モブNo.36:「時間があったら、ゲーセンとか行きたいな。3人で」
小惑星の接近距離に、御指摘をいただいたので、加筆修正したしました
小惑星群の設定を修正し、距離の関係ない依頼にしました
ロスヴァイゼさんとの通信も終わり、帰ろうとしてロビーに出たところでアーサー君が声をかけてきた。
そのとなりには、当然のようにセイラ嬢がすました感じで並んでいた。
「こんにちは。ウーゾスさん」
「やあ、リンガードくん。と、サイニッダ嬢か。レセプションはどうだった?」
2人はこの前の仕事で軍のレセプションに招待されていたので、そのことを何の気なしに尋ねてみた。
すると、
「参加しない方が良かったですわよあんなもの!」
セイラ嬢がいきなり憤怒の表情になった。
「男共はアーサー様に対して『まぐれだ』『運が良かっただけ』『俺の方が強い』とかの陰口ばかり!そうかと思えば、私に対して『俺と付き合わない?』『あんな傭兵野郎はやめとけよ』『俺の副官になれよ。可愛がってやるぜ?』とかいってくるんですよ?」
彼女は歯ぎしりをして、自分の恋人を蔑んだ男達への怒りを再燃させ、
「女共はその逆!私には『男に媚びうっちゃって』『あんなのより私の方が上ね』『所詮低級の傭兵よね。貧乏くさ~い』とかネチネチした嫉妬と嫌味!
そして主催のハイリアット大尉含めてアーサー様にベタベタベタベタベタベタ!」
自分の恋人に接近した女達に対しての怒りも再燃させた。
「まあまあセイラ!落ち着いて。それに、ハイリアット大尉は防波堤になってくれて」
「それが手口なんですよ!アーサー様が真面目で身持ちの堅い方だったから良かったですけども!2度と行きませんよあんなもの!」
アーサー君が落ち着かせようとするが、下手をうって燃料を投下してしまっていた。
「大変だったねえ…」
呼ばれなくてよかった。
多分、ハイリアット大尉の知り合いとかで固めたんだろうから、お貴族様ばっかりだったんだろうな。
2人は本当にご苦労様な上に気の毒すぎる。
しかし、アーサー君はそんな話をするために僕に話しかけてきたわけではないだろう。
「それで、何の用?」
僕の一言でそれを思いだし、アーサー君は用件を話し始めた。
「はい。実は惑星コルコス近隣の宙域にある小惑星群の収集作業の仕事が発注されたんです。
なんでも小惑星から希少金属が採掘できる事が発見されてコルコス領主の命で採掘を開始したらしいのですが、小惑星群の範囲が広く、盗掘や小惑星の盗難が絶えないため、小惑星群を集めて一気に溶かして抽出する手段にでるそうで…」
アーサー君はそう説明しながら、依頼書を腕輪型端末に通信してくる。
なんかいやに大雑把な感じだけど大丈夫なのかなそれ。
コルコス領主は自棄になってないよね?
「貴方のレーダーなら、周囲の警戒も小惑星の接近探知も容易でしょうから、小惑星にぶつかる確率も下げられるでしょう?」
さらにセイラ嬢がアーサー君の補足をしてくる。
「悪いけど、船のオーバーホールが終わったばかりなのと今は休暇中でね。期日はまだあるみたいだから、それまでには決めておくよ」
話を聞く限り怪しいところは無さそうだけど、一応調べたいし、何より休暇中なのもあるので返答を保留した。
「分かりました。ご一緒出来ればいいですね。ではまた」
「ああ、わざわざありがとうね」
ヒーロー君だったら『受けるかどうかこの場で決めろ』とかいってるだろうな。
そのあたりアーサー君は人間ができてるお。
おそらく人数が集まらないからと、受付嬢に「暇そうなのに声をかけておいて」とかお願いでもされたんだろう。
そうして僕はようやくギルドの建物からでると、そのまま闇市商店街へ向かった。
ここは相変わらず異世界みたいな様相を呈している。
ここに来たのは、もちろんパットソン調剤薬局で噂話を得るためだ。
そしてやっぱり、ものすごく目立つあののぼりがたっていた。
そしてその中に新しいのぼりが立っていた。
内容は『沸膏に踊る、死肉を纏う魂の根源』とある。
あの肉屋さんまた怪しげな新商品を…。
だがかなり人気があるのか、ここの雰囲気にどっぷり浸かった人達がたくさんならんでいた。
その混雑を尻目にパットソン調剤薬局に到着した。
「うっす」
「いらっしゃい…。なんだお前か」
友人のゴンザレスは、新聞から顔を外すといつもと変わらない対応をしてきた。
僕はカウンターに向かうと封筒をカウンターに置いた。
「ちょっと『噂話』を聞きにきたんだけどさ」
「どんな話だ?」
ゴンザレスは封筒の中身を確認すると、話を聞く態勢になった。
「惑星コルコス近隣宙域に小惑星群があるだろ?
