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モブNo.185∶『よし、撃て!』

『戦闘艇部隊をABCDの四隊に分け、Aは正面から、Bは左方、CDは右方から回り込み、DはCが所定ポイントの到着後に離脱、そのまま後方に回り込んで敵潜水艦を包囲する!』

  髪の色と同じ真っ赤なビキニ姿の中将閣下がそう宣言すると、僕の手元に通信メールが来た。

 それは振り分けのメールで、僕はA隊になった。

『まずはこちらから先制する! 敵潜水艦の方向に艦砲射撃。敵戦闘艇に当てようと思わなくていい。牽制出来れば十分だ! 撃て!』 

 戦艦と無人砲撃艦から、青く太いビームが放たれると、その遠方で小さな爆発が連続して発生した。

 おそらく射線上の小型の無人機が爆発したのだろう。

『BCD隊は出撃! こちらは第2射を放つので射線に入るなよ!』

『充填完了! いけます!』

『よし、撃て!』

 またも戦艦と無人砲撃艦から、青く太いビームが放たれるが、一射目よりは小さな爆発の数は少なかった。

 『A隊出撃! 一機でも多く叩き落とせ! 本艦及び砲撃艦は対空砲火準備! こぼれてきたのを逃すな!』

 中将閣下頑張ってるなあ。

 実は意外と有能なのかな?

 まあ、赤いビキニ姿な上に、本人のスタイルもなかなかよろしいので、そういうグラビアのようにも見えてしまい、ちょっと締まらないけど。

 でも作戦としては妥当。

 連中がどっちにも逃げられないよう、どっちの方向のコンビナートにも攻撃が向かないように包囲するのはいい手だ。

 そしてゆっくりと距離が縮まっていき、敵が視認できた。

 この状況を遠方から見ると、毎回イナゴの群かハチの大群に見えてきてしまう

 そしてついに戦闘は始まった。


 こういった乱戦状態では、敵味方識別装置(IFF)で味方を認識しても、反応して撃ちそうになることはよくある。

 そういうのもかわしながら、確実に一機づつ仕留めていくしかない。

 その点ロスヴァイゼさんは、戦場を縦横無尽に飛び回り、鎧袖一触とばかりに敵だけを攻撃し、爆発と残骸の道を増やしていく。

 アーサー君やアルプテト嬢もかなり良い動きをしているが、ロスヴァイゼさんには敵わないだろう。

 まあ意思のある古代兵器だしね。

 それにしても敵が多い。

 あのでっかい潜水艦、どれだけ無人機を搭載してるお?

 戦闘開始から1時間経過しているのにまだまだ出てくる。

 まさか内部で製造してないよね?

