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モブNo.181∶「はずれに当たる可能性もあるわけか……」

 イベント終了の翌日。

 つまり、ホテルから帰った日は夜まで読書三昧だった。

 さらにその翌日は、朝から部屋の掃除にゴミ出し、洗濯に銃の手入れなんかをしてから、傭兵ギルドに向かった。

「ういっす」

「随分リフレッシュ出来たみたいだな」

 ローンズのおっちゃんは、僕の顔を見るなりそんなことを言ってきた。

 僕にしては長期休暇で、イベントにも参加したのは十分なリフレッシュになったようだ。

「まあね。ちょっと変なのに出くわしたけど、同志の絆も感じ得たしね」

「なんだそりゃ?」

 おっちゃんは不思議そうな顔をするが、流石に警官の中に同志がいた事は話す必要はないだろう

 しかし、意外にもイベントに関連する話が、おっちゃんの口から飛び出てきた。

「お前の参加してた、なんだったか……「コミックマルシェ」そうそれ。それに乗じて、無許可のデモをやった連中がそれなりの数捕まったのはお前も知ってるとは思う。でだ、その残党が仲間の解放を求めてテロを起こすんじゃないかって噂が立ってて、警備の仕事が増えてるんだよ」

「このまえも似たような事もあったしね。警戒するのも当然かあ」

 惑星レオエオデュドのゲートのワームホール安定盤取り替え作業時の護衛の時に『帝国の未来を憂う者』とかいう連中がテロ行為を計画し、実行に移そうとした。

 幸いその場にいた傭兵達に成敗されたけどね。

「なので、例えばこんな依頼が来てるわけだ」

 おっちゃんの差し出してきた依頼の内容は、


―――――――――――――――――――――――


 業務内容:惑星エルガレヴァブの惑星上にあるコンビナート群に対しての上空からの巡回警備。

 業務期間:帝国軍によるテロ部隊の殲滅まで(推定2週間)

 銀河標準時間を基準とした3交代制の8時間連続勤務で16時間の待機休憩。

 業務環境:地上基地での食事・宿泊場所の無料支給・宇宙船の燃料及び弾薬の支給

 業務条件:宇宙船の持ち込み必須。

 持ち込み宇宙船が破損した場合の修理費は自腹。

 緊急時には、待機休憩時でも対処・出撃すること。

 上記理由により、待機休憩時の基地敷地外への外出不可

 報酬: 1週間で30万クレジット・固定。危険手当支給。


―――――――――――――――――――――――


 という内容だった。

 悪くはない。が、軍がテロリストを全滅するまでというのが謎だ。

 下手をすれば1日目で終了って場合もあるかもしれないわけだしね。

「これって……どこの軍が来るわけ?」

「さあな。こっちに情報は来てない。決まってないのか、秘匿されてるのか……」

「はずれに当たる可能性もあるわけか……」

 多分討伐艦隊が派遣されるのだろうけど、正直いってどんな部隊がくるかで職場環境は激変する。

 司令官が傭兵こちらに対して友好的、公平、無関心ならいいが、高圧的、嫌悪的だったら大変になることこの上ない。

 他の依頼も似たようなものばかりだったので、とりあえず保留にしたけれど、期限は明日までといわれた。

 

 傭兵ギルドを出た僕は、その足で先日会ったばかりのパットソン調剤薬局(ゆうじんたく)に向った。

 例の肉屋はたまたま定休日だったので、他に面白い店はないかなと見ていたところ、『ミイラの店』というのがあったので入ってみると、いわゆる乾物屋で、様々な干物や燻製、酒の肴関係のものがこれでもかと並んでいた。

 店にいたのは、ミイラみたいに干からびた感じの婆ちゃんと、顔に包帯を巻いたミイラみたいなおじさんだった。

 凝ってるなあと思ったのだけど、接客の態度や商品の名前は普通だった。

 話を聞くと、おじさんは家族と友人達でBBQをした時に、火加減を間違えて顔に火傷を負ったらしい。

 細胞再生の治療は施しているが、包帯はまだ取れないのだそうだ。

「これ意外とウケがいいんですよ」

 って言ってたから、怪我が治っても続けそうだ。

 僕もゴンザレスも酒は飲まないけど、美味しそうだったので、スルメと燻製チーズと燻製のソーセージを買っていった。

 

