしなかったんだ?」
「だってあいつ、絶対こっちの話なんか聞かないでしょ。仮にギルド内での暴力行為を訴えたところで、ファンの女の子なんかが擁護しまくって、判決を出せる人までがあいつのファンの女の人に掏り替わったりするでしょ」
多分ヒーロー君の中では、僕は悪の組織の雑魚敵ぐらいの扱いになっている。
下手をすれば銃くらい平気で抜いてくるだろうし、社会的な抹殺だってやりかねない。
「そいつは俺も同感だな」
「ところで、これでこっちの仕事は受けられるでしょ?」
僕はそういって腕輪型端末をローンズのおっちゃんに差し出す。
「ま、そういうことになるわな」
ため息をつきながら、ローンズのおっちゃんは手続きを始めた。
こんな感じで進めていく感じです。
方向性が違うと感じるようなら、早めに終了させたいとおもいます。。
本年度から、事情もあり、多少更新が遅くなるとおもいます。
申し訳ございません。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします。




