モブNo.117:『うふふふふ…。私やアーサー様に無礼を働いた連中に死を!』
こうして、僕達傭兵ギルドイッツ支部のメンバー総勢30名対第1艦隊戦闘艇部隊選抜30名の模擬戦が始まった。
勝敗は、どちらかが全滅するか、開始から1時間経過したときの生き残っている数で決まる。
最初の戦場は小惑星帯。
こういった遮蔽物の多いところの戦闘は『隠れながら撃つ』『相手の意識を反らしてからの不意打ち』が基本だ。
人間同士の遮蔽物越しや建物内の銃撃戦と考えてもらうとわかりやすい。
本物のビームなら岩石の破壊も可能だし、それを利用しての戦術も可能だけど、残念ながら模擬戦用のものではそれは不可能だ。
実戦だと、超大型戦闘艇の主砲やゲルヒルデさんの紅い極太のビームなんかで小惑星帯ごと消し炭にされたりする場合もあるわけだけど、今回は小型戦闘艇の戦闘技能向上の為のものだろうから気にしなくていいだろう。
ちなみにこういった模擬戦をする場合、ダメージ (Damage)・フィードバック(Feedback)・フィールド(Field)・システム(System)と呼ばれるオペレーションソフトをインストールし、それと連動したバリアフィールド発生装置を船体に取り付け、ビーム兵器はフェイクザッパーという訓練用ビームブラスターに載せ替え、ミサイルなどの実体弾は接触式閃光弾に載せ替える。
この全てをセットすると、ビームやミサイルが当たった場合、オペレーションソフトがバリアから送られた情報から機体のダメージを計算し、機体の動きや速度や使用兵器の有無などが再現される。
それでいて機体には一切ダメージを与えることはなく、システムはいつでもoffにできるから、緊急時には十全の動きが出来るという、ありがたいシステムだ。
なおロスヴァイゼさんは、こんな拘束着みたいなのはインストールしたくないと駄々をこねていたが、ランベルト君の『被弾しなきゃいいだろ?それとも当たるつもりなのか?』の一言に『当たるわけないでしょ!』と言い返し、ぷんぷん怒りながらインストールを受け入れていた。
そして戦闘開始直後、
『俺の女になれだの、船を売れだの鬱陶しいのよ!』
『うふふふふ…。私やアーサー様に無礼を働いた連中に死を!』
ロスヴァイゼさんとセイラ嬢が、おっかないオーラを出しながら、なんで出来たのかわからないけど、小惑星帯を全速力ですり抜けて敵集団に突貫していき、出くわした敵機を即座に行動不能にしていった。
ちなみにだけど、慰労会なんかの話を聞いた限り、あの2人やアーサー君をナンパしていたのは、現場や最前線には行かない高位貴族の子息令嬢だろうから、明らかに最前線に向かうこの戦闘艇部隊の人達はあんまり関係ない。
はっきりいってとばっちりだ。
あまりの迫力に、もうあの2人だけで殲滅出来そうだなと思ったけど、流石にそう簡単にはいかなかった。
2人の攻撃をかわした連中がこちらに向かって来たので、敵機をある程度引き付けながら逃げ、大きな小惑星を通りすぎた瞬間に『撃墜騙し』を使って、敵機から陰になる位置に移動し、敵機が通りすぎた後に後ろから攻撃する。
相手が追う心理で、興奮したりしている場合に有効な基本的な小技だけど、冷静な相手や一度手口を見た相手には通用しないだろう。
幸い敵機が2機ほど通り過ぎたので、1機を背後から撃ち抜いた。
もう1機をと思ったのだけれど、流石にそう上手くはいかず、綺麗に回避された。
小惑星のひしめくところで格闘戦は難しいので、すぐさま逃げる事にした。
流石に警戒をされているだろうからさっきの手は通用しないだろう。
少しでも広い空間を見つけて格闘戦を仕掛けるか、相手が諦めるまで逃げ切るしかない。
ちなみになんでこんな散発的な戦闘になっているかというと、最初は一番キャリアのあるダンさんに指揮をしてもらう流れだったのだけど、一部の連中が、
「必要ねえ。そもそも俺達は司教階級だ。騎士階級の指揮になんか従うつもりはねえ」
と、ダンさんの指揮を拒否したからだ。
さらには2人ほど暴走したのがいるため、ダンさん自身も全体の指揮はあきらめてしまったようだ。
しかし、残ったメンバーがそのまま散発的な戦闘をするかどうかはまた別の話。
僕がある小惑星を通過し、その後を追いかけてきた敵機がいきなり行動不能になった。
その理由は、僕が通過した小惑星には、レビン君とモリーゼが隠れて張り付いており、敵機が通過した瞬間に攻撃してくれたからだ。
1人で成立させた戦法だけに、次もするなら1人でと一瞬でも思わせれば、わりとよく引っ掛かってくれる。
もちろん複数人でやるこの方式だって、一度使えば警戒される。
しかし、相手に『もしかしたら?』を思わせるだけでも効果はある。
事実、こちらが移動しても追いかけて来なくなった。
この時点で戦闘開始から20分は経過しており、怒れる女性2人のお陰で数的には少し有利になっているけど、奇襲がやり易いのは向こうも同じだから油断する訳にはいかない。
こちら側だって、何機も行動不能されているわけだから、レーダーを睨み付け、肉眼でも確認を怠らないようにしていても、いつ奇襲されるかはわからない。
そこにダンさんからメンバーに対しての一斉通信が入った。
『空間の一番広いとこで『羽兜』が食い下がってるから、いけるやつは援護にいってくれ。それ以外の奴はとにかく逃げまくれ!んで、追っかけられてる奴をみたらさらにその後ろから撃て!勝つには一番効率がいいはずだ!保証はないがな!』
ダンさんは、指揮が崩壊しているにも関わらず勝利するための方法を提案してくれるが、
『五月蝿いんだよ騎士階級が!』
と、嫌がる連中は実行するつもりはないようだ。
僕としてはこの連中はほうっておいて問題ないだろうから、このままロスヴァイゼさんの所に向かう事にした。
ロスヴァイゼさんの性能なら簡単に殲滅できる筈だから、いま動かしてるのはランベルト君なんだろう。
最初の暴走はロスヴァイゼさんで、その後からランベルト君にバトンタッチしたんだろうね。
周りからは、操縦はランベルト君、情報管制はロスヴァイゼさんの2人で動かしているという認識だ。
そして現場にたどり着くと、味方の機体を数機の敵機が追い回しているという、ロスヴァイゼさんとランベルト君に最初に知り合った時の戦場と同じ光景が広がっていた。
違うところといえば、あのときはロスヴァイゼさんで、今はランベルト君がやっているという事だ。
さっきのダンさんの話は聞いていただろうから、特に声をかけることなく、ランベルト君の後ろにいた敵機に攻撃を仕掛けた。
これをきっかけに全部が落とせるわけはなく、1機にだけ軽く掠り、後の機体には逃げられてしまった。
そしてもちろん逃げるだけではなく、こちらに対して反撃をしてくるのは当然だ。
ランベルト君の動きは悪くないものの、ロスヴァイゼさんに比べると、反応が遅いし動きも精彩を欠いている。
事情をしっている僕以外からは、相手をなめているとしか思えない行動だ。
それに腹を立てたのか、敵機は僕の相手をせずにランベルト君に向かっていき、僕に撃たれた機体が目の前に立ちはだかった。
なんとかできあがり。
戦闘描写は苦手…
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