 だとしてもゲームじゃないんだから無限ではないはず。

 ちなみに浮上しっぱなしではなく、無人機を放出しては潜航してミサイルを撃ち、しばらくしたらまた浮上して無人機を放出を繰り返している。

 とにかく地道に敵戦闘艇こぶんを減らせば潜水艦おやぶんにお目通り出来るだろう。

 そう思った瞬間、敵戦闘艇4機ほどが、こちらに向かってきた。

 どうやら、向こうにいたロスヴァイゼさんには敵わないと見てこっちに来たんだろう。

 悪いけどこっちも任務だからね、通すわけにはいかない。

 向こうもそのつもりらしく、4機で襲いかかって来たので、まずは距離を取る為に逃げることにした。

 アーサー君やランベルト君なら勇敢に向かって行くところだけど、僕は一山いくらのモブだから、逃げるのも当然の選択肢だ。

 で、やっぱりついてくるよね。

 雨あられに撃ってくるビームはギリギリ避けれてるけど、一発でも食らったらヤバい。

 しかも向こうはかなり腕がいいみたいだからいつまで避けられるか分からない。

 急に目の前に来た敵機にビームを当てて直ぐに方向転換しても、直ぐに食いついてくる。

 このままじゃあジリ貧になるし、コンビナートから遠ざけるようにしてから逃げおおせるのも中々大変だ。

 しかたないので仕掛けてみることにする。

 まずは機体前部の姿勢制御用のバーニアを真下に向ける。

 そしてメインノズルを止めずにバーニアを全開にし、機体が後方を向いた瞬間にバーニアを切り、ビームを撃ちながら横回転をし、敵機をすり抜けてそのまま距離をとる。

 何とかすり抜けた後、爆発音が聞こえてきたので、1機は仕留めたはずだ。

 それ以外にも何発か当たっていたはずなので、しばらく距離は稼げるだろう。

 そうしたらUターンしてと思ったけど、また別のが近寄ってきたので、そっちを叩くことにした。

 とにかく少しでも戦闘艇の数を減らして、あのでっかい潜水艦をなんとかしないとね。

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

【サイド∶スクーナ・ノスワイル=ヘルトリーダー】

 

