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モブNo.204∶「仕方ないか……」

『戦闘は無くとも食料は減っていくのでね。たとえ菓子類といえど補充できる時には補充しておきたいのですよ。少し時間を差し上げますのでよく考えていただきたい。できれば、見知った人物に砲を向けたくはない』

 物凄く真面目な表情で、完全に海賊のセリフを吐いてきた。

 僕達傭兵としては、敵を殲滅するか、依頼主を無事に逃がして依頼を達成させるのがベストな選択だ。

 それに、たとえ依頼主が自主的に投降したとしても、依頼主を突き出した形になるので、依頼は失敗になってしまう。

 どうしたものかと依頼主からの返答を待っていると、僕達傭兵だけに向けて通信がきた。

『本来なら、社員や皆様の安全を考え、投降するべきなのでしょうが、私は『スターライト・コメット』社の人間として、この商品を届ける義務があります。乗組員達も同じです。なので私たちは逃亡を試みます。皆様お付き合いいただげますか?』

 アイゼンロッド氏は、覚悟の決まった表情で、自分達のこれからの行動を示してきた。

『俺はつきあうぜ。お前らはどうする?』

 リーダーの司教階級ビショップランクの彼は、にやりと笑った。

『やってやるぜ!』

『第7艦隊かあ……腕が鳴るぜ!』

『おいおいマジかよ!』

『それが仕事です』

「仕方ないか……」

 全員がやる気なら仕方ないし、僕個人としても、投降した製菓メーカーの人達は殺されないだろうが、僕達傭兵は別という場合は十分にあり得ると考える。

『全員合図したら即座に全開でゲート方向に向かえ。絶対に後ろを見るなよ! あと、警察と軍に通報しておけ!』

 リーダーにはなにか策があるのか、ゆっくり隊列の最後尾に移動した。

 そんな話し合いが終わった瞬間に、

『そろそろお答えをいただきたい』

 トーンチード准将が通信を繋げてきた。

 僕達傭兵は専用のチャンネルを開きながら、アイゼンロッド氏とトーンチード准将の会話を聞くことにした。

 アイゼンロッド氏は眼鏡をクイッと直し、

『貴方ほどの人物が何故このような蛮行を行うのか? その理由は私にはわかりかねますが、信念があっての行動なのでしょう。しかし私にもサラリーマンとしての信念がある! よって! そのような脅しには屈しない!』

 アイゼンロッド氏がそういい放った瞬間、全員が緊急離脱を開始し、リーダー機は機体の胴体から、ボール状の何かを発射した。

 それは閃光弾であり、炸裂すると同時に凄まじい閃光が発せられたのを、背中越しに感じ取った。

 そしてその閃光がおさまると同時に、楕円状のものを放出し、炸裂させた。

『デブリ入りの煙幕弾だ! 無闇に飛び込むとケガするぞ!』

 リーダーは楽しそうに兵装の自慢をした。

 目眩ましと煙幕とはなんとも古典的な方法だけどモニターを見ているのは人間だからたしかに効き目はあるし、モニターも焼ける。

 煙幕はレーダーがあるんだから意味ないと思われがちだけど、混ぜてあるデブリが曲者だ。

 無闇に突破しようとすると船体にダメージがくる。

 些細なダメージかもしれないが、精神的にはくるものがあるし、その些細なダメージが後から効いてくることだってある。

 以前に考えはしたものの、なんとなく使えない気がして使わなかったのだが、これだけ効果があるなら採用してみよう。

 そんなリーダーの秘密兵器のおかげで、かなりの距離が稼げた。

 既に軍と警察には、連絡が行っているが、第7艦隊からの追っ手は必ず来るだろうから、とにかくゲートに急ぐべきだろう。

 そんな事を考えていると、不意に警告アラートが鳴った。

 すると、僕達の位置からかなり離れたところを、赤く太いビームが通り過ぎていき、はるか向こうで消滅していった。

 正直、追っ手として最悪の相手が来てしまった。

 可能性としてはゼロじゃなかったんだから、想像しておくべきだった。

 あの赤く太いビームは、確か『プロミネンス・アロー』。

 意志のある古代兵器であり、偵察兼電子戦機であるロスヴァイゼさんの姉であり、基地を攻撃に来た敵機を迎撃する要撃戦闘機であるゲルヒルデさんが追っ手になるかもしれない可能性を。

『あれって……第7艦隊の虎の子って噂の赤いビームの戦闘艇だろ? 冗談じゃねえぞ!』

『そんな貴重な戦力を追っ手につかうのかよ!』

 反乱軍の艦隊を串刺しにし、ネキレルマ星王国の秘密兵器『グングニール』を破壊した謎の戦闘艇のことは、全員が知っていたようだ。

 するとリーダーが、

『仕方ねえ! ユーリィっつったか?! お前は依頼主の船を護衛しながらゲートに向かえ!』

 この中で一番若手のユーリィ君に貨物船の護衛を命じた。

『皆さんはどうするんです!?』

『なんとか足止めする!』

 正直やられる確率は高いけど、まあ、傭兵としてはやるしかないよね。

 ユーリィ君は悔しそうな表情だったが、おとなしく従って貨物船と一緒にゲートの方向にむかった。

 そしてリーダーは機体を反転させ、

『相手は化け物だ。落とされないようにしてとにかく時間を稼ぐ! 相手は一機だ! 散開して翻弄しろ! まずは俺が一発かましてやる!』

 決意した表情を浮かべていた。

 この司教階級ビショップランクの彼はまさに主人公だね。

 近づいてくるゲルヒルデさんの機影を確認して、全員が散開する。

 流石に的の小さい戦闘艇相手に『プロミネンス・アロー』は迂闊には使ってこないだろう。

 さっきのは、投降を狙ってわざと外した脅しだろうしね。

 そしてリーダーは閃光弾と煙幕弾を射出する。

 するとゲルヒルデさんは即座に反転して閃光を防ぎ、煙幕の範囲からあっという間に離脱した。

 そしてゲルヒルデさんはその中の一機だけを狙い、追跡を始めた。

 そうなったなら、残りの全員がゲルヒルデさんを追いかけることになる。

 そうなればゲルヒルデさんはかなり不利になるはずだ。

 しかし流石は意志のある古代兵器、僕達が有利な位置につく前に、追いかけていた相手を仕留めていた。

 幸いパイロットが脱出できたらしいのは確認できた。

 するとゲルヒルデはすぐに反転し、追尾してきた一機にヘッドオンで迫り、すれ違いざまに撃墜していった。

 僕とリーダーと残りの1人で三方に分かれ、波状攻撃をするも躱され、すぐにリーダーがやられてしまった。

 すると残った1人が、

『冗談じゃねえ! 俺は逃げるぞ! 依頼主もゲートに到着してるかもしれないしな!』

 そう言って全力で逃げていった。

 僕もそれに便乗して逃げようとしたのだけど、どうやら逃がしてはくれないらしい。

 ゲルヒルデさんが僕の背後を取るべく、旋回をしていたからだ。

 このまま逃げた場合、スピードの差で確実に撃墜される。

 それなら対峙した方がまだチャンスがある可能性がある。

 正直言って勝てるとは思えないけど、やるしかなさそうだ。

リーダーの名前はカイ・サブレスといいます。


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― 新着の感想 ―
死んだフリしかないだろうなぁ…… これだけの意気込みで引っ張って次話1行目で既に撃破され済みという即落ち2コマ展開もアリ
お前かよぉ!? やられた振りとか何とか出来ませんかねぇ・・・。
知り合いの縁で見逃してくれたりしませんかねぇ? 無理ですか? はい……
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