 そうしてパットソン調剤薬局(じょうほうや)に到着した僕は、さっそく今回の依頼の情報を探ってもらった。

「で、どうだった?」

「今のところわかってるのは親衛隊と第10艦隊が出張ってくることぐらいだな」

 情報を探し終え、ゴンザレスが、コップに透明な炭酸飲料を片手にスルメをくわえている姿は、呑兵衛で酒にだらしない女性に見えてしまう。

「第10艦隊ってあんまり知らないな」

 中央艦隊討伐部隊の司令官は、軍の資料に顔と名前と軽い経歴が載っているし、傭兵としては接触があったりするものだが、第10艦隊とはあまり接触がなかった。

「中央艦隊討伐部隊第10艦隊司令官、アミラ・ロイラープス・ピシュマン中将。女性。ロングストレートの紅髪・金眼。伯爵令嬢。貴族優先主義者でなによりも貴族を優先する人物だが、区別はつける人物らしい」

「どういうこと?」

 貴族優先主義というのは、アコ・シャンデラ(ピンクあたま)を思い出してしまうが、区別はつける人物というのがわからない。

「例えばそうだな……彼女の艦隊の兵士は98%が貴族だそうだ。本人曰く、『貴族中に平民が混じれば、その平民が苦労し悲惨な目に遭うし、貴族は貴族で平民が混ざることを不愉快に感じる。故に、貴族は貴族、平民は平民で纏まるほうが効率が良い』だそうだ」

 アコ・シャンデラ(ピンクあたま)よりはマシな感じがするが、ハズレなのか当たりなのか非常に判断がつきにくい。

「さらにいうと彼女、親衛隊長のキーレクト・エルンディバー大将閣下に懸想しているそうだ。そのため、プロパガンダクイーンなんて呼ばれるプリシラ・ハイリアット大尉を毛嫌いしているらしい」

 ゴンザレスの追加情報に、思わず言葉を失い、同時にくだらない予測を考えてしまった。

 もしかしてエルンディバー親衛隊長とお近づきになりたいから、テロリスト殲滅に参加したのかな?と。

 少なくともこちらがなにもしなかったらなんにもしてこなさそうだし、民間人にも傭兵にも評判のいい親衛隊長殿に良いところを見せたいなら、身分を利用した嫌がらせもしてこないだろう。

 それから僕は一旦家に帰り、長期に空ける準備をしてから傭兵ギルドにもどり、今回の依頼を受けることにした。

 


 惑星エルガレヴァブは、非常に安定した気候であるため、入植当初から工場が数多く建てられ、それは時を経て巨大なコンビナート群に成長した。

 それは陸上のみならず、海上にも広く展開していた。

 その中にある地上基地は、大気圏内用の航空機用の空港を改装したものでなかなか快適なところだった。

 帝国軍の方は宇宙港ポートの方を臨時基地として使用しているらしく、少なくとも巡回中以外は第10艦隊の連中に出くわすことはないだろうし、出くわしても報告くらいだから問題はない。

 そう思っていた。

実は親衛隊長殿のイメージモデルは白い船の人ですw


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「ゴンザレスが、コップに透明な炭酸飲料を片手にスルメをくわえている姿」 そういやぁ。。。ファンアートって紹介しないんですか?(@_@)ノ密に絵師さん期待☆
アミラ「私がこんなに高貴で素晴らしいのにキーレクト様は私に振り向かない、だからいい所を見せると宣言した!」 ジョン「その為に貴族主義なのに平民におもねる振りをするなどと!」 アミラ「私、アミラ・ロ…
親衛隊長殿に赤毛の副官がいたら、コミマのお姉さま方の妄想が捗りそうですねw
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