 私達『ヘルト中隊』は12機編隊だけど、いまは4機ごとに分かれて行動中だ。

 私は軍の無人機を無数、有人機は3〜4機は落としていた。

 私の仲間である『ヘルト中隊』のメンバーも、似たような戦果だった。

 そうして順調にコンビナートに接近していたところ、遠方に『羽兜』の姿が見えた。

 正直人間離れしたあの怪物とは戦いたくない。

 それならばと進路を変えたところ、また嫌なのがいた。

 私達がカイデス海賊団の戦力としても動いていた頃、何度も撃墜させられた相手『土埃カーキー』だ。

 相手をしたくはないが、コンビナートへの進路を塞ぐなら話は別だ。

「ヘルトリーダーより各機へ。A分隊はこれより『土埃カーキー』に仕掛ける。A分隊は心してかかれ」

『『了解!』』

 そうして私達は『土埃』に仕掛けた。

 すると相手は、くるりと方向転換し、逃げた。

 『土埃カーキー』がただ逃げるなんてことは絶対にしない。

 慎重に追いかける必要がある。

『はっ! 所詮『土埃』だな! 慌てて逃げるのが得意技か!』

 最近入った、返事をしなかった新人が、調子に乗って『土埃カーキー』を追いかける。

 私達もビームを発射するが、最小限の動きでかわされていく。

 その時点でヤバい事に気がつくべきなのだが、新人は気が付かない。

「ヘルト12! 深追いするな!」

『ちょっとアンタ! 勝手なことするんじゃないわよ!』

『うるせぇ! あんたらがビビりまくってる薄茶色なんざ、この俺からすればザコなんだよ! あいつを落としたら、この俺がこのチームのエースに決定だ!』

 ヘルト12はさらに速度を上げて『土埃カーキー』を追いかける。

『女がエースなんざ生意気なんだよ!』

 ヘルト12がそう叫んだ瞬間、『土埃カーキー』が180度の方向転換をし、横回転の錐揉みをしながら攻撃をしてきた。

 不意を突かれた私達は、全員がかなりのダメージを受けて航行不能になり、ヘルト12にいたっては完全に撃墜されてた。

 私はため息を付き、自分の行動を振り返る。

 反応はできていた、が間に合わなかった。

 リモートだからではない。

 新人に振り回されていたからではない。

 純粋に自分の技量だ。

 自分を追わせておいてからの反撃が彼の得意な戦法だと理解していたはずなのに。

 そう反省しながらヘルメットを取り、コクピットシートのシールドを開ける。

 するとヘルト1=アエロ・ゼルリア・ティンクスが、新人のヘルト12=バンダウス・リジェーロに向かって嫌な笑みを向けていた。

「なんだっけ? 『所詮『土埃』だな!』とか?『この俺からすればザコなんだよ!』とかだっけ? 大口叩いてこれじゃあねぇ……ぷぷっ♪」

 完全に煽ってるわね、アエロの奴。

 まあ新人のリジェーロは、腕は悪くなくても、自信過剰で調子に乗って失敗するタイプであり、いずれレースでもやらかすと思ってはいた。

「五月蝿えっ! 油断しただけだ!」

 自分は強いと思い込んでいるものが負けた時、『油断しただけだ』と、よくいうが。

「あの時生身で機体に乗っていたら貴方は死んでいたのよ。これが、リモートで良かったわね」

 その言葉にちょっと苛ついた私は、リジェーロにチクリとやった後にその場を後にした。

 直ぐになにかがぶつかる音がしたが、多分リジェーロがヘルメットでも投げつけたのだろう。 

 今回も私の負けだった。

 新人の暴走は理由にならない。

 私は誰もいない廊下の壁を叩いた。

 

 ★ ★ ★ 

無駄な無線集

『』テロリスト∶【】味方∶《》民間人


『来やがったな帝国の犬どもめ! 我が祖国を取り戻すための礎になるがいい!』

『……また隊長のお決まりゼリフが出たぞ……』

『馬鹿、静かにしろ。またありがたい話の2時間コースが聞きたいのか?』

【何回見てもデカいコンビナートだよな。ここで働いたら給料ってどれくらい出るんだ?】

【俺達より待遇が良いのは確実だな】

【ピシュマン中将閣下は意外とスタイル良かったんだな】

【うっかりアミラちゃんとか呼びそう……】

【意外と大丈夫じゃね? 第5艦隊のブルッドウェル少将をルナちゃんとか呼んだら殺されそうだけどな……】

《凄え! 戦闘艇の大編隊だ!》

《馬鹿! 動画撮ってないで早く避難しろ!》

《待ってくれ! うちの子が好きなんだよこういうの!》

『ヤバい!『白騎士』に張り付かれた!』

『ようし! 一匹仕留めた!』

『うへぇ……まだあんなに距離があるのかよ』

『聞いたか! 敵の司令官は女で、ビキニで指揮をしてるらしいぞ!』

『そんな訳があるか! 寝言いうな!』

【なんか無人機がクソほど多くないか?】

【うわっ! クソっ! ヤラれた! もう駄目だ!】

【かすっただけだから大丈夫だ】

【ベイルアウトするなら気をつけろ。この高さだと、水面はコンクリートと同じ硬さだそうだ】

【俺、この仕事終わったら彼女にプロポーズするんだ】

【やめろ! それは死亡フラグだ!】

『知ってる? 白騎士って傭兵、マジでイイ男らしいわよ』

『マジ!? だったら別の意味でオトシたいわ〜』

『おい! 誰か艦外に出て瓦礫をどけてくれ! ミサイルの発射口が塞がれてるんだ!』

『今は潜航中だ! 死ねってのか?!』

『助っ人部隊は美人が多いらしいぞ!』

『お近づきになりたいよな〜』

【敵潜水艦が潜航! 爆雷はないのか?!】

【あの近辺に艦砲射撃を叩き込んじゃ駄目なのか?】

【やったら海中に焼き魚が浮かんでくるぞ】

《クソッ! 来るなっ! あっちに行け!》

《止めろ! ハンドガンが当たるわけないだろ!》

パシューン! ボーン!

《あっ……当たった?》

《馬鹿! 後ろにいたのに撃墜されたんだよ!》



アミラ・ロイラープス・ピシュマンは、最初は以前出したピンク頭のようなおバカで、味方の手により亡くなる予定だったのですが、書いているうちに愛されるポンコツ娘になったので生存しました。

多分、ブレスキン閣下やヴェスコーレス中将にからかわれまくっている感じです。


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― 新着の感想 ―
他の方の感想でもあるけど、やはりレースチームの戦争に対するゲーム感がなぁ 負けた!悔しい!は、すごい熱量感じるし、ゲームであれば共感できるんだけど、これ本来は命のやり取りなんですよノスワイルさん… …
最初は絶対死ぬと思ってたけど、罰ゲーム始まった時点で生存する気はしてましたw
アミラちゃん、死ぬ未来変わっちゃったけど、変わる前と後でどっちが精神的に楽だったか……w
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