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モブNo.14:『プラネットレースは妨害あり。戦闘がない訳じゃないわ。それに私は、『実戦』は経験済みよ』

 一眠りして朝食?を食べ、船の整備や燃料補給を終え、船内の掃除をしていると、緊急警報(アラート)が鳴り響いた。

『緊急警報!緊急警報!現在未確認船団が接近中。船体コード確認を拒否していることから海賊と判断。戦闘要員は直ちに出撃準備。非戦闘員は退避後脱出準備をしてください。繰り返します…』

 はあ?なんでこんな田舎のゲートに?

 しかも換装作業中で金になりそうな船なんかあるわけないのに!

 ともかく掃除を中断し、船を発進させて迎撃態勢を整える。

 そして参加していた傭兵達の船が全部でてきた所で、相手の船団の姿が確認できた。

 数は大小取り混ぜてざっと100隻ぐらい、船には髑髏(どくろ)の後ろに草刈り鎌をクロスさせた海賊旗(ジョリーロジャー)マークがついていた。

 あのマークはたしかグリムリープ海賊団のマークだ。

 かなり凶悪で執念深い連中としても有名だ。

 なんであんな連中がこんな所に?

 連中の縄張りはもっと向こうのはずだ。

 その理由を考えていると、オープン回線からとんでもない内容の独り言が聞こえてきた。

『ちっ!2隻しかいないうえに、逃げ回ることしかできない弱小海賊だと思ったのに、なんであんなにいるんだよ?』

 おいおい。あの俺様君今なんていった?

 グリムリープ海賊団は、この前アジトを壊滅させたカイデス海賊団同様、軍がでばらないといけないぐらい規模のデカイ海賊団だ。

 そしてその本拠地(アジト)はまだ発見されていない。

 だから、攻撃を受けたり・略奪現場に出くわさない限り、アジト発見のために放置して報告。できるなら尾行するようにってのが傭兵ギルドのルールのはずだ。

 しかも独り言の内容的に、連中の斥候部隊らしいのを追い回したらしい

『ま、どうせ腰抜けばかりだろうから、昨日の連中同様に、綺麗な花火にして宇宙の塵に変えてやるぜ!』

 しかも、船を停止させて海賊を生け捕り、船を買い取ってもらったわけでもないようだ。

 恐らくだけど、エンジンを大出力のレーザー辺りでぶち抜いて大爆発させたんだろう。

 そうなったとしてもやむを得ない状況ができたりすることもありはするけれど、その状況ではしていい判断ではないだろう。

 ちなみになんで彼がまだここに居るかと言うと、

 女の子が残り時間全部警備とデブリ掃除をするので、燃料と食事と宿泊費は何とかしてほしいとお願いしたかららしい。

 という話を朝食?の時に耳にした。

 以上のことから考えると、グリムリープ海賊団は俺様君に復讐するためにここにやってきたってことになる。

 本人はわかってないが、周りの連中はそれを理解したらしく、俺様君に罵詈雑言をぶつけ始め、そのまま罵り合いがはじまった。

 僕も罵ってやりたいが、取り敢えずギルドに救援をお願いしておくのが先だろう。

「もしもしローンズのおっちゃん?」

『おうウーゾス。サーダル宙域のゲートの救援だな?』

 ローンズのおっちゃんは、応答するなりドヤ顔を決めていた。

「そうだけど、なんで知ってんの?」

『たまたまグリムリープ海賊団を見つけて監視してたのがいて報告してくれたんだよ。どこのやつかは知らねぇが攻撃した馬鹿の目撃を含めてな』

 どこの誰かは知らないが有り難い話だ。

「で、どんな感じ?」

『お前以外にも通報がきてるし、軍にも要請が入ったらしいから、1時間だな』

 僕の質問に、僕の知りたかった回答を返してくれるあたり長年の付き合いを実感する。

 しかしこちらの圧倒的不利はどうしようもない。

「きついなあ…。場合によったら俺様君(元凶)を生け贄かな」

『それで引いてくれりゃいいがな』

 はっきりいってその可能性は低い。

 ともかく救援がくるまでの1時間。

 なんとかして生き残る必要がある。

 あの元凶(バカ)の船に一発撃ち込んでやりたいが、あのフィノとか言う女の子が不憫なので撃ち込めない。

 あの俺様君。そういう要員として彼女をつれ回してるんじゃないだろうな?

 だとしたらマジで最低なんだが…。

 そんなことを考えていると、不意に通信がはいった。

 誰だろうと出てみたところ、

『こうやって出撃するのはひさしぶりね』

「ノスワイルさん?」

 通信の相手は、なんとノスワイルさんだった!

