モブNo.151:『敵の輸送手段らしいでっかいサソリを発見! 木端微塵にしてやったぜ!』
中央棟に向かうためには、短距離・短時間ではあるが建物内から出る必要がある。
つまりは砂嵐のなかに出なければいけないわけだが、かなり見づらくはあるものの、7〜8mぐらいなら視界もある程度確保ができる。
倉庫のある場所から中央棟までの空間には、何体かの犬型ドロイドが倒れていた。
そのなかには、まだ電源が動いているのもいたので、確実に止めを刺していった。
所々血痕もあるが、遺体はないため、いないか回収したかのどちらかだろう。
その移動途中には、
『こちら車両格納庫! 近くにいるやつは援護頼む!』
『こちら厨房だ! なんでか知らねえが機械の犬が張り付いてやがる! なんとかしてくれ!』
『こちら管制塔だ。東南方向に大きめの反応があった。なにしろこの状況だ。不確定ではあるが気にしておいてくれ。監視は続行する』
『うわっ! サソリだ!』
『落ち着け! そいつは大人しいやつだからそっと立ち去れば大丈夫だ』
などの様々な通信が飛び交っていた。
幸いに戦闘にはならずに中央棟に到着すると、数十頭の犬型ドロイドと繊維と外骨格状のスーツを着た人間何人かが中央棟を取り囲んでいた。
中央棟側は、入り口付近で犬型ドロイドを迎撃し、内部からは散発的射撃で相手を近づかせないようにしていた。
僕達は直ぐ様隊列を組み、アサルトライフルでテロリスト達に銃撃を食らわせた。
完全な不意打ちになったおかげで、前線の犬型ドロイドがかなり下がっていった。
「援軍感謝する! 今別働隊が連中の本陣を捜索中で、それっぽいものを発見したそうだ!」
建物内部から責任者らしい軍人から、感謝の言葉と現状を説明する。
おそらく第6艦隊の揚陸部隊の人あたりだろう。
射撃戦闘のこなれ方が半端ない。
「おそらく敵の輸送機か何かが近くにあって、それを本陣にしているとおもわれる! 別働隊がそれをなんとかするまで持ちこたえてくれ! まずはなんとか犬をかい潜ってあの余裕そうにしている飼い主をブチのめしてくれ!」
その言葉に結構な数の人間が反応し、雄叫びを上げながら突貫していき、目標になった飼い主が軽くビビっていた。
とりあえず僕は、建物内部の入口近くに陣取り、味方が足止めしている犬を蜂の巣にしたり、犬の足止めをして止めを刺して貰ったり、自分で足止めして蜂の巣にしたりを、とにかく繰り返した。
普通ならそれで少なくなるはずだけど、補充がどこからかやってくるため、全然減っている様子がない。
RPGのゲームに、こういう無限湧きを利用して、経験値を稼ぐ技があったなあと思い出してしまった。
そんな感じで犬型ドロイドの相手をしているうちに、突貫組の方はなんとか飼い主の一人にたどりつき、弾がなくなったのかその場の勢いなのかはわからないが、何人かが雄叫びを上げながらアサルトライフルの台尻でぶん殴っているのが見えた。
そうやって飼い主が1人ぐらい倒れたとしても、向こうの増援が劇的に減るわけではないので、少しずつ押され始めてきた。
それに比べ、こちら側の増援が増えるなんてことはないようだ。
通信でもあったが、おそらく中央棟以外の重要箇所も攻撃をされているんだろう。
こうなると、敵の増援を阻止しにいったリボロス氏達の活躍に期待するしかない。
とはいえ長時間は持ちそうにない。
そう思った瞬間、
『敵のサソリ型輸送機を撃破! これで少しは減るはずだ! 他にもいないか探索をつづける!』
リボロス氏の声が通信から聞こえてきた。
その一報は、味方全体の士気を大いにあげ、襲撃者側も自分達の増援兼脱出手段の一つを潰された一報が入ったためか、動揺が見られた。
さらには駄目押しとばかりに、
『敵の輸送手段らしいでっかいサソリを発見! 木端微塵にしてやったぜ!』
という続報がはいった。
あとから聞いた話だけど、2台目のサソリ型輸送機を撃破したのは、惑星ザライツ支部のエースのラエーシャ・サホルだったそうだ。
声ではどちらかわからなかったけれど、流石は主人公だね。
こうなるとこちらはいよいよ活気づき、襲撃者側は怖気づく奴とヤケになるやつに分かれて行動を始めた。
「引くやつは無視して、突っ込んで来る奴を迎撃してくれ!」
数が減ったとはいえ、ヤケになった奴は面倒だ。
さらに、犬型ドロイドの目がかなり赤く光り、急に動きが早くなった。
その代わり、飼い主の指示は聞かなくなったようで、いままであった連携のような行動はやらなくなった。
早くなったとはいえ、対処方法が変わった訳では無いため、確実に1体づつ始末はできていたけれど、必殺の状況にするまでが面倒くさくなってしまった。
しかしそこに、サソリ型輸送機を始末した別働隊が帰ってきた。
こうなるともう襲撃者側に勝目は無くなる。
リボロス氏の鉄拳で犬型ドロイドが吹っ飛んでいく光景は実に爽快だった。
程なくして中央棟を襲撃者していた連中と犬型ドロイドは無力化された。
しかし、他の場所はまだ無力化されていないため、僕達はすぐにそちらの応援にむかった。
通信では車両格納庫と厨房が襲われていたが、他にも傭兵用の宿泊施設や戦闘艇の格納庫。貯水タンクなどにも手が回っていたので、慎重かつ迅速に制圧をしていった。
そうして全ての襲撃者を無力化及び拘束し、『砂嵐の中での防衛戦』は終了した。
あとはこの砂嵐が収まるのを待つだけだ。
事態が一段落すると、気になる事が色々浮かんでくる。
連中が欲しがっているのはこの惑星のエネルギー鉱脈の調査結果なのは間違いない。
しかしそのうえで厨房や貯水タンクや車両格納庫を狙った理由は、捕らえられた襲撃者によると、襲撃に参加した人間のための水と食料と帰りの燃料のためだったようだ。
なんでも移動に使っていたサソリ型輸送機には、犬型ドロイドを大量に載せたために人間のスペースがほぼなく、進軍中は飲まず食わず。おまけに砂嵐の威力が物凄く、燃料を死ぬほど食ったらしい。
だから、本音としては真っ先に厨房を襲撃したかったらしいが、そういう訳にもいかないので最初の予定通り、情報のありそうなところを襲撃したそうだ。
調査員をさらっていく計画もあったらしいが、移動中の話し合いで即座に破棄されたらしい。
ちなみにこの情報を吐いた襲撃者は、情報を吐いたという事で水と食事を与えたら、涙を流しながら食べていたそうだ。
砂嵐の中を進軍するのは、本当に恐ろしかったらしい。
第三巻の発売は7月25日です
皆様のおかげです。
さらには4巻発売の打診をいただきました!
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