モブNo.193∶「あ〜なんかわかるけどわかりたくない……」
ゴンザレスとささやかな祝勝会をした翌日の朝のニュースで、元ネキレルマ星王国の第1王妃の娘であるカラーナ・ベーレントン・ネキレルマ元第1王女(12歳)が、帝国に対して正式にネキレルマ星王国の国土を譲渡し、ネキレルマ公爵として、帝国貴族に組み込まれる調印式典が首都惑星ハインで行われることが決定したというニュースが流れてきた。
これにより、ネキレルマ星王国は銀河大帝国の植民地となり、歴史から消滅することになる。
これは実に50年ぶりのことだという。
国が亡くなってしまうというのは大変なことだが、それは政治の世界の話であり、平民かつ植民地民である僕には、雲の上の話だからまったく関係のない話だ。
そう、思っていたのだけれど。
「政府から傭兵ギルドに強制依頼があった。首都惑星ハインで行なわれる調印式典の警備に協力しろとのことだ」
休み明けの傭兵ギルドのカウンターで、ローンズのおっちゃんから信じたくないことを聞かされた。
「軍だけで十分なんじゃないの?」
そもそもそんな大切な式典の警備に、傭兵を引っ張り出すこと自体どうかと思う。
「その理由は幾つかあってな。一つは祖国を奪われたくない連中が、自国の王女を売国奴呼ばわりし、我が国の皇帝陛下もろとも殺害しようとしているから。二つ目は自分達を虐げてきたネキレルマ王家を完全に抹殺しようとしているから。この二つの理由により、警備の依頼が発生したわけだ」
「あ〜なんかわかるけどわかりたくない……」
つまりはそいつらのおかげでお仕事が発生したわけだ。
ちなみに国内にいる反帝国のテロリストの中には、帝国からの独立を願っている連中がいるわけだが、そいつらは特に動きがないらしい。
普通なら、自分達と同じ末路になるネキレルマの植民地化を阻止しようと考えそうなものだけど、それがないということは、同じように苦しめと思っているか、独立に成功した時に自分達の領土にしようとでも考えているんだろう。
「傭兵を雇ったのは、ようは人数でビビらそうってわけだろう。首都惑星全体をカバーするって話だから、案外楽な仕事になるかもしれんぞ。送迎もあるし、説明会は5日後の午前10時、その後すぐに出発だそうだ。ちょうどいいからもう少し休んでこい」
ローンズのおっちゃんはいい笑顔をしながら、僕に依頼書を差し出した。
傭兵ギルドを出た後、まずは『アニメンバー』に向って手に入れたのが、
『神話のラダー様』の新刊。
『よいっぱりのうた』のデータカードと新刊。
『悪役令息転生おばさん』の新刊とデータカードの3つだ。
そして、町中の一般書店で超有名コンビ漫画家『フルゼルF&フルゼル@フェア』をやっていたので、どうせならこの機会にと『フルゼル・F・ファルシオン大全集』全115巻を購入した。
これがあれば時間も潰せるだろう。
というか足りなくなりそうだ。
いずれは『フルゼル・ファルシオン@スペシャルセレクション』全215巻も揃えたいな。
その後はゴンザレスのところにも行き、情報をもらったけど、狙っているのは間違いないが、どうやってまでは分からないらしい。
調印の内容についてもあれこれ推測されているが、ネキレルマの帝国領地化は免れないと言われている。
まあ、これで無罪放免なら示しがつかないからね。
過激な人は、カラーナ王女とエイメル王女の処刑を唱えたりしているが、12歳の女の子にカイエセ・ドーウィン(我儘ナルシストおっさん)がやらかした事の責任を取らせるのは違うだろうと思う。
そうだとしても、カラーナ王女は受け入れるだろうと言われている。
そのへんがやっぱりちゃんとした王族ってやつなんだろうね。
ちなみにカイエセ・ドーウィン(我儘ナルシストおっさん)と第2王妃の娘である第2王女のエイメル・サレーダー・ネキレルマ(6ヶ月)は、王族位を剥奪、帝国国内の何処かの貴族の養子になるらしいというのが、一番信憑性のある話になっている。
そうして5日後。
僕達傭兵は、毎度のことであるギルドの大ホールに集められた。
壇上には、部隊はわからないが偉そうな軍人がおり、僕達傭兵を睨めつけていた。
そして時間になると、
『これよりお前たちは、皇帝陛下主催による調印式典の警護任務につく。任務期間は式典開始日の3日前から、式典終了の翌朝までだ。3日前から警護をするのは、この式典を良く思わないものや、陛下のお命を狙って居るもの達の侵入を防ぐためだ。どんな些細な事でも報告するように。ではこれより移動となる。移動用の船を衛星軌道上に待機させてあるので、指示に従うように。以上。出発!』
と、言い放ち、忌々しい表情をしながら壇上を降りた。
どうやら彼は、傭兵が動員されたのが気に入らないらしい。
そうして僕の乗り込む事になった移動用の船は、航空母艦の『ケアレ・スミス』だった。
ネキレルマ星王国との戦争の時に世話になった艦で、今度は元ネキレルマ星王国の王女様を守る為に乗り込む事になるとは、意外な縁が巡ってきたものだ。
しかもこの艦、意外にも被弾率や故障率が少ないらしい。
その移動の間は特に変わったことはなく、無事に首都である惑星ハインに到着した。
首都に到着してすぐに目に飛び込んだのは、惑星ハインの衛星軌道上に大量に設置されていた施設集中型作業基地コロニーだった。
この数を見るだけで、今回どれだけの人数が警備に駆り出されているのかが伺い知れる。
ちなみにこのコロニー自体も、襲撃時の防御壁として使うらしい。
そうしてコロニーに案内されると、すぐにシフトが発表され、僕は深夜から早朝になるCシフトになった。
ちなみに8時間勤務で16時間待機の3交代制という、ありがたいタイムスケジュールだ。
そして当然、アーサー君&セイラ嬢コンビと、ロスヴァイゼさん&ランベルト君コンビの、有名かつ見た目の良い実力者達は式典会場の近くの警備に連れて行かれてしまった。
僕はCシフトになったために、いきなり16時間の時間ができたので、さっそく『フルゼル・F・ファルシオン大全集』を読むことにした。
そうして10巻ほど読んだあと食事をし、風呂に入ってから睡眠をとった。
そしてシフトの1時間前には起きて、食事を済まし、シフトにはいった。
すると、式典開始の3日前にもかからわず、僕が担当しているエリアとは反対方向で襲撃があったらしい。
勿論襲撃者は撃退・捕縛され、現在は仲間の居場所を吐かせるために、尋問されているだろう。
襲撃はあるだろうと思ってはいたが、まさかこんなに早くくるとは思っていなかった、
これは気を引き締めていかないといけない。
キリが良いのでここできります
大全集は本気で欲しいですね。高いけど
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