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モブNo.157:「私が一番厄介なやつを足止めする! 貴方達は他のをお願い!」

 襲撃者達によって、ザクウン商会の船が集中的に狙われてはいたが、戦況は僕達がかなり有利だった。

 その理由としては、ゲートの警備隊が協力してくれたのと、非武装船の退避を完了させた他の護衛艇の一部が協力してくれたからだ。

 ゲートの警備隊は職務だから当然と言えば当然だけど、他の非武装船の護衛艇が協力してくれたのは本当に有り難かった。

 アルプテトさんが彼等と通信をしていたのが理由だと思われる。

 向こうの襲撃は集中してザクウン商会の船を襲ってきて、絶対に仕留めてやるという覇気が感じられ、加勢がなければ本当に危なかっただろう。

 逆に他の非武装船はついで程度なために、それ以外の非武装船は比較的容易にゲートを通れている。

 そのさなか僕は、理由はわからないけど、襲撃犯の一機にやたら狙われている。

 そしてその動きになんとなく覚えがあった。

 公爵閣下の領地から帰る時に襲ってきた、赤と青の襲撃犯、その時の赤の方ではないかと睨んでいる。

 と、いうことはこの襲撃は、もしかして公爵閣下絡みだったりするわけ?

 でもそれなら、今回の依頼者であるザクウン商会の船を確実に落とすべく、先にそちらを狙うはずだ。

 しかしこれだけ僕個人を狙ってくるってことは、やっぱり直轄領地のことだったりするのか?

 なんで? あの時なんにも情報は持ち帰ってはいないし、その後も詮索はしてないのに!

 ありえるとすれば撃墜されたことの恨みだろう。

 戦場のことは恨みにしないというセオリーがあるとはいえ、恨みに思わない方がおかしい。

 ディロパーズ嬢みたいな人は珍しいのだ。

 しかし僕個人に恨みがあったとしても、こんな作戦の最中に公私混同していいものじゃないと思うんだけど。

 まあ理由がなんであれ、僕自身が何とかするしかないわけだけど、非武装船が退避してくれないと、自由に動き辛い。

 非武装船はまだ退避が完了しないのかな?

 そんなことを考えていた所に、ゲートの警備隊から吉報がもたらされた。

『非武装船は全てゲート移動先に避難完了! 繰り返す! 非武装船は全てゲート移動先に避難完了! ゲートを一時閉鎖するから、派手に反撃をして構わないぞ!』

『ゲート移動先の護衛はおじいちゃんとディロパーズちゃんと私が受け持つわ』

 さらには、アルプテトさんからの許可も出た。

「じゃあよろしくお願いします」

 ゲートが閉鎖されていくのを確認すると、僕は自分を執拗に狙ってくる、推定赤青の片割れの赤に集中する事にした。

 もちろん赤だけではなく、まだ襲撃者は残っているが、その連中はレビン君やモリーゼ、ゲート警備や他の護衛の人達が対処してくれるから大丈夫なはずだ。

 さっきまでザクウン商会の船に襲撃者を近寄らせないようにしていた事もあって、今は僕が追われる状態に近い。

 それなら、ちょっと細かく動いて相手の緊張感を揺さぶってみるかな。

 

 ☆ ☆ ☆

 

【サイド:ルビナ・ラドゥーム】

 

 公爵様からの命令とはいえ、ザクウン商会という会社の船を襲撃しろなんていう単純なこの任務は乗り気じゃなかった。

 理由は知らないけど、民間の船を撃沈するなんて任務は簡単すぎる。

 しかも、実力が私達以下の連中と一緒。

 おまけに妹のエリサと別行動なんて最悪。

 だと思っていた。

 目的のザクウン商会の船の護衛に、あの『土埃カーキー』がいた。

 私はその事実に打ち震えた。

 妹との二人がかりでも撃墜された悔しさ。

 でもそれ以上に腹立たしいのは、私の、乙女の夢を打ち壊してくれたことだ!

 私達姉妹に勝利する程の腕前のパイロット。

 さぞかし、クール系イケメンか、熱血系童顔青年か、ロマンスグレーのイケオジか、果ては美少女にしか見えない男の娘かと期待したのに。

 蓋を開ければキモオタデブという最悪の結果だった。

 あんなキモオタデブに私達姉妹が負けるはずがない!

 あの時、私達姉妹に勝ったのは偶然に過ぎない!

