モブNo.150:「その程度では俺の筋肉には傷一つつかんわ!」
砂嵐が基地を直撃すると、昼の15時だというのに暗く、かろうじて昼間なのがわかる程度。
建物内は明かりを点けないといけないぐらいに真っ暗になった。
僕もそうだけど、砂嵐は初体験という人が多く、その光景は恐ろしくもあったが、興奮するものでもあった。
なかには戯れに普通の服装で外に出たやつがいたのだけれど、一瞬で全身砂まみれでジャリジャリになり、即座に風呂に飛び込んでいった。
ちなみに、その時しっかりシャンプーをしたのに、それから一週間経ったシャンプーの時にも、頭から砂がでてきたらしい。
ちなみに僕達巡回班のローテーションはそのままで、司令部や倉庫や調査隊のいるところなんかに警備として配備されるらしい。
とはいえ僕達夜番はぶっ通しの仕事だったので、すぐに睡眠を取るようにいわれた。
どうやら第6艦隊司令官であるヘンドリックス准将は、それなりにはいい人のようだ。
さらに今回はいつ襲撃が来るかわからないので、睡眠時間は5時間内と決められ、普段はOKな飲酒も禁止された。
まあ当たり前だよね。
僕は即座に風呂に入り、睡眠を取ることにした。
そうして睡眠をしっかりとると、腕輪型端末にいつの間にか通信が入っていて、警備の際の砂漠専用のアサルトライフルを受け取るようにというのと、僕を含めた何人かは第三倉庫に配置された内容が書かれていた。
僕はアサルトライフルを受け取りにいくと、警備の開始時間まで談話室で待機する事にした。
しかし待機というのは暇の別名であり、暇というのは嫌な考察ばかりしてしまう。
よくよく考えると、この砂嵐のなかを進軍というのは狂気の沙汰だ。
おとぎ話の元になった実在した小国の軍隊も、当時は主兵装が刀剣や槍の時代のはずだから、砂嵐の中を行軍したあともなんとか使用出来たんだろう。
今現在だと、銃は砂漠専用のだったり、防塵装備も完璧なものもあるだろうし、砂嵐のなかでもスムーズに移動できる乗り物などもあるかもしれないし、それでも砂塵が気になるなら、昔に倣って白兵戦の武器を所持するのも有りだろう。
それでも、この砂嵐の中を進軍する事はとんでもないストレスのはずだ。
そう考えると、配布された砂漠専用のアサルトビームライフルEKV353『ガランティス』と、腰にあるタテレベム社製出力調節型ブラスターP―11。別名『ムルビエラ』だけでは頼りなく思えた。
なのでまずは『ムルビエラ』に完全防塵対策ジェルを塗りつけておく。
一発は撃てるかもしれないが、発射した後は砂塵が内部に入り込んでしまい、そのまま連発は出来ないだろう。
それでも撃てないよりはいい。
僕は改めて基地内の装備係に行き、懐に入るくらいのナイフを3本と、資材であるエネルギー管用テクタイトパイプを1本、銃用の砂塵掃除用のキットを3つ貸してもらい、『ガランティス』の落下防止用ストラップも貸してもらった。
装備係には金属製の軍用サーベルなんかもおいてあったけれど、ろくに扱ったこともない僕にまともに扱えるわけがないので、それなら叩くだけのパイプのほうがあつかいやすい。
こうして僕は簡易的な白兵戦の武器を手に入れた。
しかし有難いことに、交代の時間になり、そのまま午前0時を過ぎて翌日になり、午前5時の交代の時間になっても、何事も起こることはなかった。
引き継ぎ終了後、基地内の宿泊施設に戻り、シャワーを浴びてから早々にベッドに入った
それから5時間後に目を覚まして、遅い朝食を食べようと廊下を歩いていると、
『総員に通達! レーダーに微かな反応あり! 警戒せよ! 繰り返す! レーダーに微かな反応あり! 警戒せよ!』
という警報が流れた。
どうやらこの砂嵐でも、レーダーはきっちりと仕事をしてくれたらしい。
宿泊施設にいた傭兵達全員に緊張が走り、各々が武器を手に移動を始める。
傭兵の宿泊施設よりも、調査隊の集めた情報や調査隊員などがいる施設のほうが重要なので、僕達傭兵は即座にそちらに向かったのだ。
もちろん僕も同じように自分の割り当てられた第三倉庫に向かった。
幸いにも第三倉庫にはまだ侵入者はいなかった事実に、ほんの一呼吸だけ安心し、すぐに緊張を張り巡らせる。
すると次の瞬間、砂の暗闇から赤い目のなにかが襲いかかってきた。
それは人間ではなく、鋼鉄の四足に、鉄の牙と爪をもった、犬型のドロイドだった。
あの赤い目は赤外線カメラで、身体も砂漠仕様なのだろう。
人形がおそってくると思っていたから、まさか犬型のドロイドが襲ってくるとは思わなかった。
その場の全員が驚きはしたものの、すぐさま切り替えて犬型ドロイドを相手していった。
僕のバディであったロバート・リボロス氏に至っては、
「どっせーい!」
飛びかかってきた犬型ドロイドにラリアートをかまし、
「そうりゃ!」
足元に噛みつこうとした奴を掴み上げて、ボディスラムで床に叩きつけ、
「よいさぁ!」
正面から飛びかかってきた奴にはフロントキックを食らわせていた。
そして隙をついて、リボロス氏の腕に一匹が噛みついたのだが、
「その程度では俺の筋肉には傷一つつかんわ!」
と、ナックル・パート一発で壁まで吹き飛ばしていた。
当然僕にも犬型ドロイドは襲いかかってきた。
『ガランティス』で牽制はしたものの埒が明かず、飛びかかってきた奴をエネルギー管用テクタイトパイプで殴りつけ、怯んだ瞬間に『ガランティス』で蜂の巣にしてやった。
そして他の傭兵達も、危なげなく犬型ドロイドを叩きのめしていた。
まあそのなかで1番無双していたのは、リボロス氏だったけれど。
「よし! 第三倉庫を襲って来たのは全部片付いたみたいだ! 本部に連絡するので、そっちから指示をもらってくれ」
そのうちに、犬型ドロイドが全て沈黙したので、元々の倉庫の関係者が、本部に連絡をしたらしい。
すると本部からは、
『調査情報が集積されている中央棟に、敵の犬型ドロイドの増援が集中しつつある。可能なものは迎撃に参加されたし! そして可能ならば増援元を叩いてほしい!』
と、指示があった。
第一・第二倉庫も殲滅に完了したらしく、同じタイミングで人が出てきていた。
その全体の半分は迎撃に向かい、あとの残りは増援の元にむかった。
僕は当然迎撃のほうに参加した。
エース〇〇バット7は難しい……
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