なんでも小惑星から希少金属が取れるらしいんだけど、盗掘・盗難が多いからまとめて溶かして抽出するから集めろってハナシ」
これはアーサー君が持ってきた依頼書に書いてあったことだ。
「わかった1時間ほどくれ」
「ほいほい。大人しく待ってるよ」
ゴンザレスがうなじにコードを繋げて調べて始めたので、僕は椅子に座りラノベを読み始めた。
小惑星を溶かして希少金属を抽出すること自体は出来なくはないので問題はない。
本当に全部まとめてではなく、一定量を順次溶かしていくだけだろうし。
この依頼で気になったのは希少金属が採れるという所だ。
放射線や放射能みたいなものは、元々そういうものが飛び交う宇宙空間を移動する船や船外活動服=宇宙服は、元から対策をしているので問題ない。
しかしその小惑星に腐食性ガスが内包されていて、収集作業中に吹き出したりするとヤバイ事になる。
ガスを内包したまま炉に放り込むわけにもいかないから完全にガス抜きをする必要もある。
そういう物が有るとわかっている場合は、それなりの装備をして作業すれば問題はない。
知らずにたまたま出くわした場合も、直ぐに作業を中断し、それなりの装備に換装すれば作業を再開できる。
しかしその装備はかなり高額だ。
なので、内包しているのをわざと知らせないで作業をさせ、出た時には『すぐに装備を用意するからそのまま作業を続行しろ』と作業をさせ、最後まで対策をしないという場合がある。
アーサー君もその辺りはちゃんと調べてから受けたのだろうし、問題はないとはおもうが念のためだ。
それからきっちり1時間後、ゴンザレスはうなじからコードを引き抜いた。
そうして手に入れてくれた情報は依頼書と変わらないもので、ヤバイものは無いようだった。
その依頼を出したコルコス領主の頭の中身以外は。
「そういえば、この前クルス・アーノイド氏にあったよ」
ともかく用件は終わったので、少しばかり友人としての会話を振ってみた。
「ああ、この前店に来たよ」
「君らは所在がわかってるからな。僕は色々移動する事が多いから、なかなかね」
「そのかわりお前は、多い時には1日で300万は稼ぐだろう?」
「命懸けだけどね」
内容はともかく、こんな風に会話をしているとなんとなく学生時代を思い出してしまう。
1年の時の事件はともかく、楽しかった思い出は多かったと思う。
そんなことを考えていると、
「時間があったらゲーセンとか行きたいな。3人で」
ゴンザレスが不意にそんなことを呟いた。
同じように付き合いがあったとしても学生時代と同じにはいかない。
それぞれの立場があり、それぞれにやらなければならない事があるからだ。
そう考えると、自己責任とはいえ自由に休んだり働いたりできる僕は幸せ者なのだろう。
「そうだねえ」
その時は僕が時間を合わせる事にしよう。
最近、控え過ぎてやる夫口調の使いどころが皆無になりつつあります
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします
小惑星の接近距離に、御指摘をいただいたので、加筆修正したしました。
宇宙の単位をもう少し勉強したいと思います
小惑星の設定を変更。
色々加筆修正しました
まあ、やることは変わらないので大丈夫かな?




