モブNo.106:『……わかりました…。御武運を!』
青雀蜂は真っ直ぐに僕に向かってくる。
やっぱり恨まれてる感じだね。
取り敢えず牽制にビームを撃ってみるけど当然回避される。
そしてすれちがってからは、まさに尻尾の取り合いになった。
急旋回・宙返り・捻り込み・上下移動・速度の緩急など様々な手段を使って、お互いの後ろを取ろうとするも埒が明かない。
おまけに僕の方は、相手の攻撃をギリギリ避けるのが精一杯なのに、向こうはこちらの攻撃を余裕でかわしている。
このままだと、こちらが確実に撃墜される。
流石主人公は違うね。
チラッと味方を確認すると、何機か撃墜になっていたし、アーサー君の船が煙をあげながら航空母艦に戻っていったりしていた。
もちろん相手も無傷ではない。むしろ向こうの方が被害が大きかった。
無人機に追い回されながらでも、ロスヴァイゼさんが何機も撃墜していたからだ。
多分最初に襲ってきた海賊達はほぼ全滅しただろうし、無人機も10機ほどしか残っていない。
彼等も劣勢になったのは理解しているらしく、少しずつ距離を離しながら撤退し始めた。
それと一緒に青雀蜂にも引いて欲しいのだけど……そんな雰囲気はないなあ。
こうなったらヘッドオンを仕掛けてからの騙し討ちを仕掛けてみるかな。
主人公サイド:タイアス・サークルース
僥倖だ!
こんなにも早く再戦の機会が来るなんて!
あの時の屈辱は一瞬たりとも忘れたことはない!
もちろん、自分が未熟者であり、油断をし、精進が足りなかったから負けたことに間違いはない。
父、フイガス・サークルース伯爵の領地であり、俺の生まれ故郷である惑星ブロスラントに帰ってからは、父上の命で、惑星コルコスから様々な鉱石を運び出す際の護衛を任された時と、イコライ伯爵領の惑星テウラでのテロリストを撃滅する作戦に参加した以外は、ずっと訓練の日々だった。
実をいうと、奴との再会自体は割りと早かった。
イコライ伯爵領・惑星テウラでのテロリストを撃滅する作戦に参加した時に、たまたま土埃の機体、そして本人を見かけたからだ。
本人の特定には少し時間がかかったが、あの機体の色と特徴をわすれるはずはなかった。
本人の外見はずいぶんずんぐりしていて、覇気の欠片も見えなかったが、その実力は嫌というほど味わったから侮ることはしない。
それに、『戦闘行為の頂点に近づくにつれ、その雰囲気は二極化する。とてつもなく強く見えるか。全く強くは見えないか。だ』という父上の言葉にも合致する。
本来なら接触をするべきではなかったのだろうが、人となりを見たかった事や、場合によっては父上の部下として勧誘出来ないかと考え、作戦に勝利した日の翌朝に、たまたま近くに座り、悩んでいる青年をよそおって話しかけ易く振る舞ってみた。
が、奴は俺に話しかけることなく、そそくさと逃げていってしまった。
そして何故か奴がいなくなってすぐに、関係の無い女性達に囲まれてしまった。
その戦いが終わったあとも、惑星ブロスラントに帰って訓練の日々だった。
そして今回、父上の協力者だという連中の頼みで、地方の特産品を安値で買い叩いている企業を成敗するという名目の、海賊行為のサポートをすることになった。
もちろん最初に、協力者たちが海賊を装い集団を襲撃する。
それで作戦が成功したなら問題はなかったが、彼等は救援を求めてきた。
護衛に強いのが多く、かなりの数がやられたと連絡がきたからだ。
それならもっと早くに救援を呼べばいいだろうに、変な意地を張ったらしい。
そして救援にかけつけると、すぐにその護衛の中にあいつがいるのを見つけた。
戦場に私怨をもちこむなと、敵を師と思えと父上はいう。
それを踏まえてなお、俺はあいつに勝ちたい!
あの土埃を今度こそ撃墜してやる!
部下達がその俺の思いを汲み取ってくれたのか、奴までの道を作ってくれた。
俺は彼等に感謝しつつ、土埃に勝負を挑んだ。
そうして再度戦ってみて、改めて奴が凄腕であり、見習うべきところが多分にある事が理解出来た。
旋回や宙返りのタイミングやスピード。その軌道は正確で一分の隙もない。
すぐに見つける事ができているものの、ほんの一瞬だが視界からふっと消えてしまう事すらある。
さらには、こちらの攻撃を最小限の動きで躱して行く上、こちらの動きを読んでいるかのような位置に攻撃を仕掛けてくる。
このままでは敗けはしないが勝つことも出来ない。
協力者連中は、撤退を指示したのに撤退せずに襲撃し続けてほぼ全滅。雀蜂部隊もかなり数を減らしている。
「お前達は離脱して父上に伝えてくれ。作戦は失敗。迅速な対応を。と!」
なので、部下には戦場からの撤退を指示した。
『タイアス様はどうするおつもりですか!?』
「俺はこいつとの決着をつける!つけなきゃいけないんだ!」
『……わかりました…。御武運を!』
部下はほんの少し逡巡したが、大人しく従ってくれた。
ここからは俺の我が儘であり、彼等に付き合わせる必要はない。
部下達を引かせると、護衛の連中も引き始め、目標の船団もゆっくり離れつつある。
動ける連中も手を出すつもりはないらしい。
これで奴との一騎打ちだ!
すると奴は急に速度をあげて距離を取り、反転して真っ正面からこちらに向かって来た。
ヘッドオン状態での早打ちとは思いきった手段を取ったものだ。
奴との距離が縮まり、緊張感が高まる。
俺は回避の準備をしながら、奴の機体を照準に納める。
距離が縮まるにつれ、緊張が高まり、掌に汗をかく。
そして、後数秒で有効射程に入る直前、奴の機体が逆さを向いたかと思った瞬間に視界から消えた。
その瞬間、嫌な予感がした俺は反射的に機体を急上昇させた。
一度使われた手に2度も引っ掛かるつもりはない!
すると案の定、俺がそのまま進んでいたら取るであろうコースに、陽子魚雷が…無かった。
そして次の瞬間、機体に激しい振動が走り、頭が真っ白になった。
俺はまた陽子魚雷に気をとられ、奴本人を見逃してしまったのだ。
そして脱出装置に手を伸ばそうとして、悔しくて涙がでた。
俺はまた奴に負けたことを理解したからだ。
俺は心の何処かで奴を、土埃を見下していた。
その外見や雰囲気、周囲の声を聞き、『以前は油断しただけ。あんな奴に負けるはずはない。次は必ず勝てる!』と。
だから負けた。
父上の助言も、本当の意味では理解していなかった。
そして機体が連続して振動し、ついには操縦席にも火花が走った。
父上……親不孝をして申し訳ありません…。
主人公サイド:終了
本作品の書籍化作業のため、更新が滞ってしまうかもしれません。
あらかじめお詫びしておきます。
申し訳ございません。
青雀蜂は生かすか○すか悩みました
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