 しかも専用らしいオレンジのパイロットスーツ(宇宙服)を身に纏い、操縦席の様なところに座っていた。

 そして衝撃の一言を発する。

『私も参戦するわ』

 僕は一瞬目の前が真っ白になった。

「いやいやいや!貴女は傭兵じゃないんだから出撃はやめてください!」

『プラネットレースは妨害あり。戦闘がない訳じゃないわ。それに私は、『実戦』は経験済みよ』

「それでもブランクはあるでしょう?」

『巻き込まれた民間人が、自分の身を守るために、自分の判断で勝手に戦闘をするだけ。問題はないわ』

 これは言っても聞かないだろう。

 それに、彼女の乗っている戦闘艇はトライエア社の最新鋭機『ストーム・ゼロ』。

 僕の『パッチワーク号』より、火力・速力・防御・操作性において段違いの性能だ。

 それに彼女の操縦技術が合わされば、並大抵の連中なら歯が立たないだろう。

 だが問題は、もし彼女が怪我をしたり、まかり間違って撃墜なんて事になったら間違いなく僕の責任にされて、帝国中、いや全宇宙の彼女のファンに、殺されるなんて生温い話ではすまない事になる!

 だから即座に確認を取ることにした。

「チームの人達には言ってあるんですか?」

『貴方達が負けたら、私たちは確実に戦利品扱いだもの。それなら勝利に貢献した方がマシって事で納得してるわ。私しか出てきてないのは、この船以外メンテ中だからよ』

 本当かどうかはものすごく怪しいが、これ以上追及もしづらい。

「ともかく、無茶だけはやめてくださいね…」

 本気でそれだけはお願いしたい。

 僕の命のためにも。


 するとそこに、オープン回線で海賊が声をかけてきた。

『見つけたぞ糞野郎!よくも手下をぶっ殺してくれたな!』

 画面(ホロ・モニター)に現れたグリムリープ海賊団の(ボス)は、年齢は40代くらいで、ドレスシャツ・眼帯・顔を覆う髭・キャプテンハットという、これぞ海賊といった風貌だった。

 この風貌の海賊がいた時代なんかもはや伝説や神話の時代だ。

 だがおそらくそうすることで、自分を印象付けるためと、身元を分からなくしているのだろう。

 ちなみにこの(ボス)はその風貌から『黒髭(ティーチ)』と呼ばれている。

 その危険人物に対して、俺様君はビビリもせずに果敢に食らいついていった。

『へっ!ヘボ海賊が偉そうな口をきくな!てめえらなんざ、俺様と部下共で纏めて宇宙のゴミにしてやるぜ!』

 おいおい。

 どさくさに紛れて都合のいい事をいうなよ。

『ざけんな新入り!何がてめえの部下だ!』

『余計なことをして厄介事持ち込みやがって!』

『生意気抜かしやがって!ぶち殺すぞ!』

 もちろん他の傭兵達はブチ切れ、ボロクソに反論される。

 その事態に、海賊の(ボス)は俺様君を馬鹿にした笑いを浮かべ、

『なるほど。バカな新入りが調子コイたってとこか。そのバカを突き出すなら引いてやってもいいぞ?』

 こちらに対して取引を持ちかけた。

 もちろん実際には引くつもりはないだろう。

 全員分の船を売って金にしたいだろうし、帝国のNo.1で美形や美女揃いで有名なプラネットレースチームがいるのだ。

 売り飛ばすなり、自分の情婦にするなり、場合によってはレースに出場させ、賞金やその他の利益を吸い上げたりするだろう。

 もちろん他の傭兵達もそれは理解しているだろう。

 しかし、

『ああ。遠慮なく持っていってくれ!』

『返品は不可だ!』

『責任は自分でとってこいや!』

『その前に相棒の女の子はコロニーに下ろしていけ!』

 と、俺様君を渡す気満々の発言が、太陽風のように海賊と俺様君に浴びせられた。

『…お前よう…。ちったあ自分の行動見直した方がいいぞ…』

 その怒涛の勢いに、海賊の(ボス)があきれ顔で忠告までしてきた。

『うるせえ!ザコ海賊が偉そうな口きいてんじゃねえ!』

 俺様君は、ちょっと涙声になりながらも、フルスロットルで突貫し、小型艇や無人機を何台か爆発させていった。

『やりやがったな!野郎共!俺達の恐ろしさをおしえてやれ!』

 それを合図に、ついに戦闘が始まった!

海賊の呼び名につかったのは、

実在した海賊、『黒髭』エドワード・ティーチです。

海賊といえば誰しもが思い出すあのスタイルは、この人がモデルといわれているそうです。

ワン◯ースにもまさに『黒ひげ』がいましたね。


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― 新着の感想 ―
お馬鹿な新入りに対して「一発だけなら誤射かもしれない」ってなりますように。
[一言] ごめん、出鱈目w>伝統 一応「竜骨くぐり」が発想の元で、似たようなリンチが昔のスペオペにあった気はする。
[一言] 少年、傭兵伝統のリンチでヘルメット内の酸素だけでコロニー一周とかさせられないかな……
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