『おい! どこに行く?! 勝手に動くな!』 

「私が一番厄介なやつを足止めする! 貴方達は他のをお願い!」

 この襲撃部隊のリーダーという男が、私の行動に文句を言ってくる。

 イケオジでもないんだから黙っててほしいわ。

 そして私は『土埃キモオタデブ』を撃墜しにいった。

 

 私の読みは悪くなかったはずだ。

 実力を勘違いしていたとはいえ、『土埃ごえいのひとり』を抑えておくのは有効だった。

 ゲートの警備隊が協力することも想定済みだった。

 ぱっと見た感じ、ザクウン商会の護衛は、『土埃キモオタデブ』と同程度が2機いた上に、私に匹敵しそうなのも2機発見した。

 逆にこっちは私が一番の実力者だから、個体ごとなら不利は間違いない。

 それでも、数ならこちらが勝っていたから、ザクウン商会の護衛だけならなんとかなったかもしれなかった。

 しかし、他の警備艇がこちらの排除に協力してくるとはおもわなかった。

 もしかしたらザクウン商会の護衛の誰かが協力を要請したのかもしれない。

 『土埃キモオタデブ』には絶対に無理だから、交渉上手なイケメンか美女でもいたんでしょう。

 さらには、他の非武装船を逃がすために、ザクウン商会の船が移動していない。

 なのに、いまだに仕留められていない事がものスゴく腹立たしい。

 おまけに『土埃キモオタデブ』は、ちょろちょろと逃げ回りながら、他の連中がザクウン商会の船に近寄るのを邪魔するという、ふざけたことをやっていた。

 キモオタデブのクセに生意気な事をしていて死ぬ程ムカつく!

 さらにはそのザクウン商会の船すらゲートの向こうに逃げられた。

『作戦は失敗だ! 撤退せよ!』

 襲撃部隊のリーダーが私に指示をしてくるが、このまま撤退だなんて冗談じゃない!

「このまま帰れるわけないでしょ! せめて護衛あいつらは全滅させないと!」

 私がそう言った瞬間、敵は一斉に襲いかかってきた。

 こうなったら他のは全部任せて、私は『土埃キモオタデブ』を撃墜することに専念した。

 

 『土埃キモオタデブ』との再戦をしてわかった事がある。

 やっぱりこいつは私よりは弱い。

 私に追いかけられている状態から逃げられず、何度か不意に軌道を変えるが、すぐに追尾出来た。

 その無駄な脱出行動を何度も繰り返す。

 おそらくあの『土埃キモオタデブ』は、私の実力を思い知り、あの時の勝利は偶然だと理解し、恐怖しているはず!

 やっぱりあんな『土埃キモオタデブ』が強いはずないのよ!

 『土埃キモオタデブ』の仲間も、私との一騎討ちの邪魔はしないらしい。

 おかげで、思う存分『土埃キモオタデブ』を追い回す事が出来た。

 ほら。また不意をついた脱出を試みたわね。

 あんたごときが私から逃れられるわけないでしょう!

 私は奴が逃げた左方向に機首を向ける。

 しかしなぜか、そこに『土埃キモオタデブ』の姿はない。

 次の瞬間、私の機体に振動が走った。

 一瞬別の戦闘艇からの攻撃かと思ったが、違っていた。

 間違いなくさっきまで私に追い回されていた『土埃カーキー』だった。

 どうして? いつの間に後ろに回ったの?ありえない! 私より弱いはずのキモオタデブが私より上手なんて信じられない!

 イケメンやイケオジや男の娘ならともかくあんなキモオタデブに負けるなんて絶対に許さない!

 そう思った次の瞬間に、私の身体には重力がかかった。

 どうやら自動脱出装置が作動したらしい。

 許さない! 認めない! 『土埃キモオタデブ』が私より強いなんて認めない! 

 以前の時も今回も、ただの偶然よ!

 

 ★ ★ ★

 

<ぱっと見た感じ、ザクウン商会の護衛は、『土埃キモオタデブ』と同程度が2機いた上に、私に匹敵しそうなのも2機発見した。

『土埃』と同程度=レビン君・ディロパーズ嬢

私に匹敵=モリーゼ・アルプテト嬢

となっています。

モブが自分より弱いと思い込んだせいで目が曇っています。


実に久しぶりの更新……

言い訳にしかなりませんが、書籍化作業プラス蜂窩織炎ほうかしきえんの熱でダウンしてました。



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こいつらモブが超絶美形義体にのりかえたら手のひらクルーなんだろうなあ 容姿なんて所詮その程度のものでしかない世界観なのにほんと馬鹿だな
目が曇りすぎなんだよなぁ……。 偶然だろうがなんだろうが、自分に勝った人物に弱い弱いと油断して勝てるわけねぇだろと思う。 心構えがしっかりしたら普通に有能な人になるだろうに
もしかして帝国軍の戦闘艇は容姿によって性能が変化するシステムでも積んでいるのだろうか?
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